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福娘童話集 > きょうの新作昔話 >小判の虫干し
2014年 1月10日の新作昔話
小判の虫干し
むかしむかし、あるところに、なまけ者の寝太郎という若者がいました。
その名前の通り、寝太郎は一日中ごろごろと寝ているだけでちっとも働こうとしません。
お母さんがご飯を作ると起き出して、お腹いっぱい食べるとまたごろごろと寝てしまうのです。
「寝太郎! いつまでも寝てばかりいないで、山へでも行って働いておいで!」
お母さんが叱りつけると、さすがの寝太郎ものっそりと起き上がり、ぶらぶらと山へ出かけて行きました。
でも山へ行っても何もせず、海の見える見晴らしの良い所でごろんと横になりました。
「今日はここで一寝入りするか」
寝太郎が目をつぶってうとうとしていると、どこからか可愛らしい声が聞こえてきます。
♪ネズミのお宝、虫干しだ
♪今日も小判を、虫干しだ
「なんだ?」
寝太郎が見てみると、草むらからネズミたちが小判をくわえてぞろぞろと出て来るではありませんか。
そして小判をチャリーン、チャリーンと、あたり一面に並べていくのです。
「へへーっ、小判の虫干しか。おもしろいなあ」
寝太郎はごろんと横になりながら、ネズミたちが小判を運んで来るのを楽しそうに見ていました。
やがてお日さまが沈んで、夕方になりました。
するとネズミたちは、
♪ネズミのお宝、虫干しだ
♪お日さま沈んで、もう終わり
と、言いながら、小判をくわえて草むらへと帰って行きました。
「ああ、おらも帰ろ」
寝太郎は起き上がると、山を下りて家に帰りました。
手ぶらで帰ってきた寝太郎を見て、お母さんは大きなためいきをつきました。
「まったく、山へ行ったなら、しばの1本も持って帰ればいいのに。本当にしょうのない息子だねえ」
するとその時、戸がガタガタと開いて、見た事もないきれいな娘さんが家に入って来ました。
娘さんは寝太郎に小さく頭を下げると、布に包んだ何かをお盆にのせて寝太郎に差し出しました。
「寝太郎さん。今日は小判の虫干しの見張り番をしてくれてありがとう。これはそのお礼です」
「はあ? よく分からんが、くれると言うならもらっておこう」
寝太郎が娘の差し出したお盆を受け取ると、娘はそのままどこかへ帰って行きました。
「寝太郎、あの娘は知り合いかい? それで、何をもらったんだい?」
「さあ、知らない娘だが。それにしても重い物をくれたな」
寝太郎が娘のくれた布の包みを開いてみると、中にはたくさんの小判が入っていたという事です。
おしまい
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