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11月24日の日本民話 2
犬ぼえの森
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むかしむかし、サダ六という腕の良い猟師がいました。
その頃の猟師は自分たちの狩り場を持っていて他人の狩り場で猟をする事はありませんでしたが、しかし腕の良いサダ六は特別によその土地で猟をしてもよいと言う許可書を将軍からもらっていたのです。
ある春の事、サダ六は犬のシロを連れて猟に出かけました。
シロはとても勇敢な犬で、相手が大きなクマでも立ち向かいます。
ワンワンワンワン!
シロは吠えたてて、やぶの中からカモシカを追い出しました。
「おおっ、これは大物だ!」
サダ六とシロはカモシカを追いかけましたが、カモシカもなかなか手強く、いつの間にかサダ六たちは隣りの国の南部領に入っていたのです。
「よし、やっと追い詰めたぞ!」
ズドーン!
サダ六は鉄砲をかまえると、一発でカモシカを仕留めました。
するとその音を聞きつけた南部の猟師たちが、怖い顔でやってきました。
「見かけねえ奴だが、お前はこの国の者じゃねえな」
「ああ、わしはサダ六という猟師だ。獲物を追ってここまで来てしまったが、将軍さまからどこの国で猟をしてもよいというお許しをもらっておるぞ」
サダ六はそう言って腰に手をやりましたが、将軍からもらったお許しの巻物がありません。
「しまった。家に忘れてきた」
南部の猟師達たちに捕まったサダ六は、役人の取り調べを受けた結果、明日の夜明けに処刑と決まったのです。
「くそー! あの巻物さえあれば」
サダ六が悔し涙を流していると、どこから入ってきたのかシロが牢屋に現われました。
「おおっ、シロー! 頼む、夜明けまでに家から巻物を持ってきてくれー!」
サダ六の言葉が分かったのか、シロはすぐさま牢屋を飛び出して行きました。
「シロー、頼むぞ!」
その頃サダ六の家では、帰ってこないサダ六の身を案じて、女房が眠らずにじっと待っていました。
そこへシロのワンワンとほえる声が聞こえたので、女房があわてて戸を開けるとシロが飛び込んで来ました。
「シロー、何があったの? あの人は?」
シロは神棚の上にある巻物に向かって、狂ったようにほえ続けます。
ワンワンワンワン!
それを見て、女房はすぐに巻物を取るとシロにくわえさせました。
「シロ、お願い!」
シロは再び隣りの国へ、休むことなく走り続けました。
だんだん空が白んできて、サダ六が処刑される時間が近づいてきます。
雪道を走るシロの足から血が出てきましたが、シロはかまわず走り続けました。
ワンワンワンワン!
そしてついにシロはサダ六の牢屋へとやってきたのですが、もうサダ六はいません。
シロはあきらめず、サダ六のにおいをたよりに処刑場へと急ぎました。
そして処刑場を見つけると、シロは処刑場へと飛び込みました。
ワンワンワンワン!
しかしそこにいたのは、すでに冷たくなったサダ六でした。
シロは悲しそうにサダ六のなきがらに顔をうずめると、サダ六を引きずって処刑場を出て行きました。
役人がそれを止めようとしましたが、牙をむくシロの迫力に手を出すことが出来ませんでした。
やがてシロはサダ六の亡きがらを峠の森まで運ぶと、南部の国の方を向いて何度も何度も遠ぼえを続けました。
ウワォーン! ウワォーン!
ウワォーン! ウワォーン!
ウワォーン! ウワォーン!
その事があってから、村人たちはこの森を『犬ぼえの森』と呼ぶようになったのです。
おしまい
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