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11月7日の百物語
琵琶石(びわいし)
長崎県の民話→ 長崎県情報
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むかしむかし、西海(さいかい)のある村に、目の不自由なおじいさんと静香(しずか)という孫娘が住んでいました。
静香はおじいさん思いの心やさしい娘で、毎日仕事の合間には、
「どうか、おじいさまの目が治りますように」
と、神さまにお願いをしていたのです。
そんなある日の事、静香は一人の修験者(しゅげんしゃ)に出会いました。
静香が修験者に、おじいさんの目の話をすると、
「あはははっ。目を治すなど簡単、簡単。わしが祈祷(きとう)すれば、すぐ治る」
と、言うのです。
「本当ですか!?」
「ああ、本当だとも。ただし・・・」
修験者はニヤリと笑うと、祈祷には米十俵と小判十枚が必要だと言ったのです。
貧しい静香に、とうてい払えるわけがありません。
静香が困っていると修験者は米十俵と小判十枚の代わりに、自分の知り合いのところへ一年間の奉公(ほうこう)にあがる様に言いました。
「・・・分かりました。それで、おじいさまの目が治るのなら」
「よし、ならば祈祷をしてやろう」
修験者はおじいさんの枕もとでさっそくまじないの文句を唱えると、静香をせきたてて船に乗り込みました。
さて、修験者に祈祷してもらったおじいさんの目は良くなるどころか悪くなる一方で、半年後には、もう何も見えなくなってしまいました。
それだけではありません。
約束の一年が過ぎたのに、どうしたわけか静香が戻って来ないのです。
「もしや、静香の身に何かあったのでは」
そこでおじいさんは琵琶法師となり、村々を回りながら静香を探して歩くようになりました。
ある日の事、海のそばを歩いていたおじいさんは、ふと、静香の声を聞いたように思いました。
「おお、静香。やっぱり戻ったか」
声のした方に向かって思わずかけ寄ったとき、おじいさんは足をすべらして、崖の下にころげ落ちてしまいました。
次の日、海岸で琵琶を抱いたまま死んでいるおじいさんを、村の若者が見つけました。
おじいさんは村人たちの手で葬られ、おじいさんが踏みはずした崖の石は『琵琶石』と呼ばれる様になりました。
そして、夜になるときまって、
「しずかー、しすかー」
と、言う、おじいさんのあわれな声が、石の中から聞こえて来るといいます。
今でも西海橋(さいかいばし)から横瀬(よこせ)を過ぎて港に通じる海岸に、『琵琶石』は残されているそうです。
おしまい
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