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6年生の日本民話
サルと槍(やり)つかい
奈良県(ならけん)の民話
むかしむかし、柳生但馬守宗厳(やぎゅうたじまのかみむなよし)という、剣術(けんじゅつ)の大先生がいました。
宗厳(むなよし)は、生まれ故郷(こきょう)の奈良県(ならけん)にある柳生(やぎゅう)の里にこもって、一心に剣術(けんじゅつ)の研究にはげんでいました。
そのころ宗厳(むなよし)は、二匹(2ひき)のサルをかっていました。
サルたちに剣術(けんじゅつ)の相手をさせて、すばやい身のこなし方などを学んでいたのです。
サルの方も、毎日のように相手をさせられているうちに、すっかり上手になり、若(わか)い弟子などではかなわないほどの刀の腕前(うでまえ)を身につけていたのです。
ある日の事、長い槍(やり)をかついだ浪人(ろうにん)がやってきて、宗厳(むなよし)の弟子になりたいと願いでました。
自分は槍(やり)の名手(めいしゅ→めいじん)だという浪人(ろうにん)に、宗厳(むなよし)は、
「それなら、まずはわしのサルどもを、その竹槍(たけやり)でついてみよ」
と、いいました。
浪人(ろうにん)は、あきれたような表情をして、
「サルを相手にせよとは、あまりの事ですが、柳生(やぎゅう)の大先生がいわれるなら、いたしかたない」
と、肩(かた)にかついできた槍(やり)を置くと、わきに立てかけてある竹槍(たけやり)を手にしました。
庭先につれてこられたサルは、剣術(けんじゅつ)の胴着(どうぎ)と面(めん)をつけてもらうと、小さな竹刀(しない)を持って浪人(ろうにん)と立ちあいました。
「では、はじめ!」
サルは浪人(ろうにん)がつきだす長い竹槍(たけやり)を、ひょいひょいと上手にかわしました。
そして竹槍(たけやり)の下をすばやくくぐると、みごとに一本、竹刀で浪人(ろうにん)のからだをうちつけたのです。
「これは不覚(ふかく)。サルになんぞ一本とられるとは、何かの間違(まちが)い。もう一つ」
宗厳(むなよし)は、もう一匹(1ぴき)のサルを立ちあわせましたが、こんども同じように浪人(ろうにん)は負けてしまったのです。
「どうだ、もう一つやってみるか?」
「・・・いえ」
宗厳(むなよし)の言葉に、浪人(ろうにん)は、はずかしそうに帰っていきました。
しかし浪人(ろうにん)は、それから本気になってきびしいけいこをつみ、一月半ほどしてから、また柳生(やぎゅう)の里にやってきました。
そしてもう一度、サルに立ちあわせてほしいと願い出たのです。
宗厳(むなよし)はしばらくだまって浪人(ろうにん)をみつめると、静かにいいました。
「そのほう、いろいろ工夫をこらしてけいこをつんできたと見える。今度はサルもかなうまい。まあいい、まずサルと見合ってみよ」
宗厳(むなよし)はサルに胴着(どうぎ)をつけさせて、浪人(ろうにん)と見合いをさせました。
両者はたがいの目をみつめ、にらみあっていましたが、浪人(ろうにん)の真剣(しんけん)な目におそれをなしたのか、サルはきゅうにはげしい鳴き声をあげると、そのまま逃(に)げだしてしまいました。
それを見て宗厳(むなよし)は、浪人(ろうにん)を新しい弟子の一人に加えることにしたという事です。
おしまい
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