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8月17日の日本の昔話
宝船を買ってくる
鹿児島県薩摩郡の民話 → 鹿児島県情報
にほんご(日语) ・にほんご(日语)&ちゅうごくご(中文)
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投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読
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投稿者 「ぐっすり眠れる優しいおやすみ朗読」
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投稿者 「癒しの森っ子」
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投稿者 「きべだよ。」
むかしむかし、お父さんが冗談で、とても素直な男の子に言いました。
「お金をやるから、それで宝物を乗せた宝船を買ってきてくれないか?」
いくらなんでも、そんな物を買えるはずがありません。
でも、男の子は、
「はい。では買ってきます」
と、わずかなお金をもらって、家を飛び出して行ったのです。
男の子は町へ行くと宝船を売っているお店を探しましたが、どこにも宝船は売っていません。
そこで男の子は人形を売っているお店に入ると、お店にいたおばあさんに尋ねました。
「おばあさん、ぼくは宝船を買いに来たのですが、どこにも売っていないのです。どこに売っているか、知りませんか?」
「おや、宝船をかい? それは大した買い物だね。それで、お金は持っているのかい?」
「はい、これだけあります」
男の子はそう言って、お父さんにもらったお金を見せました。
するとおばあさんは、困った顔をして言いました。
「それじゃ、宝船なんて無理だよ。この店じゃあ、この起き上がりこぼししか買えないね」
「では、それを下さい」
こうして男の子はもらったお金で、おきあがりこぼしを二つ買いました。
そして男の子が町を出てしばらく行くと青い原っぱがあって、ヒューヒューと涼しい風が吹いていました。
するとふところから、二つのおきあがりこぼしが飛び出して、
「ここは、気持ちの良いところじゃ。ひとつ、すもうでもとるか」
と、二つのおきあがりこぼしがすもうをはじめたのです。
「不思議な人形だな。よし、これでお金もうけをしよう」
そこで男の子はおきあがりこぼしをふところにしまうと、この村の長者のところへ行きました。
「長者さん、明日おもしろいものを見せますから、村の人たちを集めてください」
「なに? おもしろいものだって?」
「はい、この土で出来た人形に、すもうをとらせます」
男の子は、ふところから二つのおきあがりこぼしを取り出しました。
「なるほど、それはおもしろそうだ。でも、どうやってすもうをとらせるのだ?」
「それは、明日のお楽しみです」
そう言われると、長者は人形のすもうが見たくてたまりません。
「よし、わかった」
そこで長者は、広い庭のまん中に小さな土俵(どひょう)をつくり、
《人形のすもうを行うので、見たい者は見物料に、お金か品物を持ってくるように》
と、書いた立て札を立てたのです。
するとそれがうわさになり、次の日の朝には大勢の村人たちがお金や品物を持って集まりました。
長者の作った小さな土俵の上には、おきあがりこぼしが二つ、ちょこんとのっています。
「あの人形が、すもうをとるというのか?」
「まさか、人形がすもうをとるなんて」
「でも、もしかすると」
みんなが話し合っていると、男の子が大きな声で言いました。
「東、おきの山。西、こぼし川。見合って見合って、はっけよい!」
そのとたん、二つのおきあがりこぼしが動き出して、押し合いをはじめたのです。
どちらも強くて、なかなか勝負がつきません。
「いいぞ、いいぞ」
「どっちも、負けるな!」
村人たちは大喜びで、持って来たお金や品物をどんどん投げてくれました。
おかげでたちまち、宝の山が出来てしまいました。
長者も大喜びで、男の子に宝の山を積む舟をつくってくれました。
こうして男の子は、ついに宝船を手に入れたのです。
そして家で待っていたお父さんも、男の子が本当に宝船を買ってきて大喜びです。
おかげで男の子の家族は、村一番のお金持ちになりました。
おしまい
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