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1月29日の日本の昔話
イラスト thin-p@A'sf
聴き耳ずきん
會聽話个頭巾
・日本語 ・日本語&中国語 ・客家語 ・日本語&客家語
客家語 : 鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、周りをグルッと山で囲まれた山奥に、一人のおじいさんが住んでいました。
頭擺頭擺,一個老阿伯戴在四圍分山包等个深山肚。
おじいさんは毎日朝になると、しばを入れるしょいこを背負い山へ入って行きました。
佢逐日朝晨背等張樵个擎仔行入山頂。
そして、一日中しばを刈っているのです。
續等,歸日在該撿樵。
今日もしばを一杯背負い、山から出て来ました。
今晡日摎往日共樣在山頂擎等淰淰个樵下山來。
「さて、ボツボツ帰るとするか。うん? あれは何じゃ?」
「慢慢行來去轉,ng24!該係麽个東西?」
おじいさんが帰ろうとすると子ギツネが一匹、一生懸命木の実を取ろうとしていました。
老阿伯想愛轉个時節看到一條狐狸子,拚死命想愛摘樹頂个菓子。
「はて、キツネでねえだか」
「e24,毋係狐狸嘎?」
この子ギツネ、足が悪いらしく、いくら頑張ってもうまく木の実が取れません。
這條狐狸子像形脚毋好,毋管佢幾努力都無法度順利摘到菓子。
「よしよし、わしが取ってやろう。・・・よっこらしょ。さあ、これをお食べ。それじゃあ、わしは行くからな」
「好!好,𠊎來摘看哪。...yokkorasho。這分你食,𠊎愛來去走咧。」
子ギツネは、おじいさんの親切がよほど嬉しかったのか、いつまでもいつまでも、おじいさんの後ろ姿を見送っていました。
狐狸子可能係因為老阿伯个親切感覺相當歡喜敢?目珠一直看等老阿伯个背影送佢走。
そんなある日、おじいさんは町へ買い物に出かけましたが、帰りがすっかり遅くなってしまいました。
有一日老阿伯去街路買東西,轉个時節當夜了,
「急がなくては」
「無遽兜斯。」
すっかり暗くなった日暮れ道をおじいさんが急ぎ足でやってきますと、丘の上で子ギツネが待っていました。
老阿伯在該暗摸胥疏个路上,三步做二步走,該狐狸子在崎頂等佢。
「あれまあ、こないだのキツネでねえだか」
「該毋係頭過該條狐狸子嘎?」
何やら、しきりにおじいさんを招いている様子です。
仰會像形當熱心摎老阿伯擛手。
おじいさんは、キツネの後をついて行きました。
老阿伯跈狐狸子个後背行等去。
子ギツネは悪い足を引きずりながら、一生懸命におじいさんをどこかへ案内しようとしています。
狐狸子因為脚毋好,拖等行,拚死命愛渡老阿伯去哪位樣。
ついたところは、竹やぶの中のキツネの住みかでした。
等去到正知竹頭下該位係狐狸戴个竇。
「ほう、ここがお前の家か」
「ho,這位係你屋下麽?」
キツネの家にはお母さんギツネがおりましたが、病気で寝たきりの様です。
狐狸屋下有狐狸媽媽,因為發病仔所以在該睡等。
お母さんギツネが、何度も何度もおじいさんにおじぎをしています。
狐狸媽媽緊同佢鞠躬感謝。
息子を助けてもらったお礼を、言っている様に見えました。
看得出盡像愛答謝佢摎厥倈仔𢯭手。
そのうち、奥から何やら取り出して来ました。
同時在間肚拿麼个東西出來。
それは、一枚の古ぼけたずきんでした。
該係一條盡舊个頭巾(𠖄帕)。
「何やら汚いずきんじゃが、これをわしにくれるというのかね。では、ありがたく頂いておこう」
「雖然該係屙屙糟糟个頭巾(𠖄帕),這東西愛送分𠊎樣,該就承蒙你了。」
おじいさんは、お礼を言ってずきんを受け取ると、元来た道を一人で帰って行きました。
老阿伯,感謝佢並接過頭巾(𠖄帕),過後一儕人行原來該條路行轉去。
子ギツネは、いつまでもおじいさんを見送りました。
