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1月27日の小話
千手観音
あるところに、ひどく貧乏なお寺がありました。
その日の食べる物にも困った和尚さんは、
(ここは思い切って、千手観音(せんじゅかんのん)さまのお開帳(かいちょう→ふだん見せない物を公開すること)をやって人を集めよう)
と、決心しました。
この観音さまは寺代々の宝物で、参詣(さんけい→神仏におまいりに行くこと)の人にも見せた事がありませんでした。
さていよいよ、千手観音さまのお開帳を始めますと、
「ありがたいお姿が拝める」
と、近隣諸国(きんりんしょこく)から行列を作って、人々が参詣に集まって来ました。
おかげでお寺は、押すな押すなの大賑わいです。
ある日の事、参詣人の一人が和尚さんに尋ねました。
「千手観音という、この仏さまは、お手が千本もございますそうで」
「さよう」
「それなのに、お足の方はたったの二本。これはまあ、どうしたわけでございましょうか」
尋ねれた和尚さんは観音さまに一礼してから、真面目な顔で答えました。
「それは、良いところヘお気がつかれました。そのおあし(→お金)が足りませぬので、こうしてお開帳をいたしたのでございます」
♪ちゃんちゃん
(おしまい)
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