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10月6日の日本民話 2
まぼろしの巨大魚「ブコ」
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「ぶおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉー」
むかしむかし、丹後の村の漁師たちが舟を出してアミをうっていると、海の中から不気味な声が聞こえてきました。
「なんだー、今のは!? ・・・うぉっ、アミが引っ張られる!」
漁師たちがびっくりしていると、アミがすごい力で海の中に引っ張られたのです。
「だめだ! このままではアミが破れるぞ! 早く引き上げるんじゃ!」
漁師たちは必死になって、アミを引き上げました。
「よし、何かが見えてきたぞ!」
「あわてるなよ」
やがて海面に姿を現したのは、クジラと思うほどの大きな巨大魚でした。
巨大魚はあまりにも大きすぎて舟に引き上げる事が出来ず、漁師たちはアミが破れないように気をつけながら浜まで引いていきました。
巨大魚が少しでも暴れれば舟はたちまち沈んでいたでしょうが、巨大魚はおとなしいままでした。
「しかし、これは何という魚じゃろう? クジラの仲間か?」
「いや、クジラとは思えんが」
海で働く漁師たちにも、これが何の魚かわかりません。
そこで漁師たちは巨大魚の絵を紙に描くと、それを持って京都の学者をたずねました。
すると学者は、すぐに言いました。
「ああ、この大魚はブコでしょう」
「ブコ?」
「はい。千年に一度か二度しか姿を見せないという、とてもめでたい魚ですよ。
むかしの中国では、ブコが海に現れると田畑の作物はよく実り、ブコの肉を食べた者は病気にかからなかったと言われています。
ブコは平和で人々が安心して暮らしているとき、深い海の底から現れる幸せの魚です」
その年は学者が言った様に、田畑の作物がとてもよく育ったそうです。
おしまい
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