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10月6日の小話
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十二味のとうがらし
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
投稿者 「フー」 ハーリ・クィン朗読館
♪おはなしをよんでもらう(html5) |
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朗読 : ことのは |
旅の男が縁日でにぎわうお寺の前を通りかかると、とうがらし売りが声をかけました。
「お客さん、世にも珍しい、十二味とうがらしはいかがですか?」
「なに?
十二味とうがらしだと?
七味とうがらしならどこでも売っているが、十二味とは珍しいな。
よし、土産に一袋作ってくれ」
「へい。
ではさっそく、お作りいたしましょう。
まず『赤とうがらし』に、『アサの実』に、そして『青のり』に、『ちんぴ(→みかんの皮を干して粉にしたもの)』に、『さんしょ』を入れて。しまいに、『ケシ』と『すりゴマ』をよく混ぜ合わせてと。
へい、おまちどおさん」
「おいおい。
それでは、どこにでもある七味じゃないか。
『赤とうがらし』、『アサの実』、『青のり』、『ちんぴ』、『さんしょ』、『ケシ』、『すりゴマ』。
やっぱり、七味ではないか。
いったいどこが、十二味とうがらしだ?
・・・さては、でたらめぬかしたな!」
旅の男が、くってかかりました。
ところがとうがらし売りは、ニヤリと笑い。
「今日はごらんの人出で、だいぶほこりがたっています。
したがって七味とうがらしに、少々のごみ(五味)も入っておりましょう。
七味と五味で、十二味とうがらしでございます」
おしまい
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