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1月18日の日本の昔話
大力の坊さん
大力个和尚
・日本語 ・日本語&中国語 ・客家語
客家語 : 鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、比叡山(ひえいざん)の延暦寺(えんりゃくじ)に、実因僧都(じついんそうず)という坊さんがいました。
頭擺頭擺,在比叡山延曆寺有一個安著實因僧都个和尚。
広く仏教について勉強をしたとても偉い坊さんでしたが、この人は、とても力持ちの坊さんとして有名でした。
對彿教盡有研究,係一個當偉大个高僧,佢因為盡有力非常出名。
これは、その実因(じついん)のお話です。
以下係該實因个故事;
実因が、昼寝をしていた時の事です。
實因睡當晝个時節。
若い元気な弟子たちが師の力の強さを試そうと思い、クルミを八つ持って来て実因の足の指の間に一つ一つ挟んだのです。
後生又像精个弟子,想愛試看法師有幾大力,拿了八隻胡桃核來,一個一個夾在實因个脚指罅。
(・・・おや?)
...唉喲?
実因はそれに気がついたのですが、わざとタヌキ寝入りをして、弟子たちのするのに任せていました。
實因雖然有注意到,挑挑詐睡由在該兜弟子去舞。
しばらくして、「ううーん、よく寝たわい」と、
過一下仔佢就講:「m11,還好睡哦!」
力を入れてのびをすると、クルミの実が八つともバリッと砕けてしまったという事です。
又出力伸下懶筋,八個胡桃核全部嗶靂擗掠𠎷碎。
さて、その実因が、宮中(きゅうちゅう)で行われたご祈祷に呼ばれた事がありました。
另外,實因分人請去神廟肚祈求个事情。
それが終わると他の坊さんたちは帰って行きましたが、話し好きの実因はそこに残って色々と話し込んでいるうちに、すっかり夜もふけてしまいました。
祈求煞後,其他个和尚全部都轉去,好講話个實因留下來講閒談,毋多知講到半夜了。
「遅くなったな。さて、帰るとするか」
「恁夜咧!該就來去轉咧!」
実因は、やっと立ち上がりました。
周りを見回しましたが、どこに行ったのか、お供の坊さんの姿が見えません。
實因就企䟘起來,四向頭看看啊仔,走去哪位呢?共下來該兜和尚無看著魂影。
ただ履き物が、きちんと並べてあるばかりです。
斯伸鞋襪,齊齊排在該定定。
「どこへ行ったかな?まあ、いいか」
「會走去哪位?算了,莫插佢兜。」
実因は履き物をはいて下に下りると、秋門(しゅうもん)から外に出ました。
實因著好鞋襪行到下背去,經過秋門行出去。
外といっても、ここはまだ御所の内です。
雖然講係外背,毋過還係在神廟地界裡肚。
ちょうど、明るい月が出ています。
堵好有光華華个月光走出來。
「いい月だ、少し歩いてみよう」
「還靚个月光哦!下來去行行看啊仔。」
ふらふらと歩き出すと、どこから忍び込んできたのか一人の男が現れました。
亍阿亍仔,出現一個毋知在哪位偷走落來个細倈仔。
そして実因の姿を見ると、すたすた歩み寄って来て、
看到實因時節慢慢行兼來,
「これはお坊さま。お供も連れず、どちらにおいでですか?さあ、わたしの背中におぶさりなさいませ。どこなりと、お連れいたしましょう」
と、声をかけました。
摎佢講:「這位法師,無伴無抵愛去哪位?無𠊎來背你,無論你想去哪位𠊎背你去好啦。」
そこで実因は、「それは、ありがたい」と、その男におぶってもらいました。
實因應講:
「恁樣就還承蒙你哦!」後,就分該个細倈仔背。
男は実因をおぶると、どんどん歩き出しました。
細倈仔背等實因一步一步慢慢行等出,
体の大きな、とても元気そうな若者です。
因為係一個盡高大砸磳、當有精神个後生人,
まるで走る様に御所を出ると、左に折れてしばらく行って立ち止まりました。
像形用走樣,行出神廟地界後向左片析轉彎,行一站仔就頓恬講:
「さて、ここで、降りて下され」
「你在這位好下來了!」
男は実因を背中から降ろそうとしましたが、実因は、
「こんな所へ用はない。わしは、お寺の学寮(がくりょう)へ行こうと思っていたのじゃ」
と、平気な顔で答えて、降りようとしません。
細倈仔想愛摎背囊頂个實因放下來,實因詐戇詐戇講:
「毋係這種位所,𠊎想愛去廟寺个學寮。」,毋肯下來。
「何だと!」
「你講麼个啊!」
男は、実因が怪力の持ち主である事を知りません。
細倈仔毋知佢係一個當大力个和尚。
立派な着物を何枚も重ねて着た普通の坊さんだと思っていたので、脅かしてその着物を奪い取ってやろうとしたのです。
話到佢係著幾領派頭个衫褲、普通和尚定定,就威脅佢愛搶其个衫褲。
「この坊主め! 命がおしけりゃ、さっさと着物を脱いでいけ!」
「這個齋公仔!若係愛命你就遽遽摎衫褲脫下來!」
しかし実因は、落ち着いた声で言いました。
毋過,實因用當平靜个聲音講:
「なるほど、着物が目当てとは知らなかった。
「係恁樣哦,毋知你愛𠊎个衫褲,
てっきり、老人のわしが一人歩きをしているのを見て可愛そうに思い、こうしておぶってくれたのだとばかり思っていたわい。
𠊎話著一定係看到老人家一儕人行路恁衰過,正會來背𠊎。
しかし、この秋の夜ざむに着物を脱ぐわけには」
毋過恁冷个秋夜喊𠊎衫褲脫忒實在」
そう言いながら実因は、左右の足で男の腰をぎゅっと締め付けました。
實因緊講緊用厥兩隻脚摎細倈仔个腰仔交起來,
その力はあまりにも強く、まるで腰がちぎれる様な痛さです。
力頭嶄蠻大,像形腰骨斷忒恁痛。
「ああっ! いて、て、て。このくそ坊主! 早く降りやがれ!」
「啊!痛、恁痛、夭壽和尚!遽遽下去啦!」
「くそ坊主?」
「夭壽和尚?」
実因は、いっそう足に力を入れました。
實因出還阿大力。
「いや、その、・・・お坊さま」
「毋係、該...和尚師父。」
男は、泣きそうな声で謝りました。
細倈仔用像形嗷个聲音摎佢會失禮。
「お坊さま、私が悪うございました。考え違いをしていました。
「法師,𠊎心肝毋好,想法毋著,
お坊さまの着物をはぎとろうなど、わたしが馬鹿でございました。
想愛拿你个衫褲來著,𠊎忒過分了。
この上は、どこへなりともお供いたします。
另外你想去哪位𠊎就渡你去哪,
ですから、ですからどうか、腰を、腰をちょっとお緩めになってくださいませ。
所以...仰般,請你腰骨該放較冗息仔好無?
