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ふくむすめどうわしゅう(福娘童話集) >にほんむかしばなし(日本民间故事) >七月
7月14日の日本の昔話
雷さまの病気
雷公的病
翻訳者 広東省恵州学院 関清倩
にほんご(日语) ・ちゅうごくご(中文) ・日语&中文
むかしむかし、下野の国(しもつけのくに→栃木県)の粕尾(かすお)と言う所に、名の知れた医者としても有名な和尚(おしょう)さんが住んでいました。
很久很久以前,在下野国(现日本的枥木县)的一个叫粕尾的这个地方,住着一位医术很厉害的有名的和尚。
夏の昼さがりの事、和尚さんは弟子の小坊主を連れて病人の家から帰る途中でした。
在一个夏天的午后,和尚带着弟子小和尚从病人家回寺庙的路上,小和尚说:
「和尚さま、今日もお暑い事で」
“师父,今天也很热啊。”
「まったくじゃ。しかも蒸し暑くて、汗が乾かん」
和尚说:“可不是嘛。还很闷热,汗都没停过。”
二人は汗をふきながら歩いていましたが、突然、ポツリポツリと雨が降り始めて、みるみるうちに水おけをひっくり返した様な夕立になってしまいました。
两个人一边擦汗一边走,突然,一滴一滴地下起了雨,不知不觉中下起大暴雨了。
「急げ!」
和尚说:“快点!”
「はい」
小和尚回答:“嗯嗯。”
大雨と一緒に、いなびかりが走りました。
ゴロゴロゴロー!
不久,就闪起了雷电。轰隆隆轰隆隆!
「きゃー、かみなり! 和尚さま、助けてー!」
“啊!打雷了!师父,快点救我!”小和尚很害怕地说。
「これっ、大事な薬箱を放り出す奴があるか!」
“喂,怎么会有把这么重要的药箱扔出去的家伙!”和尚很生气的说。
「すみません。でもわたくしは、かみなりが大嫌いなもので」
“对不起,可是我最怕打雷了。”
ゴロゴロゴローッ!
ドカーン!!
すぐ近くの木に、かみなりが落ちたようです。
轰隆隆轰隆隆!咔-!好像雷打在了附近的树上了。
「わーっ! 和尚さま!」
“啊!!师父!”小和尚大声的喊到。
「だから、薬箱を放り出すな!」
和尚さんは怖がる小坊主を引きずって、やっとの事で寺へ帰ってきました。
“都说了,不要把药箱扔出来!”和尚拖着吓坏了得小和尚,终于回到了寺庙了。
「和尚さま。早く雨戸を閉めてください」
小坊主が言いますが、和尚さんはいなずまが光る空をじっと見上げています。
“师父,快点把防雨窗关上吧。”小和尚说,但和尚一直抬头看着闪电的那片天空说:
「ほほう。このかみなりさんは、病気にかかっておるわい」
“哦,原来这个雷公生病了。”
「へっ? 和尚さまは、かみなりの病気までわかるのですか?」
“什么?师父连雷公的病都能知道吗?”
「うむ、ゴロゴロという音でな」
さすがは、天下の名医です。
“嗯,雷声隆隆地响啊。”真不愧是天下名医。
その夜、ねむっている和尚さんの枕元に、こっそりと忍び寄った者がいます。
那天晚上,有个人悄悄地来到了睡着的和尚的枕边。
それはモジャモジャ頭から二本のツノを生やし、トラ皮のパンツをはいたかみなりさまでした。
でも、何だか元気がありません。
和尚さんのそばに座って、
「・・・ふーっ」
と、ため息をついているのです。
那就是两只角长在乱糟糟的头发上,穿着虎皮裤衩的雷公。但是雷公好像没什么精神地坐在了和尚旁边,“唉。”地叹了一声。
それに気づいた和尚さんは薄目を開けて様子を見ていましたが、やがて先に声をかけました。
「どうかしたのか? 何か、お困りの様じゃが」
发现叹气的和尚微微地睁开了双眼去看,过来一会,就先开口问:“怎么了吗?你好像很苦恼的样子。”
和尚さんが声をかけると、かみなりさまは和尚さんの前にガバッとひれふしました。
「わ、わしは、かみなりでござる」
听到了和尚的声音后,雷公啪的一声跪拜在和尚面前说:“我,我是雷公。”
「見ればわかる。それで、何か用か?」
和尚说:“一看就知道你是雷公了。所以,有什么事吗?”
