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11月14日の日本民話
まこもが池のオシドリ
長野県の民話 → 長野県情報
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むかしむかし、武田家の家臣に、桜井重久(さくらいしげひさ)という武将がいました。
重久はとても強い武将でしたが、武田家がほろびると富県村(とみがたむら)の貝沼(かいぬま)に住みつき、名前も貝沼重久(かいぬましげひさ)と改めて暮らしていました。
ある日の事、重久は犬を連れてまこもが池に狩りに行くと、池の中ほどにオシドリが二羽、仲良く浮かんでいたのです。
「これは、良いえものだ」
重久はさっそく弓矢を放ち、一羽のオシドリの首を射ぬきました。
「それっ、えものを取ってこい」
重久が犬に言うと間もなく犬がオシドリをくわえてきましたが、どうしたわけかそのオシドリには首がなかったのです。
さて、それから数日後の夕方、重久が家でくつろいでいると、どこからか女の人の悲しい歌声が聞こえてきました。
♪桜井の、名もうらめしき、貝沼の
♪まこもが池に、のこるおもかげ
それは、
『桜井も貝沼という名前もうらめしい、まこもが池には、今は亡きあの方の面影がいつまでも残っております』
と、こんな意味の歌です
重久は急いで表に出てみましたが、そこには誰もいませんでした。
それから一年後、重久は狩りの途中で、またまこもが池を通りかかりました。
すると今度はメスのオシドリが、一羽で池を泳いでいたのです。
「よし、あれをしとめよう」
重久はさっそく、弓矢を放ちました。
「それっ、えものを取ってこい」
犬はすぐさま池に飛び込むと、オシドリをくわえてもどってきました。
そして犬がくわえてきたオシドリを手にして、重久はびっくりです。
なんとメスのオシドリの羽の下には、ミイラになったオスのオシドリの首がしっかりとはさまっていたのです。
そのとたん重久の耳に、いつかの悲しげな女の人の歌がよみがえってきました。
「そうか、そう言う事か」
重久は自分の犯した罪を深く反省して、その日から弓矢を捨てました。
そして頭を丸めて、まこもが池の近くに寺を建てると、自分が殺した二羽のオシドリの供養をしたそうです。
鴛鴦山東光寺(えんおうざんとうこうじ)と言うお寺が、そのお寺だといわれています。
おしまい
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