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福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 5月の日本昔話 > 雷さまとクワの木
5月2日の日本の昔話
雷さまとクワの木
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読
大人も眠れる睡眠朗読】日本昔話集10 優しいとんち話 元NHKフリーアナの絵本読み聞かせ
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投稿者 癒しのココロちゃんねる 【睡眠用朗読】
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制作 : 妖精が導くおやすみ朗読チャンネル
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制作: フリーアナウンサーまい【元TBS番組キャスター】
むかしむかし、お母さんとニ人暮らしの男の子がいました。
ある日、お母さんが男の子に言いました。
「畑にナスを植えるから、町へ行ってナスのなえを買って来て」
「はーい」
男の子は町へ行くと、一番値段の高いなえを一本だけ買って来ました。
それを見て、お母さんはがっかりです。
「お前は何で、もっと安いなえをいっぱい買って来なかったの? 一本しかなかったら、育てても大した数にならないのに」
「うーん、そうだったのか」
でも男の子は、心の中でこう思いました。
(一本きりでも、この値段の高いなえなら、きっとたくさん実がつくはず)
確かにその通りで、ナスのなえは植えたとたんにグングンと伸びていったのです。
「どうだい。やっぱり値段の高いなえは違うだろう? わあ! 話している間にも、雲を突き抜けたぞ」
ナスのくきは、雲を突き抜けても成長をやめません。
やがてナスは薄紫の花を咲かせると、それはそれは見事な実をいっぱい実らせたのです。
次の日の朝、男の子は家からはしごを持ち出しました。
それを見つけてお母さんが、あわてて言います。
「こら、どこへ行くつもりだ? ナスを登るつもりなら、危ないからやめなさい」
「危なくないさ。じゃあ、ちょっくら行ってくる」
「だめ! やめなさい! 落ちたらどうするの? お父さんも、屋根から落ちて死んだのだから」
「大丈夫、大丈夫」
男の子はそのまま、ナスの木を登っていきました。
さて、男の子がナスの木を登って雲の上に出ると、そこには立派なお屋敷がありました。
男の子がお屋敷の扉を開けてみると、中にはナスを持ったおじいさんがいました。
「あっ! それは、おらのナスじゃないか?!」
男の子が叫ぶと、おじいさんが言いました。
「ほう、このナスは、お前さんが植えたナスだったか。おかげで毎日、おいしくいただいていますよ」
おじいさんは男の子に礼を言うと、男の子をお屋敷の中に連れて行きました。
中には二人のきれいな娘がいて、男の子を一晩中、歌や踊りでもてなしてくれました。
次の朝、男の子が目を覚ますと誰もいません。
「あれ? みんな、どこへ行ったのかな?」
男の子がつぶやくと、ふすまの向こうからおじいさんの声がしました。
「起きたか。わしらは仕事に行ってくるから、留守番をしといてくれ」
「仕事? 雲の上にも、仕事があるのか?」
「もちろん。これで結構、忙しいのさ」
「なら手伝うから、おいらも連れて行ってくれ」
男のはそう言いながら、ふすまを開けました。
そしておじいさんの姿を見てびっくり。
「うわっ! 鬼だ、鬼だぁ!」
何とおじいさんは、頭に二本の角が生えた鬼だったのです。
その横には、二人の鬼の娘も立っています。
怖くなった男の子は、真っ青な顔で言いました。
「おいらの肉はまずいぞ。だから食わないでくれ!」
それを聞いた鬼のおじいさんは、大笑いです。
「ワッハハハハ。わしたちは、人間を食べる悪い鬼でねえ。わしらは雨を降らす鬼なんじゃ。ほれ、こんな具合にな」
そう言って鬼がたいこを鳴らすと、娘たちがひしゃくで雨を降らせました。
「わかった、おじいさんは、かみなりさまだったのか」
「そうじゃ、かみなりさまだ。だからこれから、雨を降らせに行くんじゃ」
それを聞いて安心した男の子は、鬼に言いました。
「それなら、おいらも一緒に行く」
「よし、それならこの雲に乗りなさい」
鬼は足下の雲を大きくちぎると、二人の娘と一緒に男の子を乗せました。
みんなを乗せた雲はすーっと動くと、今から雨を降らせる場所まで移動しました。
雲の端から下をのぞいて、男の子が言いました。
「あっ、ここはおいらの村だ!」
鬼は立ち上がって、たいこを鳴らしました。
娘の一人が、かがみで光を地上へてらしました。
このたいこの音とかがみの光が地上へ届いて、いなびかりとなりました。
もう一人の娘がひしゃくの水をまくと、それが地上へ届いて大雨となりました。
ちょうどその日は、村の夏祭りでした。
突然のいなびかりと大雨に、集まっていた村人たちはびっくりです。
「うわあ! 夕立だあっ」
それを雲の上から見ていた男の子は、逃げる村人たちの様子が楽しくてたまりません。
「ねえ、娘さん、おいらにも、雨のひしゃくを貸してくれ」
男の子はひしゃくを借りると、面白がって雲の上から雨を降らせました。
おかげで村は、滝の様な大雨です。
「それっ、それっ。逃げろ逃げろ、早く逃げないと、もっと降らせるぞ」
男の子は調子に乗って、何度も何度もひしゃくの水をまきました。
そしてその時、男の子は足を滑らせて、雲の上から落ちてしまったのです。
「うわっ、助けてくれ! まだ死にたくないようー!」
男の子は雨の中を落ちていき、下にあったクワ畑の中へ飛び込みました。
ドッシーーン!
しかし何と、男の子は運良くクワの木に引っかかって、命だけは助かったのです。
これを見て、かみなりさまが言いました。
「ああ、せっかく、わしの後をつがせようと思ったのに。地面に落ちてしまっては仕方がない」
でも、もっと残念がっていたのは、二人の娘たちでした。
二人とも、男の子のお嫁さんになりたいと思っていたからです。
それからというもの、クワの木のそばには、決してかみなりは落ちないと言われています。
なぜかと言うと、男の子を助けてくれたクワの木へ、かみなりさまが感謝しているからです。
だから今でも、クワの枝を家の軒下へぶら下げて、かみなりよけにしている家があるそうです。
おしまい
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