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11月22日の日本の昔話
なんじゃの買い物
和尚と小僧の笑い話
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読
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投稿者 「癒しの森っ子」
むかしむかし、ある山寺に、和尚さんととんちのきく小僧さんがいました。
いつも小僧さんにやられている和尚さんは、今度こそ小僧さんを困らせてやろうと思い、小僧さんを呼んで言いました。
「これ、すまんが町まで行って、『なんじゃ』という物を買って来てくれ」
「はい。ですが、和尚さま。『なんじゃ』って、何ですか?」
「何じゃ、お前は『なんじゃ』を知らんのか? まったく、『なんじゃ』ぐらい知らんでどうする。まあ、知らん物を買うのも修行のうちじゃ。はやく『なんじゃ』を買ってくるんじゃ」
和尚さんはそう言うと、小僧さんを買い物に行かせました。
(さて、小僧のやつ、一体何を買ってくる事か。まあ何を買ってきても、難癖をつけてやるがな。うししししし。あいつの困った顔を見るのが、楽しみじゃ)
さて、町に出かけた小僧さんは、首をひねりながら考えました。
「はて? 『なんじゃ』って、何だろう?」
すると道向こうの橋の上で、町の人たちが川の中をのぞき込みながら話していました。
「何じゃ、何じゃ?」
「ありゃ、何じゃ?」
小僧さんがのぞいて見ると、川の岸の杭に変な物が引っかかっています。
みんなが騒いでいると、一人の男が言いました。
「あれは、死んだ馬の腹わたさ」
「なんだ、馬の腹わたか」
「たぶん、馬の皮や馬肉を取った残りの腹わたを、だれかが川に捨てたのだろう」
それを聞くと、みんなはつまらなそうに帰って行きました。
しかし、その場に残った小僧さんはニッコリです。
「確か今、『ありゃ、何じゃ』って言ったな。そうか、『なんじゃ』とは、これだな!」
小僧さんは川におりて行くと、浮いている馬の腹わたを棒ですくいました。
「よし。いい物が見つかったぞ」
小僧さんは馬の腹わたを、ていねいにふろしきに包みました。
そしてふろしき包みを棒の先に引っかけると、お寺に帰って行きました。
「和尚さま。ただ今、戻りました」
「おお、戻ってきたか。して、どうじゃ。『なんじゃ』を買ってきたか?」
すると小僧さんはニッコリ笑って、ふろしき包みを和尚さんに差し出しました。
「はい。これです」
それを受け取った和尚さんは、
(さて、一体何を買ってきた事か。もっとも何が入っていても、難癖をつけてやるがな)
と、考えながら、ふろしき包みを開けてびっくりです。
和尚さんは思わず、
「こりゃ、何じゃ?!」
と、小僧さんに尋ねました。
「はい。その『なんじゃ』を、買って来ましたよ」
「だから、こりゃ、何じゃ?!」
「ですから、『なんじゃ』ですよ。たった今、和尚さまも『なんじゃ』って、おっしゃったじゃないですか」
小僧さんの言葉に、和尚さんは、
「うーん。それは、確かに・・・」
と、言ったきり、何にも言い返せませんでした。
こうして和尚さんは、また小僧さんに負けてしまいました。
おしまい
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