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3年生の世界昔話(せかいむかしばなし)
人魚姫(にんぎょひめ)
アンデルセン童話(どうわ) → アンデルセン童話(どうわ)のせつめい
人魚姫(にんぎょひめ)のぬりえ
♪音声配信(html5) |
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朗読者:Ak Voice「ささやき☆ご奉仕〜個室居酒屋でデート」 |
深(ふか)い深(ふか)い海の底(そこ)に、サンゴの壁(かべ)と、コハクのまどのお城(しろ)があります。
そのお城(しろ)は、人魚(にんぎょ)の王さまのお城(しろ)です。
王さまには六人の姫(ひめ)がいて、その中でも、とりわけいちばん末(すえ)の姫(ひめ)はきれいでした。
肌(はだ)はバラの花びらのようにすきとおり、目は深(ふか)い海のように、青くすんでいます。
人魚たちの世界(せかい)では、十五歳(15さい)になると、海の上の人間の世界(せかい)を見にいくことを許(ゆる)されていました。
末っ子(すえっこ)の姫(ひめ)は、お姉さんたちが見てきた人間の世界(せかい)のようすを、いつも胸(むね)ときめかして聞いています。
「ああ、はやく十五歳(15さい)になって、人間の世界(せかい)を見てみたいわ」
そうするうちに、いちばん末 すえ)の姫(ひめ)も、ついに十五歳(15さい)をむかえ、はれて海の上に出る日がきました。
喜(よろこ)んだ姫(ひめ)が、上へ上へとのぼっていくと、最初(さいしょ)に目に入ったのは、大きな船でした。
船の中はパーティーをしていて、にぎやかな音楽が流(なが)れるなか、美(うつく)しく着(き)かざった人たちがダンスをしています。
その中に、ひときわ目をひく美(うつく)しい少年がいました。
それは、パーティーの主役(しゅやく)の王子です。
そのパーティーは、王子の誕生(たんじょう)パーティーだったのです。
「すてきな、王子さま」
人魚姫(にんぎょひめ)は夜になっても、波(なみ)の間から、うっとりと王子のようすを見つめていました。
と、突然(とつぜん)、海の景色(けしき)が変(か)わりました。
稲光(いなびかり)が走ると、風がふき、波(なみ)がうねりはじめたのです。
水夫(すいふ)たちがあわてて帆(ほ)をたたみますが、あらしはますます激(はげ)しくなると、船は見るまに横倒(よこだお)しになってしまいました。
人びとが、海にほうり出されます。
「大変(たいへん)! 王子さまー!」
人魚姫(にんぎょひめ)は、大急(おおいそ)ぎで王子の姿(すがた)をさがしだすと、ぐったりしている王子のからだをだいて、浜辺(はまべ)へと運(はこ)びました。
「王子さま、しっかりして。王子さま」
人魚姫(にんぎょひめ)は、王子さまをけんめいにかんびょうしました。
気がつくと、朝になっていました。
そこへ、若(わか)い娘(むすめ)が走ってきます。
「あっ、いけない」
人魚姫(にんぎょひめ)はビックリして、海に身(み)をかくしました。
すると、娘(むすめ)は王子に気がついて、あわてて人をよびます。
王子はそのとき、息(いき)をふきかえしました。
「あ、ありがとう。あなたがわたしを、助(たす)けてくれたんですね」
王子はそして目の前にいる娘(むすめ)を、命(いのち)の恩人(おんじん)とかんちがいしてしまいました。
人魚姫(にんぎょひめ)は、ションボリして城(しろ)に帰ってきましたが、どうしても王子のことが忘(わす)れられません。
「人間になれば、王子さまに、また会えるかもしれない」
そこで、魔女(まじょ)のところへ出かけると、人間の女にしてくれるようたのみました。
魔女(まじょ)は願(ねが)いを聞くと、こう答えました。
「わたしの力を持(も)ってすれば、人魚のしっぽを人間のような足にかえることはできるよ。でも、そのかわりに、足はあるくたびに、ナイフをふむようにいたむよ。それと、もしおまえが王子と結婚(けっこん)できなかったら、 二度(2ど)と人魚には戻(もど)れない。いや、それどころか、心臓(しんぞう)が破(やぶ)れて、海のあわになっちまうんだ。それでもいいね」
「いいわ。王子さまといっしょにいられるのなら」
「それから、ねがいをかなえるほうびに、おまえの声をもらうよ。おまえの声は、海の世界(せかい)で、いちばんうつくしいと評判(ひょうばん)だからね」
「いいわ」
そして人魚姫(にんぎょひめ)は、口のきけない身(み)となって、人間の世界(せかい)へ戻(もど)り、王子の城(しろ)をたずねました。
王子は人魚姫(にんぎょひめ)をひと目見て気に入り、妹のようにかわいがりました。
しかし王子の心は、命(いのち)の恩人(おんじん)と思いこんでいる、あの浜辺(はまべ)で会った娘(むすめ)にうばわれていたのです。
やがて王子と娘(むすめ)は、結婚式(けっこんしき)をあげることになりました。
ふたりは船に乗(の)りこむと、新婚旅行(しんこんりょこう)に向(む)かいます。
王子と結婚(けっこん)できなかった姫(ひめ)は、つぎの日の朝、海のあわになってしまうのです。
しかし、人魚姫(にんぎょひめ)はどうすることもできません。
ただ、船の手すりに、もたれているばかりでした。
そのとき、波(なみ)の上にお姉さんたちが、姿(すがた)を見せました。
「魔女(まじょ)から、あなたのためにナイフをもらってきたわ。これで王子の心臓(しんぞう)をさしなさい。そしてその血(ち)を足にぬるのです。そうすれば、あなたは人魚に戻(もど)れるのよ」
人魚姫(にんぎょひめ)はナイフを受け取(うけと)ると、王子の眠(ねむ)る寝室(しんしつ)へと入っていきました。
「王子さま、さようなら。わたしは、人魚にもどります」
人魚姫(にんぎょひめ)は、王子のひたいにお別(わか)れのキスをすると、ナイフをひといきに突き立(つきた)てようとしました。
「・・・・・・」
でも、人魚姫(にんぎょひめ)には、愛(あい)する王子を殺(ころ)すことができません。
人魚姫(にんぎょひめ)は、ナイフを投げ捨(なげす)てると、海に身(み)を投(な)げました。
波(なみ)にもまれながら人魚姫(にんぎょひめ)は、だんだんと自分のからだがとけて、あわになっていくのがわかりました。
そのとき、海からのぼったお日さまの光の中を、すきとおった美(うつく)しいものが、漂(ただよ)っているのが見えました。
人魚姫(にんぎょひめ)も、自分が空気のように軽(かる)くなり、空中にのぼっていくのに気づきました。
「わたしはどこにいくのかしら」
すると、すきとおった声が答えます。
「ようこそ、空気の精(せい)の世界(せかい)へ。あなたは空気の精(せい)になって、世界中(せかいじゅう)の恋人(こいびと)たちを見守(みまも)るのですよ」
人魚姫(にんぎょひめ)は自分の目から、涙(なみだ)が一しずく落(お)ちるのを感(かん)じながら、風ともに雲の上へとのぼっていきました。
おしまい
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