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3月20日の日本民話
子ザルのまつ
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むかし、松代町(まつしろちょう)と言うところに、徳嵩源五郎(とくたけげんごろう)と言う腕の良い彫り物師が住んでいました。
ある日、源五郎は山でサルの親子を見つけました。
母ザルは猟師に鉄砲で撃たれたのか、背中から血を流して死んでいましたが、そのふところには生まれたばかりの子ザルが、母ザルのおっぱいを探して手足を動かしています。
「なんと、可哀想に」
哀れに思った源五郎は、さっそく子ザルを抱くと家に連れて帰りました。
そして源五郎夫婦は子ザルに『まつ』と言う名前を付けて、我が子同様に可愛がったのです。
まつはとてもかしこいサルで、源五郎が踊りや芸を教えると、それは上手にやってみせるのです。
そしてまつの話は評判になって、やがては松代(まつしろ)の殿さまの耳にまで届きました。
殿さまはさっそく、源五郎とまつを呼び寄せました。
まつは源五郎の合図に合わせて、逆立ちや宙返りの芸を見せました。、
「これは見事。見事だ」
殿さまは、大喜びです。
そしてまつの芸を見終わった殿さまは、源五郎に言いました。
「源五郎よ。金なら、いくらでも出そう。だからサルをゆずってくれ」
「えっ、まつを?」
これには、源五郎も困ってしまいました。
たとえ殿さまの命令でも、まつは我が子同様に可愛がっているサルです。
(よわったな)
何と返事をしたら良いかと迷っていると、源五郎のそばに座っていたまつが、とつぜん殿さまの前に進み出て、ていねいに両手をつくと、
『そればかりは、ごかんべんを』
と、言う様に、何度もおじぎをしたのです。
これを見た殿さまは、とても心を打たれて、
「よいよい、今の言葉は取り消しじゃ。だがその代わり、時々城へ遊びに来るのじゃぞ」
と、やさしく言いました。
こうして源五郎夫婦とまつは、それからも仲良く幸せに暮らしました。
今でもまつのお墓は、松代町大信寺にある徳嵩家の墓地に残っているそうです。
おしまい
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