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5月12日の日本の昔話
まだわからん
還吂知
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、何日も何日も日照りの続いた年がありました。
頭擺頭擺,有一年,歸年天旱日頭當𤊶。
「せっかく蕎麦(そば)をまいたばかりなのに、このままでは蕎麦が全滅してしまうぞ」
「千辛萬苦賭堵正委好蕎麥,照恁樣落去,蕎麥會連種斯會末忒。」
お百姓はそう言いましたが、何日かたって孫が畑へ行ってみると、少しも雨が降っていないのに蕎麦が青々と生えていたのです。
農夫恁樣講啊忒,經過幾日厥孫仔行去看,發現根本無落半滴水,蕎麥生到青里里。
「じいちゃん!じいちゃん!蕎麦が生えているぞ!」
「阿公!阿公!蕎麥有生哦!」
それを聞いたお百姓も、大喜びです。
農夫聽著歡喜壢天。
「そうか、そうか。蕎麦は少々の日照りでも生えると言うが、今年の様なひどい日照り続きでも生えてきたか。
「有影無?有影無?蕎麥聽講毋使幾多日照斯做得生,像今年天旱、日頭當𤊶蕎麥也會生?
だが、蕎麦の花が咲いて、蕎麦の実を実らせるまでは安心は出来んぞ」
但係,蕎麥開花、打子、到熟為止𠊎還做毋得安心。」
するとそれから何日かたって孫が畑へ行ったら、蕎麦が大きくなって花を咲かせていたのです。
經過幾日厥孫仔行去園看,發現蕎麥變大又開花了。
「じいちゃん!じいちゃん!畑一面に蕎麦の花がまっ白に咲いているぞ。これで蕎麦が食えるな」
「阿公!阿公!蕎麥花開到滿園白白哦。你做得用該兜蕎麥做蕎麥麵來食。」
「いいや、まだまだ。ちゃんと実るまではわからんて」
「毋係,還吂得時。係毋係會打子還吂知。」
それからまた何日かたって、再び畑へ行った孫が言いました。
幾日過後,再過去園看个孫仔講:
「じいちゃん!じいちゃん!蕎麦に、まっ黒い三角の実がいっぱい実っているぞ。これで間違いなしに、蕎麦は食えるな」
「阿公!阿公!蕎麥烏色三角形个子打到淰淰,這無毋著,有蕎麥好食了。」
しかしお百姓は、首を横に振って、
但係,農民還係搖搖頭,講︰
「いいや、物事は最後の最後までわからんぞ」
と、言うので、孫はお百姓をせかして言いました。
「毋著,萬事無到最尾都毋知。」
所以,孫仔催農民,講:
「それじゃあ、今から蕎麦刈りをしよう」
「俚這下開始割蕎麥!」
そこで二人は蕎麦を刈って、刈った蕎麦を干して、それから家へ持って帰って叩いて蕎麦の実を取り出しました。
佢兩儕收割蕎麥,摎割下來个蕎麥曬燥,過後摎帶轉來个蕎麥攪下來。
「じいちゃん!じいちゃん!これでもう蕎麦が食えるな」
「阿公!阿公!這下有蕎麥好食哪。」
孫がそう言いましたが、お百姓はやはり首を横に振って、
孫子係恁樣講,但係農民還係搖搖頭,
「いいや、まだわからんぞ」と、言うのです。
講:「毋係,還吂知斯。」
そこで孫は蕎麦を臼(うす)にかけて粉をひいて、その粉に少しずつ水を入れてこねると板状にして包丁で細長く切りました。
過後,孫仔摎蕎麥放落舂臼,舂做粉,加兜水,亼做一大垤,用菜刀切做細細一條一條。
そして熱々のお湯で蒸すと、いよいよ蕎麦の完成です。
用滾水燙過就係蕎麥麵囉。
すると孫が、お百姓にニンマリと笑って、
過後,孫仔盡滿意對農夫笑,講:
「じいちゃん!じいちゃん!これでいよいよ蕎麦が食えるな。なんぼ、じいちゃんでも、ここ
までくれば、『いいや、まだわからんぞ』とは、言わんだろう」
と、言いました。
「阿公!阿公!𠊎總算做得食蕎麥麵了。到這恁樣,阿公還係愛講:『毋係,還吂知。』」
ところがお百姓は、
毋過農民講:
「いいや、まだわからんぞ。口に入るまではな」
と、言うのです。
「毋係,還吂知哦。愛落嘴正算。」
すると孫は、ケラケラと笑って、
孫仔哈哈大笑講:
「いくら何でも、そこまで心配する事は」
「較講你乜還在該愁慮。」
と、その蕎麦をそばつゆにもつけずに、口の中にかきこもうとしましたが、
蕎麥麵無加湯斯大口大口塞,
「あっ!」
「啊!」
と、孫はうっかり手を滑らせて、蕎麦をざるごと目の前の囲炉裏の灰にぶちまけてしまったのです。
孫子一下無細義,蕎麥麵嗄溜走,捨到面前个地爐肚肚。
するとお百姓は、
過後,農民緊笑緊講:
「それ見ろ、だからわしは、物事は最後の最後までわからんと言っただろう」
「你看,所以𠊎逐擺講,事情仰般愛到最尾正會知。」
と、笑いながら言って、はんべそをかく孫に自分の分の蕎麦を食べさせてやったと言うことです。
摎佢自家該碗蕎麥麵分厥孫仔食。
おしまい
煞咧
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