福娘童話集 > きょうの日本民話 福娘童話集 きょうの日本民話 童話・昔話・おとぎ話の福娘童話集
 


福娘童話集 > きょうの日本民話 > 2月の日本民話 > ネコの置物を売る店

2月13日の日本民話

ネコの置物を売る店

ネコの置物を売る店
東京都の民話東京都情報

日本語 ・日本語&中国語

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読
【大人も子供も聴くだけで眠れる】180分広告なし 心癒される”恩返し”のお話 日本昔ばなし集 元NHKフリーアナの読み聞かせ

 むかしむかし、江戸(えど→東京都)の浅草(あさくさ)に、貧乏な野菜売りの男がいました。
 男はおかみさんと年老いた父親を、とても大切にしていました。
 ところが父親が病気になって、ついに寝たきりになってしまったのです。

 男はおかみさんと交代で父親の看病(かんびょう)にあたり、父親の具合が良い時だけ野菜売りに出かけました。
 その為に男の家はますます貧乏になり、その日の食べる米も買えなくなったのです。
 もちろん、お金がないので、父親を医者に診せる事も薬を買う事も出来ません。
「本当に、どうしようかね」
 深いため息をつくおかみさんに、男は頭を下げて謝りました。
「そのうちに何とかするから、もう少し辛抱してくれ。親父の事が心配で、仕事もおちおちやっていられないのだ」
 そして男は、家で買っているネコを抱き上げて言いました。
「お前も知っての通り、今の家にはお前に食べさせる物はない。長い間一緒に暮らしてきたお前と別れるのはつらいが、これからどうするかは、お前の好きな様にしてくれ」
 それを聞いていたおかみさんは、あきれ顔で、
「ネコにそんな事を言ったって、言葉が分かる訳ないじゃないの。可愛そうだけど、そのうちにわたしがどこかへ捨てて来るよ」
と、言ったのですが、ネコは次の日から姿を消してしまいました。

 それから二、三日たったある日、寝たきりの父親が言いました。
「なあ、この頃、家のネコは、昼間どこへ行っているのだ?」
 それを聞いた男は、少し悲しそうに言いました。
「実は、二、三日前に家を出たまま、帰ってこないんだ。エサをやる事も出来ないので、きっと愛想つかれたのだろう」
 すると父親が、不思議そうに言いました。
「いいや、そんな事はないぞ。
 ネコは毎晩、わしの所で眠っておる。
 わしが腰が痛いと思うと、腰に登ってくれ、肩が痛いと思うと、肩に登ってくれるんだ。
 ありがたい事に、ネコが登ると痛みがやわらいで、とてもよく眠れるのだ。
 こう言っては悪いが、お前たちがさすってくれるより気持ちがいいくらいだ。
 それなのに昼間は家にいないとすると、どこでどうやって食べているのやら」
 それを聞いて男とおかみさんは、ネコに悪い事を言ったと後悔(こうかい)しました。
「まさか、ネコに人の言葉が分かるとは思わなかった」
「本当にね」
「そうだ、今夜親父のところへ来たら、ずっと家にいてくれる様に頼んでもらおう」
「そうよ。いくら貧乏でも、ネコの食べ物ぐらい何とか都合出来るわよ」
 ところがネコはいつ来ていつ帰って行くのか、父親も知りませんでした。
 何しろ、ネコが痛いところに登ってくれると、父親は良い気持ちになって、すぐに眠り込んでしまうからです。
 さて、ネコのおかげなのか、父親の具合がだんだん良くなっていきました。
 そんなある日の事、男の家に金持ちらしい商人が現れて、こう言うのです。
「あなたの家にネコがいますか? いたら、ぜひゆずって下さい」
 それを聞いた男は、きっぱりと断りました。
「確かに、ネコを一匹飼っていますが、ネコは夜しか戻って来ないので、どこにいるのか分かりません。
 それにそのネコは、親父の病気を治してくれる大切なネコなので、いくら金をつまれてもゆずるわけにはいきません」
 すると商人は、笑いながら首を振りました。
「いやいや、ゆずって欲しいのは、生きたネコの事ではありません。ネコの置き物の事です」
「置物の?」
 そう言えば、この家には知り合いの人が面白半分に土で作った、ネコの置き物があります。
 男は棚の上でほこりをかぶっている置き物を出して来て、商人に見せました。
「家にある置物のネコと言えば、これの事ですか?」
「ああ、確かにこれです。どうか是非、これをゆずって下さい」
「それは構いませんが、しかしまた、どうしてこんな物を?」
 男が尋ねると、商人はニコニコしながら訳を話しました。
「実はゆうべ、面白い夢を見ましてね。
 どこかのネコが夢の中に現れて、
『浅草の野菜売りの家にネコの置き物があるから、それをゆずってもらいなさい。そうすればますます商売が繁盛する』
と、言うのです」
「なるほど。そう言う事ですか」
「はい、大切な物と思いますが、商人は縁起を担ぐものです。どうかその置物を、これで」
 そう言って商人は、小判を何枚も取り出しました。
 それだけあれば、当分の間は生活に困りません。
「わかりました。おゆずりしましょう」
 男がネコの置き物を渡すと、商人は喜んで帰って行きました。