かみなりさまは、涙を流しながら言いました。
「この二、三日、具合がおかしいのです。どうか、わしの病を治してくだされ。お願いします」
雷公一边哭一边说:“这两三天,身体很不舒服,请你一定要治好我的病,拜托了。”
「やっぱりのう」
和尚说:“果然是这样。”
「それでその・・・、天下の名医ともなれば、お代はお高いでしょうが。こんな物で、いかがでしょうか?」
かみなりさまはそう言って、小判を三枚差し出しました。
“那个,你是天下的名医的话,费用肯定很高吧。这个怎么样?”说完,雷公就拿出来三个金币。
しかし和尚さんは、知らん顔です。
但和尚无动于衷的坐着。
「えっ! これでは、たりませぬか」
かみなりさまは、小判を五枚差し出しました。
“呃!这还不够吗?”说完,雷公又拿出五个金币。
すると和尚さんはその小判をちらりと見て、『ふん!』と鼻で笑いました。
「わしの治療代は、うーんと高いのじゃ」
这时,和尚稍微地看了一眼金币,呼的嘲笑了起来说:“我的治疗费用可是很高的?”
「そうでございましょう。何しろ、天下の名医でございますし。それではさらに、小判を追加して」
“是的,不管怎么说,你是天下名医啊。那我就再加金币。”
「いやいや。金の話は後にして、まずはそこへ横になりなさい」
“不不,先不说钱的问题了,先在那里躺下来吧。”
「えっ、診てくださるんですか!」
かみなりさまは、大喜びです。
和尚さんは腕まくりをすると、かみなりさまの体を力一杯押したり、もんだりして調べます。
“嗯,要帮我看病是吗!”雷公很开心地对和尚说,和尚挽起袖子,手用力地往雷公的身上一按一揉的来回弄。
「ひゃー! ひぇー!うひょー! 痛い痛い! 助けてくれ~!」
かみなりさまは、あまりの痛さに大声をあげました。
その大声に驚いて、小坊主は部屋のすみで震えています。
“啊!啊!呼!痛痛痛!轻点轻点!”雷公因为太痛了很大声地喊起来了。被雷公的声音惊吓到的小和尚怕到躲在房间的角落里了。
「これ、小坊主!
そんなところで、何をしておる。
今度はお灸(きゅう)をするから、早く道具を持ってまいれ!」
急に声をかけられて、小坊主はビックリです。
和尚看到了小和尚就对小和尚叫到:“喂!你还在那里干什么!待会要做针灸,快点把工具拿过来!”突然被叫到,小和尚吓到了,说:
「和尚さま。
何で、かみなりなんぞの病気を診るのですか!
かみなりは怖いから、嫌です!」
“师父,为什么要帮这么无情的雷公治病呢!雷公很可怕,我不想帮他!”小和尚说。
「何を言うとる!
さあ、お前もお灸の手伝いをしろ!」
“你在说什么!快!你也快点来帮忙做针灸!”
「和尚さま。
あんな人迷惑なかみなりなぞ、いっそ死んでいただいた方がよいのでは」
“师父,他可是让人困扰的雷公哦,干脆让他死了不是更好吗?”
「ばっかも~ん!!
どんな者の病気でも診るのが、医者のつとめじゃ!」
“愚蠢!无论是谁生病了,替他治病不就是医生的职责吗!”
「うぅー、わかりました」
“唉,我知道了。”
和尚さんは小坊主からお灸を受け取ると、かみなりさまにお灸をすえました。
「うお~っ、あちちち、助けて~!」
あまりの熱さに、かみなりさまは大暴れです。
ところがお灸が終わったとたん、かみなりさまはニッコリ笑いました。
“哦哦,好热好热,救命啊!”因为太热了,雷公大闹了起来。但等针灸一结束,雷公就笑起来了,说:
「おおっ! 痛みがなくなった。体が軽くなった。お灸をすえたら、もう治ったぞ!」
さすがは、天下の名医。
「ありがとうございました! ・・・で、お代の方は、さぞお高いんでしょうなぁ」
“哦吼吼!不痛了。身体也变得轻松起来了。做了针灸之后,已经治好病了”,真不愧是天下名医。“真是太谢谢你了。那个,费用的钱一定很高吧。”
「治療代か? 治療代は、確かに高いぞ。・・・じゃが、金はいらん」
“治疗费?治疗费确实很高。但,不用钱。”
「じゃあ、ただなんですか!?」
“那,是免费吗?”