狐狸子目珠一直看等老阿伯个後影送佢走。
さて、あくる日の事。
第二日,
おじいさんが庭でまきを割っていますと、ヒラリと、足元に何かが落ちました。
老阿伯在天墀坪破樵,毋知麼个東西輕輕跌到厥脚下。
「これはゆんべ、キツネからもらったずきんじゃな。・・・ちょっくらかぶってみるか」
「這毋係昨暗晡狐狸送个頭巾咩?...試戴看看哪。」
おじいさんはずきんをかぶって、またまき割りを始めました。
老阿伯就將頭巾戴起來,開始繼續破樵。
すると、
「家の亭主ときたら、一日中、巣の中で寝てばかり。今頃は、すっかり太り過ぎて、飛ぶのがしんどいなぞと言うとりますの」
過後,
「屋下个主人歸日在竇肚睡目,這下昶肥了,飛起來當辛苦。」
「ほう、痩せのちゅん五郎じゃった、おたくの亭主がのう」
(ho53,係瘦夾夾个純五郎,你屋下个主人嘎)
何やら聞いた事もない話し声が、おじいさんの耳に聞こえて来ました。
老阿伯个耳空聽到,無知麽个毋識聽過个講話聲:
「はて、確かに話し声がしたが、誰じゃろう?」
「奇怪,確實有人講話,到底係麽人?」
家の中をのぞいて見ましたが、誰もいません。
看看屋肚又無半儕。
「裏林のちゅん吉が、腹が痛くてすっかり弱っとるそうじゃ」
「樹林裡背肚个中吉,聽講肚屎痛,身体變到盡弱。」
「それは、木の実の食べ過ぎじゃあ」
「該係樹子食忒多咧。」
おじいさんは、また声に気がつきました。
老阿伯又注意到聲音。
「おかしいのう。誰か人がいるようじゃが、・・・やっぱり誰もおらん」
「還奇怪呢!像有麼儕在該樣...還係無人。」
おじいさんは家をグルリと一回りして、ヒョイと上を見上げました。
老阿伯再過看一擺屋肚,忽然間看自家頭那頂。
「うん? もしかしたら、このずきんのせいでは」
「ng24?可能係這頭巾个関係。」
おじいさんは、ずきんを脱いだりかぶったりしてみました
老阿伯摎頭巾脫下來、戴上去,試看有麼个爭差無?。
「やはりこれか」
「果然係這?」
キツネがくれたこのずきんは、これをかぶると動物や草や木の話し声が聞こえるという、不思議なずきんだったのです。
戴狐狸送个頭巾,就聽得到動物、草、樹仔講話个聲音,還奇妙个頭巾。
おじいさんはキツネがこんなに大切な物を自分にくれた事を、心からうれしく思いました。
老阿伯想著狐狸會送恁重要个東西,非常歡喜。
さて次の日から、おじいさんは山へ行くのがこれまでよりも、もっともっと楽しくなりました。
第二日開始,老阿伯去山頂比頭過還阿快樂。
ずきんをかぶって山へ入ると、小鳥や動物たちの話し声がいっぱい聞こえてきます。
戴等頭巾做得聽到鳥仔、動物講話。
枝に止まって話している小鳥。
停在樹椏講話个鳥仔。
木の上で話しているリス。
樹頂講話个松鼠。
みんな楽しそうに、話しています。
大家快快樂樂在該打嘴鼓。
おじいさんは山でしばを刈りながら、小鳥や動物のおしゃべりを聞くのが楽しくて仕方ありません。
老阿伯在山頂一片撿樵一片聽鳥仔、動物打嘴鼓暢到耐毋得。
「わたしゃ、喉を傷めて、すっかり歌に自信がなくなっちまった」
「𠊎喉嗹頦著傷,唱歌仔完全無信心。」
「そんな事ございませんよ。とっても良いお声ですわ」
「無該種事情哪,聲音特別好啦!」
「そうかな、では、いっちょう歌おうかな」
「有影無?無該共下唱!」
何と、虫の話し声まで聞こえるのです。
仰會連蟲仔講个話都聽得著。
おじいさんはこうして、夜通し虫たちの歌声に耳を傾けていました。
老阿伯就恁樣形歸暗晡在該聽蟲仔唱歌仔。
一人暮らしのおじいさんも、これで少しもさびしくありません。
一儕人過日仔个老阿伯,因為恁仰毋會再過孤栖咧。
そんなある日の事。
有一日,
おじいさんが山からしばを背負って下りて来ますと、木の上でカラスが二羽、何やらしゃべっています。
老阿伯在山頂擎樵轉个時節,樹尾頂有二隻烏鴉,毋知在該講麽个?
