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7月24日の日本民話
こぼし石
三重県の民話 → 三重県情報
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むかしむかし、普門寺(ふもんじ)というお寺に、カッパが住んでいました。
ここのカッパはお寺の小坊主よりもずっと小さかったので、「こぼし」という名前が付けられていました。
このこぼしは髪の毛を長くのばし、頭の上の部分だけがはげになっています。
カッパは頭のはげの部分がいつもぬれていて、もしこの頭のはげがかわくと死んでしまうと言われています。
さて、この村には一軒だけ、ウマを飼っている家がありました。
村人たちはこの一頭のウマをめずらしがって、毎日たくさんの人が見に来ていました。
ある日の事、こぼしもウマを見に行きましたが、ウマはこぼしに尻をむけて知らぬ顔をしています。
そこでこぼしが、
「なんだ! おれが来たのに知らん顔をするとは、けしからんではないか!」
と、怒ると、ウマは尻をむけたまま言いました。
「なんだ、普門寺に住むカッパか」
「そうだ、こぼしだ。わかっているなら、少しはこちらをむいたらどうだ。このウマめ!」
こぼしはそう言うと、ウマの尻尾を引っ張りました。
すると怒ったウマが、後ろ足でこぼしをけりつけたのです。
けられたこぼしは地面を転がって、大切な頭のはげに大けがをしてしまいました。
するとそのはげのけがから、水がポタポタと流れ落ちました。
「大変だ! このままでは頭がかわいてしまう!」
こぼしはあわてて海岸へ行くと、そこに落ちている二つの石を拾いました。
そしてその石をお寺へ持って帰ると、頭のはげのけがの上に重ねて置いたのです。
すると傷はたちまち治って、水が流れ落ちるのが止まりました。
これを見ていたお坊さんが、こぼしに言いました。
「なんとも、けっこうな石じゃなあ。ぜひ一つ、残していってくれ」
そこでこぼしは一つはお寺に、もう一つはもとの海岸に返しました。
さて、お寺に残された石は不思議なことに、時々、
「水がほしい、水がほしい」
と、言うそうです。
そこでこの石に水をかけてやると、石は喜んで人々を水難から守ってくれると言われています。
おしまい
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