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福娘童話集 > 百物語 > 十一月
11月6日の百物語
(11月6日的日本鬼故事)
殿さまを襲ったネコ
妖貓
・日本語 ・日本語&中国語
むかしむかし、江戸(えど→東京都)に有馬(ありま)という殿さまの屋敷がありました。
到好久以前、江戶的有馬城主。
ある春の夜、殿さまが便所(べんじょ)へ行っての帰り、おぼろ月をながめながら渡り廊下を歩いていると、何者かが後ろから駆け寄って来ました。
這就一年春、城主上廁所回來、這就靠到月光走到走廊上面、後面這就不曉得是那個跟過來了。
「何者!」
那個!
殿さまが振り向いた時、相手は両手で殿さまの首をしめつけてきたのです。
城主這腦殼一轉、就被人用雙手幫顜頚一掐。
それは見た事もない老婆(ろうば)で、髪をふり乱し、キバをむいて首をしめつけてくるのです。
這是條看都㫘看到過的老婆子、頭髮披到的、牙齒摛出來、用手就開始掐。
老婆とは思えない力に、殿さまの顔からみるみる血の気がなくなっていきました。
一條老婆子力氣是好大、城主看到看到人這就不行了。
しかし殿さまはあわてる事なく、首をしめつける手を払いのけると、刀を抜いて老婆に切りつけました。
但是城主人是冷靜到的、幫顜頚上面的兩條手拋開、刀一取、對到老婆子就是一刀。
「フギャーー!」
啊啊
老婆は叫び声の代わりに、ネコの様な無気味なうなり声を残して走り去りました。
這聲音就不是條老婆子的、而是一條好肌毛(鳥肌)的貓嚎。
「殿、いかがなさいましたか?」
搞甚麼了、出甚麼事了啊?
騒ぎを聞きつけた家来が、明かりを持って駆けつけました。
城裡面夥計聽到聲音這就都往這邊趕。
「何者かが、わしの首をしめようとしたので、切りつけたら逃げて行きおった。わしは大丈夫だから、いたずらに騒ぐでないぞ」
剛剛有人到掐我的顜頚、被我一刀放跑了、我人㫘事、不必慌亂。
殿さまはそれだけ言うと、何事もなかった様に部屋へ戻って行きました。
城主講完就甚麼事都㫘得的樣子往自己房裡面去了。
翌朝、殿さまは家老(かろう)を呼び出してたずねました。
第二天這就幫城裡面要人喊到。
「家来の中で、まだ出仕(しゅっし→勤めに出る事)していない者はないか?」
問屋裡面做事的夥計裡面還有㫘來了吧?
「ゆうべの事と、何かかかわりでもあるのでしょうか?」
這違(難道)和昨天晚上的事有關係啊?
「・・・・・・」
家老の問いに、殿さまは何も答えませんでした。
心腹反問、城主甚麼都㫘講。
家老が調べると、同じ家老仲間である角田要助(つのだようすけ)という男が、まだ出仕していない事がわかりました。
這就查了一圈、今天是同為心腹的角田要助人㫘看到。
そしてすぐに、角田の家へ使いを出したところ、
「実は昨夜、母が急病で倒れて、今も起きる事が出来ないのです。すぐ医者を呼び寄せましたが、どういうわけか母は部屋にひきこもり、誰も中へ入れてくれずに困っているのです」
這就跟到派人去角田屋裡邏。
角田這就講自己媽昨天晚上癱了、現在還到床上、跟她幫醫生喊了、但是就是一個人幫自己關屋裡不肯出來。
と、言うのです。
這麼交待了
家老はその事を、殿さまに伝えました。
後面心腹又是幫情況傳達城主。
すると殿さまは要助(ようすけ)を呼び出して、
ゆうべの出来事を伝えました。
城主這就又傳要助
這就港昨天晚上的事。
「すると殿は、その老婆がわたくしの母ではないかと?」
這意思就是那條婆子違是我媽啊?