「それにしても、不思議な事もあるものだ。ただの置物が高値で売れるなんて、こんな幸運は二度とないぞ」
 ですが次の日、商人と同じ夢を見たという客がやってきたのです。
 しかし家には、もうネコの置き物はありません。
 客ががっかりして帰った後、三人は話し合いました。
「あんな客がまた来たら、どうしよう?」
「でも、家にあったネコの置物は、あの一つきりだからな」
「そうですね。もっと置物があったら良かったのに」
 するとそこへ近所の親しい人がやって来て、こう言いました。
「それなら、今戸焼き(いまどやき)のネコを買って来て、家に置いておけばどうだ」
 今戸(いまど→東京都台東区の北東部で隅田川に面する地名)というところは焼き物が盛んで、主にネコやカッパの置き物をつくっていました。
 さっそく男は商人からもらった金で、ネコの置き物を二十個ほど仕入れました。
 すると次々に夢を見たと言う客がやって来て、ネコの置き物が面白い様に売れるのです。
 やがて男の家は、ネコの置物のおかげで金持ちになりました。
 それとうれしい事に父親の病気はどんどん良くなり、どこかへ家出していたネコも戻ってきたのです。
 それから男は野菜売りをやめて、浅草の観音さまの境内(けいだい)に店を構えると、ネコの置き物を専門に売る事にしました。
 男は小さな置き物から大きな置き物まで、たくさんのネコの置物を仕入れて、それに座布団(ざぶとん)をつけて売ったのです。
 それから半年後、家を助けたネコの話が江戸中に広がり、浅草へ来た人はみんなこの店の置き物を買うようになったのです。

 それから、あの生きた方のネコは一日中店の奥にいて、のんびりと座布団の上に座っていましたが、次の年、ネコは眠る様にして死んだという事です。

おしまい

前のページへ戻る


     2月13日の豆知識

366日への旅
きょうの記念日
銀行強盗の日
きょうの誕生花
ローダンセ(Rhodanthe)
きょうの誕生日・出来事
1965年 南原清隆 (タレント)
恋の誕生日占い
芸能界や外国などの華やかな世界にあこがれています
なぞなぞ小学校
きれはきれでも、買う事の出来ないきれは?
あこがれの職業紹介
ウェディングプランナー
恋の魔法とおまじない 044
好きな人の夢を見るおまじない
  2月13日の童話・昔話

福娘童話集
きょうの日本昔話
吉四六さんと猫
きょうの世界昔話
ほら吹き男爵 月世界探検
きょうの日本民話
ネコの置物を売る店
きょうのイソップ童話
お百姓と凍えたヘビ
きょうの江戸小話
用心
きょうの百物語
鏡に化けた黒クモ

福娘のサイト

http://hukumusume.com

366日への旅
毎日の記念日などを紹介
福娘童話集
日本最大の童話・昔話集
さくら SAKURA
女の子向け職業紹介など
なぞなぞ小学校
小学生向けなぞなぞ