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ふくむすめどうわしゅう(福娘童話集) >ひゃくものがたり(百物語) >五月
5月21日の百物語
亡者が飲む最後の水
最后的水
翻訳者 広東省恵州学院 楊錦江
にほんご(日语) ・ちゅうごくご(中文) ・日语&中文
むかしむかし、ある険しい山に、みんなから仙人と呼ばれるおじいさんが住んでいました。
很久很久以前,在一座险峻的山上住着一名被称为“仙人”的老翁。
このおじいさんは、山を登って来る人たちの道案内をして暮らしています。
老翁居住在山上,并为登山的人们引路。
ある夏の晩の事、おじいさんは山の下から聞こえて来るおかしな声に目を覚ましました。
在某个夏天的晚上,老翁被山下传来的奇怪的声音吵醒了。
(こんな夜ふけに、何の声だろう)
不思議に思って小屋の外に出てみると、大勢の人が一緒になって泣いている様に聞こえます。
心里觉得很不可思议,这么晚了,那是什么声音啊,于是就往屋外走去看看是怎么回事。一到门外就听到一大群人一起哭泣的声音。
(迷子かな? しかし、今頃に山を登る人はいないはずだが)
老翁望向声音传来的方向心想:难道是迷路的人吗?
おじいさんは声のする方をのぞいてみましたが、深い霧が出ていて何も見えません。
可是现在这么晚了,按理说不会有登山的人啊。可是因为大雾什么也看不到。
大勢ですすり泣く声は次第に大きくなり、霧の中から風に乗って登ってきます。
哭泣声逐渐变大,乘着风穿过大雾传了过来。
おじいさんは声が気になって、その場にじっと立っていました。
老翁对这个声音十分介意,一动不动的站在原地。
すると突然に霧が晴れて、はるか下の方に青白い沼が浮かびあがりました。
突然间大雾散了,远方的山脚下浮起了一个青白色的沼泽。
「あれは、何だろう?」
“啊,那是什么?”老翁惊呼道。
おじいさんはこの山の事はすみからすみまで知っていますが、あんな沼を見たのは初めてです。
老翁对这座山的任一角落都十分了解,但却是第一次看到这个沼泽。
おじいさんが目を凝らすと、白い着物を着た人らしい物が、沼のふちを動き回っていました。
老翁定眼凝视,便看到了一群穿着白色衣服,跟人长得十分相似的物体,在沼泽中来回走动。
おじいさんは急いで、沼の方へと行きました。
于是,老翁便急忙往沼泽走去。
沼へ着くと、白い着物を着た何十人という人が、先をあらそって水を飲んでいるところでした。
来到沼泽边,就看到了数十个穿着白色衣服的人在争先恐后地喝水。
おじいさんは思わず、その人たちに声をかけました。
老翁不假思索便朝他们叫道:
「おーい、お前たち。そこで何をしているのだ?」
“喂,你们在这里干什么?”
すると何人かがいっせいに顔をあげて、おじいさんの方を見ました。
他们一听到老翁的声音,便齐齐抬起头看了看老翁。
その顔はぼうぼうに髪の毛が伸びており、それをしばる様にして、ひたいに三角のずきんをつけていました。
他们的脸上盖着蓬乱的头发,额头上都绑着一条三角的头巾,
そしてどの目も、火の様に赤く光っています。
而且每一双眼睛都发出像火一样红色的光。
「も、もっ、亡者だあーーっ!」
“啊,啊,是亡者!”
亡者とは悪い事をして亡くなった、地獄へ送られて行く人たちの事です。
老翁惊呼道。亡者是做了坏事而死去,并被送往地狱的人。
おじいさんは目をつむると、両手を合わせて一心に念仏を唱えました。
于是,老翁闭上了双眼,将双手合十,专心地诵念经文:
「なんまいだ、なんまいだ、なんまいだ、なんまいだ・・・」
“南无阿弥佗佛、南无阿弥佗佛……”
するとおじいさんの唱える念仏が苦しいのか、亡者たちは苦しそうにうめき声を上げると、どこかへと逃げて行きました。
不知是不是老翁念的经文比较沉重,亡者们听到后都发出了痛苦的呻吟声并四处逃跑。
しばらくしておじいさんが目を開けると、亡者はどこにもいません。
过了一会,老翁睁开双眼,发现亡者们都不见了,
そして青白く光る沼も、ありませんでした。
而且连青白色的沼泽也不见了。
「やれやれ、助かった。しかしあの亡者ども、ここで何をしていたのだ? ・・・はっ!」
“哎呀呀,得救了。可是那些亡者在这里做什么呢?啊~”
その時、おじいさんはむかし、自分の父親に聞いた話を思い出しました。
老翁想起了以前从父亲那里听说过的话。
『富山の立山(たてやま)にある地獄谷へ向かう亡者たちは、この山で最後の水を飲むらしい。亡者を見た者は近いうちに地獄へ引きづり込まれるから、気をつけろよ』
“据说去往富山的立山地狱谷的亡者们,会在这座山饮用最后的水。但凡看见亡者的人都会在不久后去往地狱,所以要小心点。”
父親の言葉通り、それからひと月もしないうちに、おじいさんは死んでしまったそうです。
后来如同老翁父亲所说的那样,在不到一个月的时间内,老翁就过世了。
おしまい
结束
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