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1月16日の世界の昔話
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イラスト 「愛ちん(夢宮愛)」 運営サイト 「夢見る小さな部屋」
見えない着物
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投稿者 「Wiege/Kerze」
むかしむかし、三人のサギ師がいました。
いつもいつも上手にうそをついては、人の物を取っていたのです。
ある時、三人のサギ師は王さまのところへ行って言いました。
「王さま。わたくしたちは、とてもふしぎな布を、おることができます」
「ほう、どのような布じゃ?」
「本当の息子には見えますが偽者の息子には見えないという、不思議な布でございます」
王さまは、びっくりしました。
「本当に、そのような布がおれるのか?」
「はい。本当に、おれます」
王さまは、すっかり感心しました。
そのころ、この国では、お父さんが死ぬと、そのあとをついで家や土地やお金をもらえるのは、本当の息子だけ、ということになっていました。
「そういう便利な布があれば、だれが本当の息子かはっきりわかるわけだ。そして、ずるい偽者を、かんたんに見つけることもできるぞ」
そこで王さまは、三人のサギ師に金や銀や絹をたくさんやって、その不思議な布をおらせることにしました。
サギ師たちは、お城の中の一部屋に入って、布をおりはじめました。
四、五日たつと、三人は言いました。
「王さま。世界一めずらしい布がだんだん出来てまいりました。一度、ごらんになってください」
(わしは間違いなく、前の王さまの本当の息子だ)
と、王さまは思っていました。
でも、なんとなく心配です。
そこで先に、一番偉い家来を見にやりました。
一番偉い家来は戻って来ると、こう言いました。
「それはそれはきれいな布が、出来かかっておりました」
王さまは、もう一人の家来を見にやりました。
その家来も、同じように言いました。
「今までに見たこともない美しい布が、出来かかっております」
「家来たちに見えるのなら、わしにも見えるだろう」
こう思った王さまは、やっと自分で見に行きました。
三人のサギ師は、熱心に働いているふりをしました。
サギ師たちは、何もない台の上を指さしながら言いました。
「王さま。まことに美しい色でございましょう」
「・・・?」
王さまには、何も見えません。
目をこすってみても、やっぱり見えません。
さあ、大変です。
この事が人に知れたら、王さまは前の王さまの本当の息子ではないと言われて、王さまをやめなければなりません。
それでは困りますので、王さまはわざと胸を張って言いました。
「うむ、なかなかに見事じゃ。出来上がりを楽しみにしておるぞ」
それから、三日たちました。
王さまは、今度は正直者の裁判長に、布を見てくるように言いつけました。
裁判長が仕事場に入っていくと、三人のサギ師は、またまた一生懸命働いているふりをしました。
そして、美しい色や素晴らしいもようを、しきりに説明しました。
けれども裁判長には、何にも見えません。
裁判長は青くなりました。
だって、もしも前の裁判長の本当の息子でないとすれば、裁判長という立派な役目をやめさせられてしまいますから。
そこで、王さまの前へもどってきて、
「あれは、わたくしが今までに見たなかで、一番美しい布でございます」
と、見えない布をほめました。
王さまは、おどろきました。
自分に見えない物が、ほかの人たちにはちゃんと見えるのです。
王さまは、また別の役人に布を見てくるように言いつけました。
この役人も、
「たしかに、世界でいちばん美しい布でございます。」
こうなっては、王さまもますます見えるようなふりをしていなければなりません。
「みなの者。もうすぐ世界で一番美しい布が出来上がるぞ」
とうとう、見えない布が出来上がりました。
王さまは、その不思議な布で新しい着物をつくらせました。
そしてお祭りの日に、その素晴らしい着物をきて、町じゅうをまわることにしました。
いよいよ、お祭りの日になりました。
三人のサギ師は、ありもしない着物を、王さまに着せるふりをしました。
それを見て、家来たちは口ぐちにほめました。
「よくお似合いでございます」
「色も模様も、本当にきれいでございます」
「この様に美しい着物は、今まで見たことがありません。さあ王さま、町の人たちにも見せてやってください」
王さまは、町の人たちの前に出ました。
町の人たちは、王さまを見てビックリ。
どう見てもパンツ一つしか、はいていないのです。
でも王さまの着物が見えないと言えば、お父さんの本当の子供でないと思われます。
それで、みんなだまっていました。
そのとき一人のどれいが、王さまの前に進み出て言いました。
「王さま。私は誰の子供でもかまいません。わたしの目にうつる、本当の事を言います。王さまは裸で馬に乗っていらっしゃるんです」
「だまれ、だまれ、ばか者!」
と、王さまは、カンカンに怒って怒鳴りつけました。
しかし、どれいの言葉を聞くと、
「王さまは裸だ。王さまは裸だ」
と、みんなが言いはじめました。
王さまも、ようやく三人のサギ師にだまされたことに気がつきました。
すぐに家来をやって、三人をつかまえさせようとしました。
ところがそのときにはもう、三人のサギ師は金や銀や絹をたくさん持って逃げてしまっていました。
このお話は、アンデルセンの「はだかの王さま(皇帝の新しい着物)」の元になったお話です。
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