おじいさんは聴き耳ずきんを取り出してかぶり、耳をすましますと、
老阿伯拿出頭巾戴起來,注意聽烏鴉講話。
「長者(ちょうじゃ)どんの娘がのう」
「有錢人个妹仔啊。」
「そうよ、もう長い間の病気でのう。この娘の病気は、長者どんの庭にうわっとるくすの木のたたりじゃそうな」
「係呦,病盡久咧,厥妹仔个病聽講係天墀坪該頭樟樹作怪。」
「くすの木のたたり?何でそんな」
「該頭樟樹作怪?麼个啊!」
「さあ、それはくすの木の話を聞いてみんとのう」
「該係樟樹个談話中聽到个哦!」
カラスのうわさ話を聞いたおじいさんは、さっそく長者の家を尋ねました。
聽到烏鴉个閒談,老阿伯煞煞去有錢人屋下。
長者は、本当に困っていました。
有錢人非常難過。
一人娘が、重い病気で寝たきりだったからです。
一個妹仔著病橫在該。
おじいさんはその夜、蔵の中に泊めてもらう事にしました。
老阿伯該暗晡斯在倉庫肚歇。
ずきんをかぶって、待っていますと。
戴等頭巾,等看有麼个事情發生麽?
「痛いよー。痛いよー」
「恁痛喔!恁痛喔!」
蔵の外で、くすの木の泣き声らしきものが聞こえます。
聽到倉庫外背像形樟樹个叫聲。
くすの木に、なぎの木と、松の木が声をかけました。
竹柏樹摎松樹喊樟樹講:
「どうしました、くすの木どん?」
「做麽个呢?樟樹。」
「おお、こんばんは。まあ、わたしのこの格好を見て下され。新しい蔵がちょうど腰の上に建ってのう。もう、苦しゅうて苦しゅうて」
「哦,大家好!看𠊎恁好个身材,新个倉庫起到𠊎囊腰頂,還艱苦!還艱苦!」
「それは、お困りじゃのう」
「該當麻煩呢!」
「それでのう、わしは、こんな蔵を建てた長者どんを恨んで、長者どんの娘を病気にして困らせているんじゃ」
「所以啊,𠊎就當恨恁樣起倉庫个有錢人,摎厥妹仔舞到發病仔,添兜麻煩分佢。」
蔵の中のおじいさんは、くすの木たちのこの話を聞いて、すっかり安心しました。
倉庫肚个老阿伯聽到樟樹講个話後就當安心咧。
(蔵をどかしさえすれば、娘ごの病は必ず良くなる)
(摎倉庫處理好,妹仔个病定著會好。)
次の日。
第二日,
おじいさんは、長者にこの事を話しました。
就摎有錢人報告這件事情,
長者は、すぐに蔵の場所を変える事にしました。
有錢人黏時改變倉庫个場所。
それから何日かたって、蔵の重みが取れたくすの木は、元気を取り戻して青い葉をいっぱいに茂らせたのです。
過一站仔倉庫个重量拿走咧,樟樹恢復元氣,生出歸樹淰淰、青青个葉仔。
長者の娘も、すっかり元気になりました。
妹仔醫毋著个病完全好了。
長者は大喜びで、おじいさんにいっぱいのお宝をあげました。
有錢人當歡喜送一大堆寶物分老阿伯。
「これは、キツネがくれたずきんのおかげじゃ。キツネの好物でも買ってやるべえ」
「這係打幫狐狸送个頭巾正有个喲,愛買兜狐狸愛个東西分佢。」
おじいさんはキツネの大好きな油あげを買って、山道を帰って行きました。
老阿伯買兜油烰个豆腐,行山路轉屋下去。
おしまい
煞咧
※ この「聴き耳ずきん」の朗読とイラストは、以下の方々よりご提供を受けております。
おはなしパタくん 2009年2月3日号
日本の昔話「聴き耳ずきん」
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出演:山口真依
音楽・演出・イラスト:thin-p@A'sf
企画・制作:A'sf
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