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7月17日の日本の昔話
千両箱の昼寝
千兩箱在該睡當晝
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、京の都に、とても大金持ちな長者(ちょうじゃ)がいました。
頭擺頭擺,京都有一個非常發个有錢人。
この長者は子どもの時に小さな村を飛び出して、京の都にやって来たのです。
這個有錢人在細細个時節斯對莊下走出去,來到京都。
そして食う物もろくに食わず、夢中で貯めたお金を人に貸して、たくさんの利息(りそく→お金を借りた時に、借りたお金よりも多くのお金を返します。その多い分のお金を利息といいます)を取りました。
佢毋盼得食東西,拚命摎伸著个錢借人賺當多利息。
こうして男は銀八千貫という大金持ちになり、金持ちの多い京の都でも一流の長者となったのです。
因為恁樣,佢變成有銀仔八千貫个大有錢人,在當多有錢人个京都乜算一等有錢个人。
さてこの長者、京の都にやって来てから、ただの一度も故郷の人間を京ヘ招いた事がありません。
有錢人自從來到京都以後,從來毋識邀請故鄉人來京都。
京へ招くお金が、もったいないからです。
因為邀請人來京都个錢係一種浪費。
ところがどういう風の吹き回しか、今年の祇園(ぎおん)の祭りには一人でも多く来て欲しいと言って、里の親類一同を京へ招いたのです。
毋過,毋知起麼个風,今年祇園祭(八坂神社廟會),講麼个人越多越好,所以邀請故鄉个親戚來京都。
招かれた者たちは、
分佢邀請著个人非常歡喜,講:
「有名な、祇園祭りがおがめるわい」
「做得去見識見識有名个祇園祭。」
「泊まりがけの京見物じゃ」
と、大喜びです。
「附帶歇宿个京都遊覽。」
長者と一番仲が良かったお兄さんも、
感情最好个阿哥也盡沙鼻,講:
「わしの弟は、京でも名高い長者さまじゃ。出されるごちそうも、きっと見事な物に違いない」
と、とても自慢していました。
「吾老弟係京都出名个有錢人。筵席定著乜當豐沛。」
さて、親類一同が京までやって来ると、長者は丁寧にみんなを出迎えて言いました。
親戚來到京都,有錢人熱心出來歡迎所有个人。
「みなさま、遠い所をようおいでくだされた。
「各位親戚,歡迎大家對恁遠來到這位。
今日は、六月六日。
今晡日係六月初六。
明日から七日間、京は祇園さまのお祭りでございます。
韶早開始七日間,係京都祇園祭。
お祭りの前祝いに、お膳(ぜん)の用意が出来ておりますので、どうぞお席についてくだされ」
在慶祝活動之前,𠊎準備好桌席,請大家入席。」
(おおっ、さっそくの京料理じゃ)
(唉哦,黏時就係京都美食。)
みんなは胸をわくわくさせて案内された膳につきましたが、豪華な京料理を期待していたのに出されたのは、汁といっても、なっぱの薄い汁。
大家心肝哱哱跳,坐在準備好桌席前,毋過摎大家想望个豪華京都美食爭差恁多,斯出一碗鮮鮮个菜湯。
ご飯はと言えば、精米(せいまい→米の表面を削り、白米にすること)の手間をおしんだ黒い玄米。
若講到飯,斯用吂精(精米→穀个殼除忒變糙米,糙米个表面礱過、變白米)个糙米煮个。
祝い膳だというのに魚もつかず、ただ申し訳程度にウリのなますがちょっぴり。
雖然講係慶祝桌席,也無半尾魚仔。一息仔醃生瓜仔意思意思。
しかも酒は酒屋から買ってきた酒ではなくて、お酢のような味の下手な手作りの酒がたったの一杯。
連酒乜毋係在店仔買个,還係一杯像酸醋樣恁差个私焗酒。
こんなみじめな祝い膳は、田舎でさえ見た事がありません。
這恁寒酸个慶祝筵,在莊下乜毋識看著。
(なんじゃ?これが京料理か?)
(麼个啊?這係京都美食?)
みんなはあきれて口が聞けず、ただ顔を見合わせるばかりです。
逐個人都戇忒嘴擘擘講毋出話,你看𠊎𠊎看你。
みんなを代表して、長者のお兄さんが尋ねました。
有錢人个阿哥代表大家問,講:
「なあ、弟よ。これが祇園さまの祝い膳か?こう言っては何だが、いくら何でもお粗末すぎるのではないのか?」
「噯,老弟啊。這係祇園祭慶祝桌席無?這仰般講,係毋係會昶寒酸無?」
すると長者は悲しそうに下を向いて、ため息交じりに言いました。
過後有錢人像當衰過樣頭那犁下去,敨下大氣討嘆,講:
「まことに、まことに、その通りです。
「確實係,確實係,你講个完全正確。
と言うのも、今年ほど不運な年はなく、ここは何とか運治しをせねばならんと思い、こうしてみんなを呼んだというわけです」
𠊎个意思係,今年運較毋好,𠊎認為定著愛改運,所以正會邀請大家。」
そう言われて、兄はびっくり。
分佢恁樣講落去,阿哥嗄著驚。
「なに?今年は、そんなに運が悪いのか。・・・やれやれ、それは心配な事だ。しかし一体、どの様に悪いのじゃ?」
「麼个?今年,運恁毋好嘎?...好咧好咧,這係盡煩惱个事。到底有幾慘?」
「はい、お話しをするよりも、運の悪い証拠を見ていただきたい。さあさあ、みなさんこちらヘ」
「好,百聞不如一見,來看一下運氣毋好个證據,過來這片。」
長者は先に立って、一同を土蔵(どぞう→むかしの倉庫)の前に案内しました。
有錢人先企起來,摎佢兜渡到倉庫頭前。
そして、大きな重い土蔵の扉を開けて言いました。
打開又大又重个倉庫門,講:
「さあ、中を見てくだされ!」
「大家來看一下裡肚!」
一同が見てみると、中には千両箱が山の様に積み重ねてあります。
大家一看嗄著驚,裡肚个千兩箱堆山塞海。
「これはすごい!千両箱がいくつあるか、数えきれんぞ!」
「還好哪!有幾多隻千兩箱?算都算毋忒!」
一同がびっくりしていると、長者はとても悲しそうに言いました。
大家發痴驚時節,有錢人非常悲傷講:
「ご覧なされ。いつもの年なら、千両箱は一つもここには残っていないはず。
「請看,往年,這位千兩箱一隻都無伸。
しかしどうした事か、今年はお金どのが家においでなのじゃ。
但係,毋知仰會恁樣,今年錢仰會堆在屋下?
おかげで利息は入らず、まことに困った事になっております。
因為借毋出去,所以無利息收入,實在無結煞。
ああ、あの様にお金どのが、昼寝をしてござってはな」
啊,錢伯敢毋係在該睡當晝嘎?
長者はそう言って、また大きなため息をつきました。
有錢人講煞,又道嘆一下。
まったく、ぜいたくな悩みですね。
這係一種奢華个煩惱。
おしまい
煞咧
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