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1月28日の日本民話 2
てんぐの鼻が高いわけ
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むかしむかし、あるところに、とても物知り男がいました。
どんなことでもこの男にたずねると、すぐに答えてくれるというのです。
そこで村一番の長者が、この男を困らせてやろうと思い、
「お前は何でも知っているそうだが、てんぐの鼻がどうして高くなったのか、教えてくれ」
と、言いました。
すると男は、こわい顔で、
「うーん。こればかりは、だれにも教えられん」
と、言いました。
「まあまあ、そこをなんとか、お願いします」
長者がわざとていねいにたのむと、男は声を小さくして言いました。
「それでは教えてやるが、だれにも言うなよ。まず庭へ出て、あの高い杉の木にのぼれ」
長者は男に言われたように、杉の木にのぼりました。
「さあ、教えてくれ」
長者は、一番低い枝につかまって言いましたが、
「だめだ。もっと上にのぼれ!」
と、男が下からどなりました。
長者はまた少しのぼって、止まりました。
「このへんなら、いいだろ?」
「いや、もっと上まで!」
長者は、また上にのぼりはじめました。
ところがいくらのぼっても、男は、
「もっと上までのぼれ!」
と、言うので、とうとう木のてっぺんまでのぼってしまいました。
長者はてっぺんの枝につかまって、言いました。
「もう、これ以上はのぼれん。さあ、早く教えてくれ。てんぐの鼻は、なぜ高い」
すると男は、下から言いました。
「気分はどうだ? まるで、てんぐになったような気がするだろう」
「うん、そんな気もする」
「よし、そんなら自分の鼻をさわってみろ。少しのびていないか?」
長者は片手をはなして、自分の鼻をさわってみました。
ところが別に、変わったところはありません。
そこで、むっとして言いました。
「ばかを言うな。この鼻は生まれつきで、のびるわけがなかろう」
すると男が、長者に言いました。
「その通り。鼻はみんな生まれつき。てんぐの鼻が高いのは生まれつきじゃ。急に伸びたり縮んだりするわけがない」
「そんなことは、あたりまえだ。ばかにするな」
長者が腹を立てて降りようとしたのですが、高くのぼりすぎたので、足がふるえて動けなくなってしまったそうです。
おしまい
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