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ふくむすめどうわしゅう(福娘童話集) >にほんむかしばなし(日本民间故事) >七月
7月6日の日本の昔話
左甚五郎の忘れ傘
左甚五郎遗忘的油纸伞
翻訳者 広東省惠州学院 吴定恩
にほんご(日语) ・ちゅうごくご(中文) ・日语&中文
むかしむかし、日本一の名工と名高い左甚五郎(ひだりじんごろう)が、京都の知恩院(ちおんいん)というお寺の本堂を完成させた時、それを見た都の人たちが、そのあまりの見事さにこんなうわさをしました。
很久很久以前,有位誉为日本第一的名匠叫左甚五郎,当他把京都寺院知恩院的正殿建成的时候,看见的人们都称赞他修建地非常好。
「さすがは、左甚五郎。見事な出来だ」
“真不愧是左甚五郎。做得真出色啊。”
「ああ、ここには、一点の欠点もない」
“啊,是啊,这里一点缺点都没有。”
「しかし、あまりにも完全すぎると、それを知った神さまが嫉妬(しっと)して、不幸を起こすと言うぞ」
“但是,有传言说做得太好会引起神的嫉妒,带来不幸啊。”
もちろん、この言い伝えを知っていた左甚五郎は、この仕事がまだ不完全であるかのように見せかけるために、お堂の屋根の瓦を二枚、わざとつけなかったのです。
当然,知道了这个传言的左甚五郎,为了让正殿看起来没有那么完美,故意没有放上屋顶上的两块砖瓦。
そしてさらに自分が使っている唐傘(からかさ)を、わざと本堂のわきに置いて帰りました。
然后他还把自己用着的油纸伞故意放在了正殿旁边就回家了。
さて、本堂が完成してからしばらくして、本堂で偉いお坊さんの話を聞く会がもよおされました。
于是,在正殿建好不久,有位了不起的和尚在正殿举行了一个谈话会。
その日は、あいにくの大雨でしたが、その雨の中をやって来た一人の子どもが熱心に話を聞いていました。
那一天,不凑巧地下起了大雨,在雨中走来了一个小孩,他很热心地听了这位和尚的谈话会。
「まだ小さいのに、なかなか信心深い子だ」
“明明还这么小,却是个很有佛心的孩子啊。”
話をしているお坊さんは、とても感心して子どもを見ていました。
やがて話は終りましたが、大雨は少しもやむ気配がありません。
说着话的和尚,非常感动的看着这个孩子。终于说话结束了,但是大雨完全没有停止的迹象。
そこでお坊さんは、本堂から出ていこうとする子どもに声をかけました。
在此时,和尚对正要离开正殿的孩子说。
「この雨では、風邪を引いてしまう。この傘を、持って行きなさい」
“淋着雨走会感冒的。你把这把伞拿走吧。”
そしてそこに立てかけてあった甚五郎の唐傘を、子どもに差し出しました。
然后把立在正殿旁边的左甚五郎的油纸伞,给了这个小孩。
すると子どもは礼儀正しく頭を下げて、こう言ったのです。
然后这个孩子很有礼貌地鞠了个躬,这样说道。
「わたしは、このご本堂が建つ前からここの草むらに住んでいた、濡髪童子(ぬれかみどうじ)という白ギツネです。
住み慣れた家を奪われて、うらみに思っていましたが、今日、お坊さまのお話を聞いて心を入れ替える事にしました。
うらみは忘れて、これからはこのお寺をお守りします」
“我是这个正殿建成前就在这里的草丛里住着的名为濡发童子的白狐狸。已经住习惯的家被夺走了,我觉得很怨恨,但是今天听了住持您的话,我改变了自己的心意。我要忘记怨恨,从此以后守护这间寺庙。”
それを聞いたお坊さんはびっくりしましたが、にっこり笑って言いました。
听了这些话的和尚虽然很惊讶,但还是笑着说,
「そうか、ありがとう。それならここに祠(ほこら)を建てて、そなたの住む所をつくってやろう」
“是这样啊,谢谢你。既然这样就在这里建一个祠堂、当做是给你的住处吧。”
白ギツネの濡髪童子はうなずいて傘を借りると、降りしきる雨の中を山の方へと帰っていきました。
白狐狸做濡髪童子点了点头,撑着借来的油纸伞,在不停下着的雨中向着山的方向回去了。
次の日、お坊さんが朝のおつとめをすませて本堂から出てくると、本堂のわきの軒下に、昨日貸した甚五郎の唐傘がちゃんと置いてありました。
第二天,这位和尚完成早上的诵经功课后出了正殿,发现在旁边的房檐下,昨天借出去的左甚五郎的油纸伞好好地在那里放着。
お坊さんはにっこり微笑むと、白ギツネとの約束通り、お寺の境内に小さな祠を建てて、濡髪堂(ぬれかみどう)と名づけたのです。
这位和尚笑了笑,遵从了和白狐狸的约定,在寺庙内建了一个小祠堂,命名为濡发堂。
左甚五郎の忘れ傘は、長い年月に紙が腐って骨だけになってしまいましたが、今でも知恩院の本堂に置いてあるそうです。
左甚五郎遗忘的油纸伞,经过了长久的年月,虽然纸都被腐蚀了只剩下了骨架,但是据说现在仍然放置于知恩院的正殿里。
おしまい
結束
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