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        2年生の日本民話(にほんみんわ) 
          
          
         
火太郎(ひたろう)と長太郎(ながたろう) 
島根県(しまねけん)の民話(みんわ) 
       むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。 
   二人には子どもがいないので、二人とも子どもがほしくてたまりません。 
   そこで毎日(まいにち)、近所(きんじょ)の氏神(うじがみ→土地(とち)の神(かみ)さま)さまにおまいりして、 
  「氏神(うじがみ)さま。どんな子どもでもいいから、わしらに子どもをさずけてください」 
  と、おがんでいました。 
   ある日の事(こと)、おばあさんがかまどで、火をもやしていると、 
  「おばあさん、おばあさん」 
  と、どこからか、人のよぶ声(こえ)がします。 
  (はて、だれがいるのかな?) 
   おばあさんが、あたりをキョロキョロ見回(みまわ)していると、なんとかまどの火の中から、男の子がとびだしてきたのです。 
  「うひゃー! おじいさん! おじいさん!」 
   おばあさんはあわてて、おじいさんをよびました。  
  「なんじゃ、そんなにあわてて。・・・おおっ、子どもがおる! こりゃ、きっと、神(かみ)さまがさずけてくださったにちがいない」 
   おじいさんも、ビックリするやら、よろこぶやら。  
   そしてこの子どもに、火から生まれたので、火太郎)(ひたろう)という名前(なまえ)をつけました。 
   さて、おじいさんとおばあさんの子どもになった火太郎(ひたろう)は、ごはんを一杯(1ぱい)食(た)べると、一杯分(いっぱいぶん)だけ、ごはんを二杯(2はい)食(た)べると、二杯(2はい)分(ぶん)だけ、大きくなりました。 
   ある日、おじいさんが山からもどってくると、えんがわに大きな柱(はしら)が立っています。 
  (はて? こんなところに、柱(はしら)があったのかな?) 
  と、不思議(ふしぎ)に思(おも)っていたら、柱(はしら)が動(うご)いて上の方(ほう)から、 
  「おじいさん、おじいさん」 
  と、よぶ声(こえ)がするのです。 
   ビックリして上を見上げると、なんとそこには、とても大きな男の子が立っていて、  
  「わしは、長太郎(ながたろう)というもんだ。神(かみ)さまの言(い)いつけで、ここへやってきた」 
  と、言(い)ったのです。 
  「なんともありがたい。火太郎(ひたろう)に続(つづ)いて、こんな大きな子どもまでさずけてくださるなんて」 
   おじいさんもおばあさんも、またまた大喜(おおよろこ)びで、二人の子どもをいっしょうけんめいかわいがりました。 
   二人とも力が強(つよ)くて、大変(たいへん)な山仕事(やましごと)も、あっというまにかたづけてしまいます。 
   それに、悪(わる)いことがきらいで、ある日、お百姓(ひゃくしょう)さんをこまらせている侍(さむらい)がいると、すぐとんでいって、やっつけました。 
   ところが次(つぎ)の日、子どもたちのるすに、殿(との)さまのけらいがたくさんやってきて、 
  「わしらの仲間(なかま)が、ひどい目にあった。お前(まえ)のところにいる二人の子どもを出せ。いやなら、お前(まえ)をつれていく」 
  と、言(い)いました。 
   おじいさんがことわると、けらいたちはおじいさんをしばりあげて、お城(しろ)につれていきました。 
   さて、その事(こと)をおばあさんから知(し)らされた、火太郎(ひたろう)と長太郎(ながたろう)は、すぐにお城(しろ)へ行(い)って、 
  「どうか、おじいさんをかえしてください」 
  と、殿(との)さまに、たのみました。 
   すると、殿(との)さまは、 
  「よし、じじいの命(いのち)はたすけてやろう。そのかわり、お前(まえ)たちは死刑(しけい)だ」 
  と、言(い)って、長太郎(ながたろう)を、ろう屋(や)にとじ込(こ)めると、火太郎(ひたろう)を広場(ひろば)につれていきました。 
  「こいつを、火あぶりにしろ」 
   殿(との)さまの命令(めいれい)で、火太郎(ひたろう)は木にしばりつけられると、足の下にまきがつみあげられました。 
  「それっ!」 
   まきに火がついて、まっ赤な炎(ほのお)が、メラメラと火太郎(ひたろう)をつつみます。 
   でも、火の中から生まれた火太郎(ひたろう)は、ぜんぜん平気(へいき)で、ニコニコしながら殿(との)さまを見下ろしています。 
  「な、なんだ。もっと火を燃(も)やすんだ!」 
   殿(との)さまの命令(めいれい)で、まきがどんどんくべられましたが、火太郎(ひたろう)はますます、ニコニコしながら殿(との)さまを見下ろしていました。 
   そのとき、ろう屋(や)から大きな音がして、長太郎(ながたろう)がとびだしてきたのです。 
   大男の長太郎(ながたろう)には、ろう屋(や)をこわすぐらい簡単(かんたん)な事(こと)です。 
   それを見て、さすがの殿(との)さまもこわくなり、 
  「二人ともゆるす。だから、城(しろ)をこわさんでくれ」 
  と、ないてあやまったと、いう事(こと)です。 
      おしまい 
        
       
         
         
        
      
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