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6年生の日本民話
竜(りゅう)とニワトリ
沖縄県(おきなわけん)の民話
むかしむかし、海と山にはさまれた小さな村がありました。
人びとは山の木を切ってまきをつくり、船で遠く那覇(なは)の町まで運びこんで、それを売ったお金でくらしていました。
この村には、貧乏(びんぼう)だけど名医とのうわさの高い、お医者さんがすんでいました。
ある日のタぐれ、お医者さんのところへ、金持ちの娘(むすめ)が一人でたずねてきました。
お医者さんは、一目で娘(むすめ)が何かの化け物であることを見破りましたが、だまって、その痛(いた)いとうったえるところをみてあげました。
「どれどれ。・・・これは!」
なんと化け物の耳の中で、ムカデが一匹(1ぴき)、あばれているのです。
「これは大変だ。だがその前に、あんたの正体を現しなさい!」
娘(むすめ)はコクリとうなずいたかと思うと、口から白い霧(きり)をふき出して、一匹(1ぴき)の大青竜(だいせいりゅう)になりました。
そして目に涙(なみだ)をいっぱいためて、お医者さんを見つめています。
「おお、よしよし。今に楽にしてあげよう」
お医者さんはそういいながら、竜(りゅう)の耳の中にニワトリを入れてやりました。
さあ、それから青竜(せいりゅう)の耳の中で、ムカデとニワトリのたたかいがはじまりました。
ムカデとニワトリは竜(りゅう)の耳の中で大暴れしましたが、竜(りゅう)はジッとガマンしました。
それからまもなく、竜(りゅう)の耳からニワトリがムカデをくわえて出てきました。
「よかった、よかった。これで大丈夫(だいじょうぶ)だ」
すっかり元気を取りもどした竜(りゅう)は、お医者さんに竜胆(りゅうたん→リンドウの根を乾燥(かんそう)した胃薬)をさし出して、ニワトリには大きな頭を何度も下げて、天にのぼっていったそうです。
それからあと、竜(りゅう)はどんなに腹(はら)をたてて天に黒雲を呼(よ)び、地に大雨をふらせ、海に竜巻(たつま)きを起こすことがあっても、そこにニワトリの姿(すがた)を見つけると、ニワトリにケガをさせてはいけないと、すぐにおとなしくなったという事です。
おしまい
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