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10月11日の日本の昔話
おキツネのお産
狐狸降子
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、あるところに、とても腕のいいお産婆(さんば)さんがいました。
頭擺頭擺,某隻位所,有一個技術當好个產婆。
お産婆さんとは、赤ちゃんを産むお手伝いをしてくれる人の事です。
產婆係專門摎產婦𢯭手降嬰兒仔个婦人家。
このお産婆さんに来てもらうと、どんなにひどい難産でも楽に赤ちゃんを産む事が出来ると評判でした。
請到這產婆,不管有幾難个難產,乜會順利降嬰兒仔,非常有名。
ある夜の事、お産婆さんが寝ていると、ドンドンドンと誰かが戸をたたきました。
有一暗晡,產婆睡忒了,有人來碰門。
「はて、急なお産かな?」
「唉哦,有人緊急會降敢?」
お産婆さんが急いで戸を開けると、このあたりでは見た事のない男の人が、青い顔で肩で息をしながら立っています。
產婆煞煞去開門,看著一個在這就近毋識見過面个男仔人,面壢青、氣扯氣急企在該。
「お産婆さん、早く来てください!嫁が今、苦しんでいます!初めてのお産なもんで、どうすればいいかわかりません!」
「產婆,請你遽遽來去!吾餔娘這下當艱苦!第一擺降,毋知愛仰般做正好!」
「はいはい、落ち着いて。それで、お宅はどちらかね?」
「好,好,定板兜,你戴哪位?」
「わたしが案内しますので、急いでください!」
「𠊎渡你來去,請你較遽兜!」
お産婆さんは大急ぎで着替えて、お産に必要な物を持って外へ出ました。
產婆煞煞換衫拿等必要个助產个東西行出門。
「おや?」
「啊?」
外へ出たお産婆さんは、首をかしげました。
行出門个產婆搖搖頭,
外はまっ暗なのに男の人のまわりだけは、ちょうちんで照らしたように明るいのです。
外背暗摸叮咚,斯男仔人脣頭有燈籠火照到光光定,
「早く!早く、お願いします!」
「遽兜!遽兜!拜託!」
不思議に思うお産婆さんの手を、男の人がぐいと引っぱって走り出しました。
男仔人牽等想毋解个產婆个手走等出。
さて、男の人と一緒に、どのくらい走ったでしょう。
摎男仔人共下毋知走幾遠。
気がつくとお産婆さんは、見た事もないご殿の中にいました。
等佢注意著个時節,早就行到毋識看過个宮殿肚了。
そこでは数えきれないほどたくさんの女中さんがお産婆さんを出迎えて、
這裡背有算毋忒恁多个細妹傭人出來迎接產婆。
「どうか奥さまを、よろしくお願いします」
と、頭をさげます。
「請你多多照顧夫人。」,低頭行禮。
長い廊下を女中頭(じょちゅうがしら)に案内されると、金色のふすまが見えました。
在細妹傭人頭仔引導下,行過長長个廊仔下,看到金黃色个紙門。
「奥さまが、お待ちでございます」
「夫人在該等妳。」
女中頭に言われて部屋に入ると大きなお腹をかかえた美しい女の人が、ふとんの上で苦しそうに転げ回っています。
聽細妹傭人頭仔个指示行落房間,看著一個當靚个餔娘人,夯隻大大个肚屎,在該爬床扡蓆。
「はいはい、落ち着いて。わたしが来たから、もう大丈夫」
「好,好,定板兜,𠊎來了毋使愁。」
お産婆さんはやさしく言うと女中頭にお湯や布をたくさん用意させて、さっそくお産にとりかかりました。
產婆低言細語講,吩咐細妹傭人頭仔,準備當多燒水摎布仔,斯開始助產了。
「さあ、楽にして、りきまずに、力を抜いて、そうそう、がんばって」
「輕鬆兜,出暗力,放輕鬆,係恁樣,加油。」
すると、まもなく、「フギァアーー!」
と、元気な男の赤ちゃんが生まれました。
無幾久,
「哇!」
降出一個當有元氣个細倈嬰兒仔。
「ふう、やれやれ」
「好了,好了!」
お産婆さんが汗をぬぐうと、さっきの男の人が目に涙を浮かべてお産婆さんにお礼を言いました。
產婆當當捽汗个時節,頭下該男仔人含等目汁摎產婆承蒙,講:
「本当に、ありがとうございました。無事に息子が生まれ、こんなにうれしい事はありません。どうぞ、あちらの部屋でゆっくりお休みください」
「實在還承蒙你,細嬰兒仔平安降出來,無比這還較歡喜个事情,請來去對面間房休息一下。」
お産婆さんは長い廊下を連れていかれて、今度は銀色のふすまの部屋に案内されました。
產婆在人引導下經過長長个廊仔下,這擺去到銀色个紙門个屋。
「おや、まあ」
「唉哦。」
そこには黒塗りの見事なおぜんがあり、お産婆さんのために用意されたごちそうがならんでいます。
該位有特別為產婆準備烏色个桌席、豐沛酒菜排滿桌。
「ああ、ありがたいねえ」
「啊,還承蒙哪。」
お産婆さんは用意されたごちそうをパクパクと食べると、うとうと眠ってしまいました。
產婆當當在該食為姖準備个豐沛酒菜時節,頭那戆神戆神嗄睡忒咧。
それから、どのくらい時間がたったでしょう。
コケコッコー!
一番どりの鳴き声で、お産婆さんははっと目を覚ましました。
毋知經過幾久,聽著第一聲雞啼〝kokekoko〞。產婆正醒起來。
「ここは?」
「這位係?」
立派なご殿にいたはずなのに、お産婆さんが目を覚ましたのは古い小さな小屋の中でした。
應該在華麗个宮殿,醒起來仰會在又舊又細个屋肚呢?
「不思議な事もあるもんだねえ」
「還奇怪个事呢!」
お産婆さんは村に帰ると、村の人たちにゆうべの事を話しました。
產婆轉到屋下後,摎村民講昨暗晡發生个事情,
すると村人たちは口々に、
大家斯講:
「それはきっと、お産婆さんの評判を聞いて、キツネが頼みに来たにちげえねえ」
と、言ったそうです。
「該絕對係聽著產婆个好名聲,狐狸精正會來拜託。」
おしまい
煞咧
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