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5年生の日本民話
おさかべひめ
兵庫県の民話
あまりの美しさに白鷺城(しらさぎじょう)とよばれ、国宝(こくほう)であり世界遺産(せかいいさん)でもある姫路城(ひめじじょう)に、ふるくからつたわるお話しです。
むかしむかし、このお城(しろ)の天守閣(てんしゅかく)に、幽霊(ゆうれい)がすみついているとのうわさがたちました。
そのため昼間でも、天守閣(てんしゅかく)には誰一人(だれひとり)、近づく者がありません。
ある雨の夜の事。
お城(しろ)にとまりこんで、一晩中(ひとばんじゅう)おきている役目の五人の侍(さむらい)たちが、
「幽霊(ゆうれい)の正体(しょうたい)は、何者だろう?」
と、話しておりました。
すると、一番若(わか)い侍(さむらい)が、
「わたしが、みとどけてまいります」
と、ロウソクを手に、天守閣(てんしゅかく)へのくらい階段(かいだん)をのぼっていきました。
天守閣(てんしゅかく)は、お城(しろ)のてっぺんにある部屋です。
侍(さむらい)が天守閣(てんしゅかく)にのぼりつくと、戸のすき間からボンヤリと、あかりがもれているではありませんか。
侍(さむらい)が、中の様子をうかがっていると、
「だれじゃ? そこにおるのは、だれじゃ?」
部屋の中から、声がかかりました。
侍(さむらい)が名前を名乗って、なぜ、ここに来たのかをありのままに話しました。
「では、お入りなさい」
侍(さむらい)はおそるおそる、戸をあけました。
と、そこには女が一人、机(つくえ)の前にすわっていました。
「・・・!」
侍(さむらい)は、声をあげそうになりました。
髪(かみ)の長い女の人は、十二ひとえの着物に、赤いはかまをはいています。
美しい顔立ちですが、その顔色の青白さは、生きている人間ではありません。
「よくきましたね。わたしはおさかべ姫(ひめ)。このお城(しろ)の主じゃ。お前の勇気をほめて、これをとらせましょう」
おさかべ姫(ひめ)は侍(さむらい)に、かぶとの切れはしをわたしました。
「ありがとうございます」
「しかし、ここは人の来るところではありません」
「はっ」
「では、おさがりなさい」
侍(さむらい)は無事に天守閣(てんしゅかく)をさがりましたが、背中(せなか)が冷や汗(ひやあせ)でグッショリです。
侍(さむらい)の仲間は、若(わか)い侍(さむらい)が無事に戻(もど)ってきたので、
「どうだ? 正体を見届(みとど)けたか?」
「どんな幽霊(ゆうれい)だった?」
と、口ぐちにたずねました。
若(わか)い侍(さむらい)は、かぶとのきれはしを見せると、全てを仲間に話しました。
そしてその話は、さっそく お殿(との)さまの耳に入りました。
次の朝、お殿(との)さまは若(わか)い侍(さむらい)をよんで、
「おさかべ姫(ひめ)にもらったという、かぶとのきれはしをみせてくれ」
と、いいました。
侍(さむらい)が、かぶとのきれはしをさしだすと、
「ふむ。見覚えのあるきれはしじゃ。調べてみよう」
お殿(との)さまはお城(しろ)に昔から伝わっている、よろいかぶとや刀をおさめた部屋を調べました。
「やはりこれだ、これにまちがいない」
かぶとの一つのうしろのしころ(→よろいかぶとの左右から後方にたれて、あごを守る鉄製(てっせい)の物)が、ひきちぎられています。
きれはしをあててみると、ピッタリとあいました。
「かぶとのしころをひきちぎるとは、おそろしい力の持ち主。おさかべ姫(ひめ)のたたりをうけないよう、天守閣(てんしゅかく)のわきに明神(みょうじん)さまのほこらをまつろう」
このときから、姫路城(ひめじじょう)ではお殿(との)さまがかわっても、おさかべ姫(ひめ)をおそれて、ほこらを大切にしつづけたという事です。
おしまい
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