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福娘童話集 > きょうの百物語 > 2月の百物語 > 小僧の鬼退治 
      2月8日の百物語 
          
          
         
小僧の鬼退治 
千葉県の民話 → 千葉県の情報 
       
      ・日本語 ・日本語&中国語 
      
      
       むかしむかし、ある村に、山から人食い鬼がやって来ました。 
 鬼は村の女や子どもをさらっては、山へ連れて帰って食べてしまうのです。 
 
 それを聞いたお寺の和尚さんは朝から晩までお経をあげて鬼を追い払おうとしましたが、鬼はお経を聞いても全くの平気で、村の女や子どもをさらうのを止めませんでした。 
 
 そんなある日の事、お寺の小僧が和尚さんに言いました。 
「和尚さま、おらを鬼退治に行かせてください。 
 このままでは、村から人がいなくなります。 
 どうやって鬼退治をすればいいかはわかりませんが、こうやっている間にも鬼はやって来るのです」 
 それを聞いた和尚さんは、あわてて首を横に振りました。 
「何を言っとる。お前に鬼を退治など、出来るわけがないだろう。行ったら、すぐに食べられてしまうぞ」 
「いいえ、行かせてください」 
「駄目じゃ!」 
「絶対に、行きます」 
「・・・・・・」 
 とうとう根負けした和尚さんは、小僧にお寺の宝物の隠れみのとわらじを渡して言いました。 
「いいか。 
 この隠れみのは、かぶれば姿が消えるみのじゃ。 
 そしてわらじは韋駄天(いだてん)わらじと言って、はけば風の様に早く走れるわらじじゃ。 
 大むかしに天狗さまからいただいた、この寺の宝だが、お前にやろう。 
 では、気をつけて行ってくるのじゃよ」 
「はい。ありがとうございます」 
 小僧は隠れみのと韋駄天わらじを持って、元気良く鬼の住む山へ出かけました。 
 
 さて、あまりにも元気良く山を登った小僧は、途中でくたびれて眠くなってしまいました。 
 そこで小僧は隠れみのを着て横になり、グーグーと寝てしまったのです。 
 そこへ、運悪く鬼がやって来ました。 
「くんくん、おや? 人間の匂いがするぞ」 
 匂いはしますが、人間の姿はどこにも見えません。 
「ふむ、気のせいか」 
 鬼が立ち去ろうとしたその時、小僧は寝返りをうって、かぶっていた隠れ蓑から足を出してしまいました。 
「ははっ、見つけたぞ」 
 鬼は小僧の小さな足をつかむと、そのまま逆さに持ち上げました。 
「しまった!」 
 小僧は逆さにつるされたまま暴れましたが、鬼はそのまま小僧を住みかに連れて行くと、小僧を岩屋へと放り込みました。 
 そして、どんぶりに山盛りのご飯を持って来て、小僧に差し出しました。 
「小僧、この飯を全部食え。お前はやせているから、丸々太ってから食ってやろう」 
 鬼はそう言うと、どこかへ行ってしまいました。 
 
 さて、一人残された小僧は、どんぶりいっぱいのご飯を見ながら考えました。 
(あせっては駄目だ。落ち着いて、いい方法を考えないと・・・。そうだ!) 
 ある名案を思いついた小僧は、ご飯を岩屋のすみっこに隠しました。 
 
 夕方なると、鬼はまたどんぶりいっぱいのご飯を持って来て言いました。 
「小僧、たーんと食え、どんどん食え、全部食え。太るまで待つのは面倒だから、明日、朝飯に食ってやる」 
「はい、おいしくいただいております」 
 小僧はそう答えて、鬼が行ってしまうとまた、ご飯をすみっこに隠しました。 
 
 次の朝、小僧は隠しておいたご飯を着物の下のお腹のあたりにつめておきました。 
 やがて鬼がやって来て、岩屋を開けました。 
「さあ、小僧。いよいよ食ってやるぞ」 
 鬼が手を伸ばした時、小僧は大声で言いました。 
「鬼さん! 鬼さんは、人間の出来る事なら何でも出来るって本当ですか? おらを食べる前に、その証拠を見せてください!」 
「生意気な事を言う小僧だな。人間に出来て、おれさまに出来ない事などあるものか!」 
「それなら、これは出来ますか?」 
 小僧は小刀を取り出すと、 
「えいっ!」 
と、自分のお腹を切りました。 
 すると着物が切れて、さっきつめたご飯がバラバラと出て来たのです。 
「どうです? おらは腹を切って、昨日食べたご飯を出す事が出来るのですよ」 
 それを見た鬼は、ちょっとびっくりしましたが、でもすぐに小僧さんをにらみつけて、 
「何だ、それくらいの事。このおれさまが腹を切ったら、今までに食った人間の骨がバラバラと出て来るわ」 
と、小僧から小刀を取り上げると、小僧の真似をして思いっきりお腹を切ったのです。 
 そのとたん、 
「うぎゃーーっ!」 
と、叫んで、鬼は死んでしまいました。 
「やった! 鬼をやったけたぞ!」 
 こうして見事に鬼退治をした小僧は、和尚さんにもらった韋駄天わらじをはいて、風の様に寺へ帰って行きました。 
      おしまい 
         
         
         
        
 
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