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6年生の日本民話
イヌが鳥を殺した罰(ばつ)
福岡県(ふくおかけん)の民話
むかしむかし、中国から送られてきた二羽のガチョウを、役人(やくにん)たちが天皇(てんのう)のもとへとどけようとしていました。
ところが、ガチョウをあずかっていた役人のイヌが、ガチョウにかみついて二羽とも殺してしまったのです。
そのときの天皇(てんのう)はこわい人で、いくつものおそろしいうわさがありました。
天皇(てんのう)はある時、好きな狩(か)りにでかけて、たくさんの獲物(えもの)をとらえました。
それに気をよくした天皇(てんのう)は、
「狩(か)りの楽しみは、捕(と)らえた獲物(えもの)をすぐ料理して食べることだ」
と、したがえてきた者たちに言いましたが、だれも自分が料理をするといいだしませんでした。
すると天皇(てんのう)は怒(おこ)って、いきなり刀(かたな)をぬいて、近くにいた者をきり殺してしまったのです。
「今の天皇(てんのう)は、勝手がすぎる。これまでにも気にいらないというだけで、何人もの人を殺していると聞く」
そんなわけで、ガチョウを殺したイヌの飼い主の役人は、死罪(しざい→死刑(しけい))をめいじられてもしかたがないと、かくごをしました。
そして、正直に事の次第をつたえて、おわびにと、自分が屋敷(やしき)でかっている白鳥(はくちょう)十羽を、御所(ごしょ→天皇(てんのう)の住まい)におくりました。
すると天皇(てんのう)は、かわりの白鳥がお気にめしたのか、御所(ごしょ)からは何のおとがめもありませんでした。
一時はどうなることかと心を痛(いた)めて心配していた人たちも、ホッと胸(むね)をなでおろしましたが、こんな事は大変めずらしい事です。
次の年、御所(ごしょ)で飼われていた鳥が、やはりイヌにおそわれて死んでしまいました。
天皇(てんのう)は怒(おこ)って、係の役人の顔にイレズミの罰(ばつ)を命じて、役職(やくしょく)もうばってしまいました。
その役人の仲間の二人は、
「われわれが生まれ育った信濃(しなの→長野県)では鳥が多く、とればすぐ小山ほどにもなる。朝夕食べても、とても食べきれない。それなのに、たった一羽の鳥がイヌにやられたと怒(いか)り、人の顔にイレズミをなさるとは、どう考えてもおかしい。今の天皇(てんのう)は悪い天皇(てんのう)だ!」
と、話していました。
この話が天皇(てんのう)の耳に届(とど)き、天皇(てんのう)は二人に、
「それならば、すぐに鳥をとらえて小山のようにしてみよ」
と、命じました。
けれどもそれが出来ないとなると、その場で二人の役職をとりあげて、御所(ごしょ)から追いだしてしまったという事です。
※ガチョウという水鳥が初めて日本にやってきたのは、今から千五百年以上も前のことで、中国から天皇(てんのう)におくられたものでした。
おしまい
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