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9月8日の日本の昔話
犬と鏡
狗摎鏡仔
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、吉四六さんと言う、とてもゆかいな人がいました。
頭擺頭擺,有一個安到吉四六先生个人,非常樂線。
ある年の暮れの事、吉四六さんがお正月に必要な物を町へ買いに来ていると、突然横道から女の子の泣き声がして、続いて大勢の子どもたちが騒ぐ声が聞こえて来ました。
某年年尾,吉四六先生來到街路買新年愛用著个東西時節,忽然間有一個細妹仔个噭聲對岔路傳過來,續等又聽著當多細人仔个吵鬧聲。
「はて、何事だろう?」
「該片有麼个事情?」
吉四六さんが急いでその横道に入ってみると、子どもたちがある侍屋敷の裏門の周りに集まって騒いでいるのです。
吉四六先生緊觸處走去岔路看,看著細人仔聚在武士屋下後門吵鬧。
後ろからのぞいてみると、門のわきにつないである一匹の猛犬が、きれいなマリをくわえて子どもたちをにらみつけながら、
在後背看,門脣綯一條當惡个狗,咬等當靚个球仔、緊看細人仔。
「ウー!ウー!」
と、うなり声をあげているのです。
「m11~!m11~!」滾緊呻。
吉四六さんが子どもたちに話を聞いてみると、この町の油屋の娘が落とした大切なマリを、犬がくわえて放さないというのです。
吉四六先生問細人仔後,正知這條狗咬等街路油店个妹仔跌忒个球仔毋肯放。
子ども好きの吉四六さんは、泣いている油屋の娘に言いました。
盡惜細人仔个吉四六先生,摎油店个妹仔講:
「よしよし、心配するな。おじさんが取ってやるからな」
「好,好,毋使愁。阿叔去摎你拿轉來。」
吉四六さんは犬に手を出して、犬をなだめようとしましたが、
吉四六先生手伸出狗該位,想愛拐狗,
「ウッーー!」
「m11~!」
犬はせっかく手に入れたおもちゃを取られると思い、ちょっとでも近づくと噛みつく姿勢を取ります。
狗認為愛拿佢難得拿著个玩具,所以再過接近兜斯愛咬人樣。
「こりゃ、知らない人では駄目だな。飼い主でなくては」
「這,毋熟識个人做毋得恁樣,定著愛狗主人。」
吉四六さんは家の中に声をかけましたが、あいにくとみんな出かけているらしく、家には一人もいません。
吉四六先生對屋肚大聲喊,毋過,堵好全部都出去了,屋下無人。
「こうなると、エサでつるしかないな」
「該恁樣,高不將用餌來餳。」
そこで吉四六さんは、正月用に買ってきたおもちを一つ、犬に放り投げたのですが、この犬は普段から良くしつけてあるので、飼い主がやるエサしか食べないようです。
過後,吉四六先生摎買轉來,準備過年个粢粑擲分狗,但係這條狗平時受過訓練,所以,若毋係主人拿个東西像形毋食樣。
さすがの吉四六さんも、相手が犬ではいつものとんちが働きません。
連吉四六先生,對這條狗無半點法度。
油屋の娘を見ると、吉四六さんが何とかしてくれると思い、真っ直ぐな目でじっと吉四六さんを見つめています。
看著油店个妹仔時節,吉四六先生想總愛想辦法,毋過狗一直目盯盯看吉四六先生。
「うーん、これは難題だな」
「m11,這問題還難。」
しばらくの間、犬の顔をじっと見つめていた吉四六さんは、
過一下仔,緊捉狗看个吉四六先生,
「あ、そうだ!確か買った物の中に、嫁さんに頼まれていたあれがあるはず」
「啊,著!確實買个東西肚,餔娘交帶愛買个有該種東西。」
吉四六さんは荷物の中から何かを取り出すと、すたすたと犬に近づいて、取り出したある物を犬の鼻先にさし向けました。
吉四六先生對包袱裡肚拿出毋知麼个東西,走到狗脣頭,拿到狗鼻空前。
すると犬は驚いて、
狗煞著驚,
「ワン!」
と、吠えたのです。
「wan!」聲吠。
そのとたんマリは犬の口から離れて、コロコロと吉四六さんの前に転がってきました。
該下,球仔對嘴跌下來,Korokoro輪到吉四六先生面頭前。
吉四六さんは素早くマリを拾い上げると、喜ぶ油屋の娘にマリを返してあげました。
吉四六先生煞煞拈起來,還油店个妹仔。
「おじさん、ありがとう。でも、何で犬はマリを放してくれたの?」
「承蒙阿叔。但係,仰般狗會摎球仔放忒?」
尋ねる油屋の娘に、吉四六さんはさっき犬に見せた物を見せました。
吉四六先生摎頭下拿分狗看个東西,拿分問佢个油店妹仔看。
「あ、かがみだ!」
「啊,係鏡仔!」
犬はかがみに映った自分の姿を見て、かがみの中に別の犬がいると思い、その犬に向かって吠えたのでした。
該條狗在鏡仔肚看著自家个影,話著鏡仔肚還有另外一條狗,就對該條狗緊吠。
おしまい
煞咧
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