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6月7日の日本民話 2

茂助じいさんと古ギツネ

茂助じいさんと古ギツネ
鹿児島県鹿児島市の民話鹿児島県情報

 むかしむかし、伊集院(いじゅういん)の朝日トンネルのあたりは、悪い古ギツネが出るので有名でした。
 この朝日トンネルは鹿児島の町へつながる大事な道だったので、村人は浜でとれた魚を荷馬車に積んで通るのでした。
 多くの人がキツネにだまされましたが、ところが茂助(もすけ)じいさんだけは、まだ一度もだまされたことがなかったのです。
 それで浜の人たちも、
「茂助じいさんなら安心じゃ」
と、魚を売りにいってもらっていたのです。
 ある日のこと、茂助じいさんが魚を荷車にいっぱい積んで、朝日トンネルのあたりを通りかかりました。
 すると別の山道から、かごをかついだ百姓のおばさんがおりてきて、
「もし、じいさん、魚を分けてくださいな。村の衆にも分けてあげるので、たくさんください」
と、言いました。
「はい、いいですよ」
 茂助じいさんは、こころよく分けてあげて、おばさんにたくさんの代金をもらいました。
 さて、茂助じいさんが鹿児島と伊集院との境にある茶屋で腹ごしらえをして、お金をはらおうと財布をのぞくと、どうしたことか、財布の中には木の葉がいっぱいつまっているのです。
「しまった! キツネにだまされた!」
 がっくりしたじいさんは、残っていた魚を代金の代わりに支払うと、重い足取りでとぼとぼと朝日トンネルまで戻ってきました。
「ああ、今日はさんざんだった。・・・うん? これは?」
 ふと地面を見ると、そこら辺には、食い散らした魚の骨が無数に散らばっています。
「ちくしょうめ! このかたきは、必ずとってやるぞ!」
 さて、それから数日後の事です。
 再び荷馬車に魚を積んで朝日トンネルまでやってきた茂助じいさんは、道に丸太がころがっているのを見つけました。
(おや? こんなところに丸太があるとは、あやしいぞ)
 用心してよく見てみると、丸太の端からキツネのような毛が数本生えています。
「ははぁーん。これはキツネにちげえねえ」
 そこで茂助じいさんは、
「おおっ、こげなところに、ちょうどいい大きさの丸太があるぞ。どれ、ここに座って一休みするか」
と、言いながら丸太に座るふりをして、馬の手綱を丸太にくくりつけました。
 そして馬の尻にムチを入れると、
「それ、走れ!」
と、馬をものすごい勢いで走らせました。
 そしてようやく馬に追いついた茂助じいさんは、馬の手綱に縛られて死んでいる古ギツネを見つけました。
 それからというもの、キツネにだまされる村人はいなくなったそうです。

おしまい

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