要助が顔色を変えてたずねると、殿さまは首を振って言いました。
要助問這話的時候就急到好惱火、城主看他這樣子幫腦殼一擺。
「いや、そうだと言っているのではない。ただ世間(せけん)のうわさでは、化け物が老人にとりつく事があるという。そちの母も、とくと気をつけよ」
我不是這意思、我是聽這世間傳言人上了年紀這就容易被鬼怪上身、這回去之後要幫你媽好甚看到。
「・・・かしこまりました」
要助這就應了
おとなしく引き下がったものの、要助は不愉快でした。
雖然要助臉上㫘甚麼表示、但其實心裡不怎麼舒服。
(いくら殿でも、母上を化け物あつかいするとはあんまりだ。この上は母上の容体(ようたい)を見極めて、殿に申し開きをしなくては気がおさまらぬ)
畢竟自己媽著別個當妖怪看、這就自己也好甚幫他媽看到、到時候也是還他媽一個清白。
そこで要助は家に戻るなり、母親の寝ている部屋に駆けつけました。
要助這就回了屋、就進去他媽睡覺的屋子。
「誰じゃ? 誰もここに近づいてはならぬと言ったであろう!」
是哪個啊?我不是講了不準進來了啊!
母親の声に、要助が答えました。
要助這就回話了
「要助でございます。どうしても母上の容体を見届けたくて、参りました」
我是你兒、我進來看你來了。
「ならぬ! たとえ我が子でも、中へ入る事を許さん。早く立ち去れ!」
你是我兒也不準進!不準進來!聽到吧!
「しかし、母上にもしもの事があればどうなります。ご病気なら、医者にも診せなくては」
我怕有個萬一啦、這一定要跟你喊醫生啦。
「心配はいらん。二、三日休んでいれば、きっとよくなる」
我不要醫生、一兩天我人就好了。
「ですが」
怎麼不要啦
「ならぬと言っておるだろう!」
我講不要了!你快走!
要助がいくら頼んでも、母親は中へ入る事を許してくれません。
反正他媽就是不讓自己兒進。
(あの心優しい母上が、これほどまでにこばむとは。・・・これはもしかして、殿の言う事が本当かもしれない)
兒也是不曉得自己媽這脾氣怎麼是一哈豹變、這一想今天自己被主君喊過去莫不是有道理哦。
がまん出来なくなった要助は、戸を開けて中へ飛び込みました。
這兒直接就不管了、反正就是進去了。
「これほど言っても、まだわからんのか!」
我都這麼跟你講啊!你怎麼還是講不聽啊!
母親が怖い顔で要助をにらみつけましたが、要助はそのまま母親の布団(ふとん)を引きはがしました。
媽就惡起一副臉對到自己兒認到的、兒就幫媽從鋪蓋裡面一扯。
「ごめん!」
對不住了!
すると布団には、黒々と血の跡がついているではありませんか。
這一哈就看到鋪蓋裡面全是血印子、黑黑的。
よく見ると母親は右の肩に大きなけがをしていて、着物の上まで血がにじみ出ています。
再看自己媽肩膀上面、好大條口子、血還到往衣服上面滲。
「これは、ひどい」
怎麼得這個樣子啦
その時、要助の頭に、殿さまを襲う老婆の姿が浮かびました。
兒這事一哈就想起來城主被襲這事了。
(しかし、まさか母上にかぎって。それにそもそも、母上には殿を襲う理由はないではないか。だがそれにしても、なぜ大けがを隠すのだ?)
而且這怎麼得是我媽啦?我媽也㫘跟城主又甚麼過節啊、按講。但又是為甚麼要跟我隱瞞受傷這事啦?
要助には母親のあやしげな態度が、どうしても納得出来ません。
兒這一哈也是摸不清自己媽現在的情況。
「どこで、こんな大けがをしたのです」
這就問這條傷是到甚麼地方搞的。
要助があらためて母親にたずねると、母親は黙ったまま要助をにらみつけます。
兒一問、媽就對到兒惡起一副臉認、也不做聲。
目がらんらんと光り、今にも飛び掛ってきそうです。
眼珠子就作死的盯到的、好像這就要撲上去樣的。
いかに病気とはいえ、こんなに恐ろしい母親の顔を見たのは初めてです。
兒就想這害病了人也不至於是這個樣子啊。
(もはや、これまでだ。もし本当に母上であったなら、自分も腹を切って母上の後を追おう )
這樣子真是過稀爛、要這真的就是自己媽、那過自己也就自盡陪他媽去了。
要助は覚悟を決めると、刀を抜いて母親に切りつけました。
兒這就甚麼都想好了、取刀一砍。
「ギャオォォォー!」
啊啊!
