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3月8日の日本の昔話
エビの腰はなぜまがったか
三重県の民話 → 三重県の情報
日本語&客家語
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読
【必ず眠れる日本の昔話集5】睡眠導入・作業用 元NHKフリーアナ(大人が眠れる読み聞かせ)
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
制作: フリーアナウンサーまい【元TBS番組キャスター】
むかしは、誰もが一生に一度は、お伊勢(いせ)参りをしたいと考えていました。
それは、人間も動物も同じ事です。
ある日の事、この世で自分が一番大きいと思っているヘビが、お伊勢参りに行く事になりました。
ヘビは大きな体をズリズリ引きずりながら、太陽がギラギラと照りつける道をはって行きます。
「それにしても、何て暑いんじゃ」
そこへ、何とも涼しげ日陰が、目の前に広がりました。
「こりゃ、ありがたい。まるで生き返った様じゃあ」
日陰で休んで元気になったヘビは、またズリズリと進みます。
すると突然、ものすごい風が吹いたかと思うと、ヘビの大きな体は風に吹き飛ばされてしまいました。
何とその風は、大きな大きなワシの羽ばたきだったのです。
さっきの涼しい日陰は、ワシの影だったのです。
(このわしが吹き飛ばされる何て、何というワシだ)
あまりの事にヘビが呆然としていると、その大ワシが言いました。
「驚かせて悪かったな。何しろ、わしくらい大きな者は、この世におらんからな。自慢じゃないが、わしが本気で羽ばたけば、下は嵐になるからな」
「・・・・・・」
「あはははは。そんなに驚かんでもよい。別にお前の様に小さい者を、いじめたりはせんから。・・・さて。それでは、お伊勢参りに行くとするか。ほれ、そこのチビ助、何かに捕まっていないと吹き飛ばされるぞ」
ワシが大きく羽ばたくと、本当に下では嵐がおこりました。
そして三度ほど羽ばたくと、そこはもう海の上でした。
それでもお伊勢さまは遠くて、なかなか着きません。
日の暮れる頃になると、さすがのワシも疲れてきました。
「どこかに、休むところはないものか」
ワシが辺りを見回すと、少し先に何やら棒の様な物が海から突き出ています。
「これはちょうどよい」
ワシはそれに止まって、一晩ゆっくり羽を休めました。
次の朝、ワシはまたお伊勢さまを目指して飛び立ちました。
それから一日中、ワシは飛び続けましたが、まだお伊勢さまには着きません。
「ふう、さすがにお伊勢さまは、遠いところじゃ。そろそろ休みたいが、どこかに良い場所は・・・。おおっ、あったあった」
ちょうど昨晩に休んだのと同じ様な棒が、また海の中から突き出ていました。
ワシはその棒に止まると、何気なしにその棒の上を散歩しました。
すると突然、
「誰だ! わしのひげの上で歩き回っているのは? くすぐったくてたまらんから、早く下りろ」
と、言う声とともに、棒が波を割って持ち上がりました。
「ヒェーー!」
棒と一緒に上に持ち上げられたワシは、下を見てビックリです。
何とワシが乗っていた棒とは、大きな大きな伊勢(いせ)エビのひげの先っぽだったのです。
ワシは一日中飛んで、伊勢エビの片方のひげからもう片方のひげへと移動しただけでした。
「ウヒャーー! 海には、こんな大きな奴がいたのか!」
「こら、驚くのはかまわんが、いつまでひげの上に乗っておる。そんなところにおられては、くすぐったくて、くしゃみが。・・・へ、へ、へっくしょーーん!」
エビがくしゃみをすると、その勢いでワシは空の彼方へ吹き飛んでしまいました。
さて今度は、伊勢エビがお伊勢参りに出かけました。
ところがそんな伊勢エビでも、お伊勢さまにはなかなか着きません。
やがて夜になったので、疲れた伊勢エビは大きな山のまん中に、体を休めるのにちょうどいい穴を見つけてその中に潜り込みました。
そして一晩ぐっすりと眠った伊勢エビが、
「ああー、よく寝たな。さてそろそろ、お伊勢さまに出発しようか」
と、穴から出ようとした時、その穴から水が勢いよく吹き出して、伊勢エビは空高くまで吹き飛ばされてしまいました。
何と伊勢エビが休んでいた穴は、大きな大きなクジラの潮吹きの穴だったのです。
そしてクジラに吹き飛ばされた伊勢エビは、はるか彼方まで飛んで行って岩の上に落ちたのですが、その時に腰をひどく打ってしまい、腰が曲がってしまいました。
その時からです、エビの腰が今の様に曲がってしまったのは。
おしまい
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