このままでは、本当に腰が折れてしまいます」
像恁樣正經腰骨會斷忒。」
「何だ、若いくせにだらしない奴め」
「麽个東西啊!恁無用个後生人。」
実因は、腰を緩めてやりました。
實因兩脚放冗兜仔。
すっかり観念した男は、実因を背負いなおすと小さい声で尋ねました。
清楚考慮後个細倈仔,再過背等實因並細聲問:
「あの、どちらへ、おいででございましょうか?」
「er33,請問你愛去哪位?」
「うむ、えんの松原へ行ってくれ。わしはあそこで月を見ようと思っていたのに、お前が勝手にこんな所におぶって来たのじゃ」
「m,來去廟脣个松樹林,𠊎本旦想愛在該看月光,係你儘採摎𠊎背到這來敢毋係?」
「はい。では」
「好,無就來去該。」
男は実因をおぶったまま御所に引き返して、えんの松原に連れて来ました。
細倈仔背等實因倒轉廟去,來到廟脣个松樹林。
「あの、着きましたので、お降りになって下さいませ。わたしはここで失礼します」
「噯,到了,請你下來,𠊎送你到這,盡失禮!」
しかし実因は降りようとはせず、
毋過實因毋想下來,
「ああ、いい月だ」
と、言って、月をいつまでも眺めています。
講:「月光還靚哪!」一直看月光。
「あの、どうかお降りになって」
「噯,做得下來吂?」
男は頼みましたが、しかし実因は知らん顔で言います。
雖然細倈仔求佢,實因還係詐毋知講:
「次は、右近の馬場へ言ってみたい。そこへ連れて行け」
「續下來,來去就近个馬場,你背𠊎來去!」
「あの、そこまではとても。どうか、お許し下さい」
「噯,去到該片當為難。仰般,請你原諒莫去好麽?」
「右近の馬場だ」
「就近个馬場。」
実因は、また足に力を入れました。
實因,脚又交較大力。
「あ、いて、いて。分かりました。参りますから、ご勘弁を」
「啊,痛、恁痛,知咧,黏時來去,請原諒。」
男は仕方なく、もう一度実因を背負い直すと御所の外に出ました。
細倈仔無法度,又背等實因出廟寺去外背。
そして右に曲がり、やっとの事で右近の馬場にたどり着きました。
向正手析轉彎,經過千辛萬苦正行到就近个馬場。
しかし、そこでも実因は降りようとせず、月を眺めたり歌を詠んだりしていました。
毋過實因還係毋想下來,看等月光唱起歌仔來。
「さて、次は喜辻(きつじ)の馬場(ばば)を、下の方へ散歩してみたい。連れて行ってくれ」
「續下來去喜辻个馬場,來去下背散步看阿仔,背𠊎去!」
男はへとへとですが逆らう事が出来ず、ため息をつきながらそこまでおぶって行きました。
細倈仔雖然當悿毋敢毋做,高不將緊背緊行又緊敨大氣,
そしてその後は、西宮(にしのみや)へも行きました。
包尾總算來到西宮。
こうしてその男は実因を一晩中おぶい続けて、夜明け頃、やっとお寺の学寮に送り届けたのです。
就恁樣,細倈仔歸暗晡背等實因,到天矇光正送佢轉到寺廟个學寮。
実因は奥に入ると、一枚の着物を持って出て来ました。
實因行落裡背間肚,拿一身衫褲出來,
そして、疲れ切って動く事が出来ない男に、その着物を与えると、
送分該个悿到無辦法停動个細倈仔後,講:
「これは駄賃だ。持って帰れ。・・・だが、次は許さぬから気をつけよ」
と、言って、奥に入って行きました。
「這係工錢,拿等好轉去...毋過,下二擺做毋得恁樣,愛注意兜仔!」
講煞就落裡肚去了。
おしまい
煞咧
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