母親がすさまじい叫び声をあげて起き上がろうとするところを、要助は胸元めがけて力一杯刀を突き刺します。
這媽一唏就準備起來了、要助又是對到心口前一據。
「なんて事を」
搞甚麼了啊、出什麼事了啊。
叫び声を聞いて駆けつけた家の者たちは、腰を抜かさんばかりに驚きました。
聽到動靜一屋人是都來了、人都過骸彈了。
要助は刀を持ったまま、母親の死骸(しがい)を見つめていました。
這就看到要助幫刀捏到的、旁邊他媽死到的。
すると不思議な事に、母親の体はだんだんと形がくずれてきて、やがてネコの姿が現れたのです。
但是怪事、這死人就開始慢慢變起來了、最後就看到一條貓。
そのネコは、頭から尻尾の先まで三尺(→約一メートル)ほどもある古ネコでした。
這貓從頭到尾巴差不多有一米、是條好大的老貓。
「やっぱり、母上ではなかったか」
還真不是我媽。
気をとりなおした要助は、家の者たちに命じました。
要助這一哈回神了、斥屋裡人。
「今から殿のところへ行く。わたしが帰って来るまで、この事は秘密にしておけ」
我現在馬上去城主那裡、我回來之前、甚麼事都莫講、曉得吧?
殿さまの屋敷へ行った要助は、殿さまに会うなり頭を下げました。
這人到了地方、腦殼就往地上一趴。
角田要助(かくたようすけ)、殿の眼力(がんりき)には、ほとほと感服(かんぷく)つかまつりました」
講城主眼力是真好、自己服氣了。
そしてこれまでの事を、殿さまに詳しく報告しました。
這就幫事情全部都交待了。
話をじっと聞いていた殿さまが、要助に言いました。
這就換城主講了。
「やはり、そうであったか。
我就曉得是這事。
だがこの事は、決して他人にもらすでないぞ。
母は、病死という事にしておけ。
但是這事不能讓其他人曉得
就講人是得病死的。
・・・それから、化け物とはいえ、母の姿をした者に刀を向けるのはつらかったであろう。
也是講雖然就是條貓妖、但是因為這事讓別個幫自己媽砍了、也是難為。
すまぬ、どうか許してくれ」
城主也表示歉意。
これを聞いて、要助はあらためて殿さまの思いやりに感謝しました。
要助也為城主想到自己而感激。
再び家に戻った要助は、家の者に命じてネコの死骸(しがい)を片付けると、母親の部屋の床下を掘らせてみました。
這就又歸了屋、斥屋裡人撿貓骨、幫媽房裡的地板挖了。
すると要助の思った通り、床下からガイコツになった母が出てきました。
果然地板底下自己真媽的骨頭就埋到的。
骨の様子から見て、数年はたっています。
看骨頭樣子、這都有好幾年了。
要助うかつにも母親を食い殺したネコを、今まで本当の母親と思ってつくしてきたのです。
這幾年要助都是幫這條殺媽貓當他親媽來顧。
「母上、どうぞお許しください」
這就又對到死人骨頭開始懺悔。
要助は一つ残らず母親の骨を拾って、骨(こつ)つぼにおさめました。
這就撿骨、納骨入壺
要助はせめてもの供養(くよう)にと、近くの寺で盛大(せいだい)な葬儀(そうぎ→そうしき)を行いました。
之前不小心、這就至少要幫白事做好、就到廟裡面搞了條大排場。
葬儀には殿さまもわざわざ来てくれて、要助の母親の為に手を合わせてくれました。
城主也是過來了、跟要助一起禱告。
おしまい
结束
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