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ふくむすめどうわしゅう(福娘童話集) >ひゃくものがたり(百物語) >四月
4月18日の百物語
幽霊の足跡
幽灵的脚印
翻訳者 広東省恵州学院 彭永勁
にほんご(日语) ・ちゅうごくご(中文) ・日语&中文
むかしむかし、ある大きなお寺に、徳(とく)の高いお坊さんがいました。
很久很久以前,在某座大寺院有位德高望重的僧人。
お坊さんがいつもの様に夕方のおつとめをしていると、一人の女の人が本堂(ほんどう)に現れて、お経(きょう)が終わるのを待ってから足音を忍ばせてお坊さんに近づくと、
在僧人像往常一样做着诵经的午后功课时,有一位女性出现在正殿。等僧人诵完经后,她踩着轻轻的脚步靠近他,说:
「和尚さま。どうかわたしに、お経をあげてほしいのです」
と、言いました。
“师父,我想请你念经超度我。”
「あなたに?」
“超度你?”
「はい。
わたしは江戸の町に住む大工の妻で、名をお石(いし)と申します。
実は、わたしは死んでいます。
死んでから、まだこの世をさまよっているのです」
“是的,我叫阿石,是住在江户城里一位木匠的妻子。其实我已经死了,但仍然对这个世界有所迷恋。”
「何と、江戸の」
“原来是江户的…”
お坊さんは江戸の女と聞いて、お石の事を思い出しました。
僧人听到是江户的女性,于是依稀想起了阿石的事情。
実は一年ほど前に、お寺のご本尊を江戸へ運んで江戸の信者(しんじゃ)たちにお参りさせた事があります。
“实际上在一年多前,曾经把寺里的佛像请到江户去让当地的信徒参拜过。”僧人这样想。
このお石はその時、お経を読んだお坊さんの姿に深く感動していました。
而阿石当时被诵经的僧人的模样深深打动了。
「お石さん。よければ、詳しい話を聞かせてもらえないかね」
“阿石,可以的话,让我听听详情吧。”
「はい」
“可以。”
お石は、和尚さんに話し始めました。
阿石开始想僧人诉说原委。
「前に和尚さまにお会いしてからしばらくすると、わたしは病気になって、ずっとふせっていました。
“上次见过师父不久,我就卧病在床了。
お金などありませんから、お医者にかかる事も出来ません。
因为家境拮据,所以没办法寻医。
夫は家をあけたまま、どこで遊んでいるのかいっこうに帰って来ません。
丈夫也抛弃家庭,不知去哪游荡了,再也没有回来过。
そのうちに病気は重くなり、わたしは誰にもみとられる事なく死んだのです。
又过了不久我的病情加重了,于是我在没有人看护的情况下死去了。
ですからわたしは、いまだに成仏が出来ません。
所以,我到现在也没有办法升天成佛。
そこで和尚さまにお経を読んでいただこうと、箱根山(はこねやま)を越え、やっとの思いでここまでやって来たのです。
所以为了能让师父念经超度我,我翻越了箱根山,终于来到了这里。”
お石の話しに、お坊さんは胸を打たれました。
阿石的话让僧人深受感动。
「そうでしたか。それではあなたが成仏出来る様に、お経をあげましょう」
“原来如此。那就让我为你诵经,希望你能够安息成佛。”
お坊さんは本尊(ほんぞん)にむかうと、お石の為に一心に祈りました。
僧人面对着佛像一心一意为阿石诵经祈祷。
お石の幽霊(ゆうれい)は目に涙を浮かべながら、お坊さんの後ろで静かに座っていました。
阿石的幽灵眼含泪水,静静地坐在僧人身后。
やがて供養(くよう)が終わると、お石は無事に成仏したのか、その姿が消えていました。
不久,佛事结束,也不知道阿石是不是平安成佛了,她的身影消失了。
そして近くのざぶとんには、お石が立った時についたのか、土によごれた女の人の裸足の足跡がはっきりと残っていました。
而且,不知道是不是阿石站着的时候留下的,占有泥土的女人的脚印清晰地留在旁边的坐垫上。
「お石さん。あの世でやすらかに、過ごされるといい」
“阿石,愿你在那个世界过得安好。”
お坊さんは足跡のついたざぶとんに、手を合わせました。
僧人对着留有脚印的坐垫,双手合十祈祷。
お石の足跡はいまも額におさめられて、そのお寺に伝えられているという事です。
阿石的足迹至今让人印象深刻,于是这个故事在这间寺院里流传下来。
おしまい
結束
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