「いいや、金の代わりに、お前にはしてもらいたい事が二つある。
一つは、この粕尾(かすお)では、かみなりがよく落ちて、人が死んだり家が焼けたりして困っておる。
これからは、決してかみなりを落とさない事」
“不不,比起钱,我更想你做这两件事。一件事是,因为雷总是落在粕尾这里,要么人死了,要么家被烧了,村里的人很困扰。所以从现在起,绝不可以打雷在这里。”
「へい、へい、それは、おやすい事で」
“哈哈哈,这很简单。”
「二つ目は、この辺りを流れる粕尾川の事じゃ。
粕尾川は、大雨が降るたびに水があふれて困っておる。
川が、村の中を流れておるためじゃ。
この川の流れを、村はずれに変えてほしい。
これが、治療代の代わりじゃ。
どうだ? 出来るか?」
“第二件事就是这附近不是有条经过粕尾的河吗。粕尾河每次下大雨时水都会溢出来流进村子里,让人们很困扰。为了不让这河水流入村里,希望你可以让这条河绕道而行。这就是治疗费。怎么样,做得到吗?”
「へい。そんな事でしたら、このかみなりにお任せくだせえ」
どんな無茶を言われるかと心配していたかみなりさまは、ホッとして言いました。
“呃,如果是这样的要求的话,就交给我雷公吧。”还担心和尚会提出多么难的要求的雷公放下心地说。
「それではまず、粕尾の人たちに、お札を配ってください。
お札を家の門口に、はってもらうのです。
それから粕尾川ですが、流れを変えてほしい場所に、さいかち(→マメ科の落葉高木)の木を植えてください。
そうすれば、七日のうちにはきっと。
・・・では、ありがとうございます」
かみなりさまはそう言うと、天に登ってしまいました。
“那么首先,先把纸符发给粕尾的每个人。让他们把纸符贴到自己的家门口。然后就是在想把粕尾河改变河流的地方种上皂角的树(豆类的落叶高木),这样的话,七天肯定会弄好。那么谢谢你了,我这就走了。”说完后,雷公就飞到天上去了。
和尚さんは、さっそく村人たちをお寺に集めてお札を配りました。
そして山のふもとの目立つ位置に、さいかちの木を植えました。
和尚马上让村里的人集合起来,分发纸符。然后在山下明显的地方种上皂角树。
さて、その日はとても良い天気でしたが、にわかに黒雲がわき起こったかと思うといなずまが光り、ザーザーと激しい雨が降り出しました。
那天本来是很好的天气的,突然乌云密布,闪起了电,沙沙沙地下起了大雨。
まるで、天の井戸(いど)がひっくり返った様な大夕立です。
好像是天的井水倒翻一样的大暴风雨。
村人たちは和尚さんから頂いたお札をはって雨戸を閉めて、雨が止むのをジッと待っていました。
村里的人把从和尚那里得到的牌子贴着,关了防雨窗,一直在等着雨停。
こうしてちょうど七日目、あれほど激しかった大雨がピタリと止んだのです。
就这样刚好第七天,那么大的雨停了。
雨戸を開けると黒雲はなくなり、太陽が顔を出しています。
打开防雨窗,黑云不见了,太阳出来了。
不思議な事に、あれだけの大雨にもかかわらず、かみなりは一つも落ちませんでした。
真是不可思议的事啊,那么大的雨,却没有打雷。
「あっ、あれを見ろ!」
村人が指さすを方を見ると、昨日まで流れていた粕尾川がきれいに干上がり、流れを変えて、さいかちの木のそばをゆうゆうと流れているではありませんか。
“啊!快看那里!”村里的人往手指指着的方向一看,直到昨天还流着水的粕尾河干了,水流改变了,在皂角树旁静静地流淌着。
これでもう、村に洪水(こうずい)が起こる心配はなくなりました。
かみなりさまは、和尚さんとの約束を果たしたのです。
这样的话,村里的人就不必再担心会有洪水发生了。雷公实现了和和尚的约定了。
それからというもの、粕尾の里では落雷の被害は全くなくなったという事です。
在那之后,粕尾的这个村子再也没有受到雷的灾害了。
おしまい
結束
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