|
|
2年生の江戸小話(えどこばなし)
うなぎのてんのぼり
江戸っ子(えどっこ)の三吉(さんきち)が、ある日、川へつりに出かけて、大きなうなぎをつり上げました。
「こいつは、大物(おおもの)だ」
三吉(さんきち)は、さっそくうなぎの口の釣(つ)り針(ばり)をぬいて、かた手でつかもうとすると、うなぎは、ぬるっと上へ逃(に)げます。
「逃げすもんか!」
いそいで、もうかたいっぽうの手でつかむと、また、上へぬるりと逃(に)げます。
あわてて、また、もういっぽうの手でつかまえると、また、ぬるりと上へ。
上へ上へと、うなぎが逃(に)げるので、三吉(さんきち)も、上へ上へと、うなぎをつかまえていると、だんだん、うなぎにつられて、空にのぼっていってしまいました。
それから、たちまち、一年という月日がたってしまいました。
あれっきり、三吉(さんきち)は帰(かえ)ってきません。
長屋(ながや)の者(もの)たちが、集(あつ)まって、
「三吉(さんきち)は、もう死(し)んじまったろう」
と、そうしきを出しているところへ、空から手紙(てがみ)が、ひらひらとおちてきました。
よんでみると、
「去年(きょねん)の今日(きょう)、うなぎといっしょに天にのぼったが、まだ、うなぎをおいかけ、上へ上へとのぼっている。三吉(さんきち)より」
と、かいてあり、すみっこのほうには、
「三吉(さんきち)は、うなぎをつかんでいて手がはなせないから、代筆(だいひつ→本人の代(か)わりに書(か)くこと)をした。天のカミナリより」
と、書(か)いてありました。
おしまい
|
|
|