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3月17日の日本民話
山弥長者(さんやちょうじゃ)
大分県の民話 → 大分県情報
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むかしむかし、大分の萩原(はぎわら)と言うところに、山弥之助氏定(さんやのすけうじさだ)という商人がいました。
ある春の日の事、仲間と二人で商売に出た山弥は、帰り道に十六山(とうろくやま)のふもとで一休みをしていました。
疲れているのか、連れの男は気持ちよさそうにいびきをかいています。
すると一匹のハチが飛んで来て、何と男の鼻の穴に潜り込みました。
やがてハチは鼻の穴から出て来ると、またどこかへ飛んで行ってしまいました。
それを見ていた山弥に、しばらくして目覚めた男はこんな話しをしました。
「なあ、おれは面白い夢を見たぞ。ハチが飛んで来て、『十六山に、黄金が埋まってるぞ』と、言うんだ。まあ、夢の話。わはははははは」
男はそう言って笑い飛ばしましたが、実際にハチを見た山弥はその夢を信じ、男と別れるとさっそくあちらこちらと手当たり次第に掘り始めたのです。
しかしいくら掘っても、黄金なんて出てきません。
でもあきらめる事なく何年も掘り続けた山弥は、ある日ついに黄金を掘り当てたのです。
「やった! 黄金だ! ハチのお告げは本当だったんだ!」
そしてそれを元手に商売を成功させて、やがて西国一と呼ばれるほどの長者になったのです。
長者になった山弥は万屋町(よろずやちょう)に立派な屋敷を建てて、ぜいたくな暮らしを始めました。
そして並のぜいたくにあきた山弥は、屋敷の天井にギヤマン(→ガラス)を張り詰めると、そこを水槽にして金魚を飼うことにしたのです。
天井で金魚が泳ぐ光景はとても評判となり、やがては府内(ふない)の殿さまも山弥の屋敷を訪れて、のんびりと過ごすようになりました。
そんなある日の事、ギヤマン張りの天井の部屋で、殿さまと山弥の息子が寝ころびながら天井の金魚をながめていたのですが、天井の水槽に新しい金魚を取り寄せた事を自慢しようとした息子が、
「殿、あそこの黒いのが、出目金でございます。そしてその隣りのが、りゅう金でございます」
と、寝ころんだまま殿さまに向かって、足で金魚の説明したのです。
すると殿さまは息子の態度に怒り出し、
「無礼者! 足で説明するとは、何事だ!」
と、何と山弥一族に死罪を申しつけたのです。
それを聞いた山弥は、
「私の屋敷からお城まで千両箱を並べますゆえ、どうぞ命だけはお助け下さい」
と、必死にお願いしたのですが、殿さまは山弥の願いを聞き入れず、山弥一族は堀切峠(ほりきりとうげ)で首をはねられたのです。
山弥の屋敷があった大手町には、今でもその跡をしめす石の柱が立てられているということです。
おしまい
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