福娘童話集 > きょうの新作昔話 > クッカルとカラス

２００８年　9月26日の新作昔話



クッカルとカラス
鹿児島県の民話→ 鹿児島県情報

　むかしむかし、カラスの羽は今のような真っ黒ではなくて、もとは赤い羽毛に紫や青緑の混じった、それは美しい色でした。
　他の烏はみんな、そんなカラスをうらやましがっていました。
　とくにクッカルは、
「あーあ、おいらの着物は真っ黒なばかりで面白くない。一度でいいから、カラスどんのような美しい着物を着てみたいな」
と、思っていました。
　クッカルというのは、カラスによく似たくちばしの長い鳥です。
　そこである日、クッカルはカラスをだまして着物をとってやろうと考えました。
　そこでさっそく、カラスのところへ出かけて行って、
「カラスどん、今日は暑いから水浴びに行こうや」
と、誘いました。
　するとカラスは、なんの疑いもなしに、
「それはいいな。よし、行こう」
と、言って、二人は森の奥の沼に出かけたのです。
　そして、それぞれ自分の着物をぬいで、ザブーンと水に飛び込みました。
　天気が良く、ポカポカと暖かいので、水浴びの好きな二人はとても楽しく遊びました。
　ところがしばらくすると、クッカルは、
「ありゃー、大事な用事を思い出した。すまんが先に帰るよ」
と、言って、帰ってしまいました。
　一人残されたカラスは、
「あーあ、もうちょっと、一緒に遊びたかったのに」
と、ぶつぶつ言いながら水からあがって着物を着ようとしたのですが、ところがどこを探しても自慢の美しい着物はなく、そこにあるのは真っ黒で汚い、クッカルの着物だけだったのです。
「ややっ、さてはクッカルのやつ、おいらの着物を着ていったな」
　カラスはクッカルにだまされた事を知りましたが、もうどうしようもありません。
　それで仕方なく、クッカルの着物を着て帰ったのです。
　それからというものカラスは真っ黒で、クッカルはきれいな羽をつけているのだそうです。
　そしてカラスはクッカルが憎くてたまらないので、今でもクッカルを見つけると、目のかたきにして追いまわすのです。

おしまい