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3月11日の日本の昔話
ネコに教わった剣の道
從貓仔學个劍道
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、とても腕の立つ侍がいました。
頭擺頭擺,有一個武功高強个武土。
侍は剣の他に囲碁(いご)が大好きで、毎晩の様に仲間を集めては夜遅くまで碁(ご)をうっています。
武士除忒劍以外還好行圍碁,逐暗晡摎同事共下行碁行到三更半夜。
ある晩の事、侍が仲間と碁をうっていると、急に行灯(あんどん)の明かりが消えました。
有一暗晡武土摎同事行碁个時節,忽然間油盞火烏忒。
侍が不思議に思って油皿を調べてみると、油がすっかりなくなっているのです。
武士想毋解斯去查看油盎仔,盎肚个油燥燥無半滴。
「はて。朝まで明かりが持つ様にと、油をたっぷり入れたはずだが」
「奇怪,油加著淰淰點到韶朝晨著哩。」
侍は仕方なく新しい油をついで碁をうち始めましたが、でもしばらくするとまた、明かりが消えてしまったのです。
武土無法度再過加兜油繼續行碁子。過無幾久灯盞火又烏忒。
「これはあやしい。何者かが油をなめに来るに違いない」
「這還奇怪哦!油定著係分麼个東西食忒。」
そこで侍は明かりをつけたまま、部屋の外から中の様子を見ていました。
所以武士點著火來,房間內外詳細看一遍。
するとどこからかイタチほどの(→イタチの体長は、約三十センチ)大きさのネズミが現れて、行灯に入っている油(→ネズミは油が好物で、油で出来た石けんなども食べます)をなめ始めたではありませんか。
看著一條毋知哪位走來,像逩地鼠(身長、約三十公分)恁大个老鼠,走落油燈去食(老鼠盡好食油,連油做个茶箍佢乜食)燈盞肚个油。
「さては、ネズミの仕業であったか」
「老鼠搣个嘎?」
怒った仲間たちが中へ飛び込もうとするのを押さえて、侍が言いました。
當閼个同事想愛走落裡肚,分武士擋忒講:
「待て、あれほどの古ネズミともなれば、後でどんな仕返しをされるか分からないぞ。ここはわしらが手を出すより、ネコを連れて来た方が良い」
「等下,該恁老个老鼠,下二擺毋知會有麼个報應哦,最好尋係貓仔來比俚自家出手較好。」
次の日、侍は隣の家からネコを借りてきました。
第二日,武士同隣舍借條貓仔來。
そして夜になると行灯の皿にたっぷりと油を入れて、ネズミの現れるのを待ちます。
所以暗晡頭摎灯盞油加淰淰,等老鼠出現,
やがて天井から昨日のネズミが下りて来て、行灯のそばへ近づきました。
無幾久昨晡日該條老鼠在天篷頂跳下來,行兼去油盞。
「それっ! 頼むぞ!」
「該條!拜託你!」
侍がネコを放すと、ネコは部屋に飛び込んでネズミに飛びかかりました。
武士放開貓仔,貓仔舂落間肚,追老鼠追著捩捩轉。
ところがネズミは、ネコの攻撃をなんなくかわしてしまいます。
毋過老鼠順順利利避開貓仔。
ネコはネズミをにらみつけると、もう一度ネズミに飛びかかりました。
貓仔看準老鼠再過跳起來撳過去。
けれど次の瞬間、何とネズミがネコよりも先に、相手ののど笛を噛み切ったのです。
毋過該量時老鼠比貓仔較遽,先咬著對手个喉嗹頭。
「フギャーーーッ!」
「ngiau....」
ネコは鋭い叫びをあげて、そのまま死んでしまいました。
貓仔大聲噦一聲,就死忒咧。
「奴は化けネズミだ。これでは並のネコでは、とうてい歯が立つまい」
「這條係老鼠精,普通个貓仔根本毋係佢个對手。」
次の日、侍は近所でもかしこいと評判のネコを借りて来ました。
第二日,武士摎鄰舍借一條較慶个貓仔。
今度のネコは美しく立派で、その落ち着いた態度はネコとは思えないくらいです。
這擺个貓仔當派頭、定貼,無像一條貓仔。
ネコは自分がここへ連れて来られた理由が分かるらしく、夜になると自分から部屋のすみに隠れてネズミが現れるのを待ちました。
貓仔可能知人渡佢來个目的,天烏以後自家斯走去間肚囥起來等老鼠出來。
そしてネズミが現れてもすぐには飛び出さず、
就算老鼠出來咧,佢無黏時躍出去。
「ニャオーン」
と、小さく鳴きました。
佢細細聲「ngiau」聲,
その声を聞いてネズミは足を止めると、ネコの方に向きなおって身構えます。
老鼠聽著該貓仔聲煞煞停下來,轉身向貓仔該片析。
ネコも静かに、ネズミをにらんだままです。
貓仔乜趜恬恬,緊看等老鼠。
二匹がにらみあったまま、長い時間が過ぎました。
兩儕相看一陣仔。
「一体、どうなるのか」
「到底變仰般形呢?」
侍と家の者は、かたずをのんで見守りました。
武士摎屋下人大氣都毋敢敨,在該掌等。
やがて我慢が出来なくなったネズミがネコに飛びかかりましたが、ネコは相手をネコパンチで叩き落とすと、一瞬の隙を突いて相手ののど笛に噛みつきました。
無幾久,老鼠等到當毋著,就跳起來舂向貓仔該去,貓仔用貓仔拳摎老鼠打下來,黏時斯咬老鼠个喉嗹頦。
「チューーーゥ!」
「啾...」
ネズミはそれっきり、ピクリとも動きません。
老鼠一下仔就死忒毋會停動咧。
「見事な技よ。あのネコには、剣の心得があるようじゃ」
「技術還好哪!該條貓仔對劍道拗蠻仔有心得!」
侍はすっかり感心して、家の者に説明しました。
武士非常欽佩就摎屋下人講:
「勝負とは、常に駆け引きだ。
「輸贏常常看戰略。
相手がどんなに弱い相手でも、こちらから仕掛けるのは難しい。
無論對手幾弱,先出手儕愛贏較難。
相手が我慢出来ずに襲いかかってくる瞬間にこそ、勝機がある。
對手忍毋核个時節來攻擊佢,較有贏面。
なぜなら、あせった者は力を半分も出し切れないからだ。
仰會恁樣呢?主要係因為氣傍氣鼓个人出力出無一半。
これは武芸者(ぶげいしゃ)たる者が、常に考えなくてはいけない事である
這道理練武功个人愛時時記得。
あのネコには、その事を改めて教えられた」
該條貓仔,教𠊎俚這種道理。」
ネコに剣の道を教わった侍は、それからネコを思い出しては修行をつみ、やがて誰にも負けない剣道の名人になったそうです。
從貓仔學劍道个武士,自該擺以後,時時想著貓仔,用功修練,無幾久練到變天下無敵个武士。
おしまい
煞咧
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