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11月24日の日本の昔話
打たぬのに、鳴るたいこ
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
投稿者 「癒しの森っ子」
むかしむかし、あるお寺に、新しい小僧さんが来ました。
和尚(おしょう)さんは、小僧さんがどれくらい役に立つかたしかめようと、わざとむずかしい事を言いつけました。
「小僧よ、打たぬたいこに、鳴るたいこ。手ふり足ふり、しかめ顔をする物を持ってきなさい」
「へえ、そんな物があるのですか?」
「この世に、ない物はない。もし持って来られないのなら、お前の負けじゃ。『まいりました、まいりました』と、十ぺん言って、毎日三度のご飯を二度にがまんしなさい」
「・・・わかりました。何とか持ってきましょう」
小僧さんは一人になると、腕を組んでジッと考えました。
「『打たぬたいこに、鳴るたいこ。手ふり足ふり、しかめ顔をする物』か、そんな物が本当にあるのだろうか? でも何とかしないと、ご飯をへらされるし。・・・そうだ」
小僧さんはニッコリ笑うと、小さな袋を持ってお寺の裏の森へ出かけました。
そして森から帰って来ると、今度はお金を持って町へ行き、たいこを一つ買ってきました。
そしてたいこに細工をすると、和尚さんの部屋へ行きました。
「和尚さま、お言いつけの物を持って来ました」
「ほう、どれどれ」
和尚さんは、小僧さんが差し出したたいこを見てびっくりしました。
誰もたたかないのに、
『ブルン、ブルン』
と、ひとりでに鳴っています。
「これは一体、どういう事だ?」
和尚さんは、たいこのふちから中をのぞこうとしました。
するとハチが飛び出してきて、和尚さんの鼻の頭をちくりとさしたのです。
「うぎゃー、いたい、いたいっ!」
思わずしかめ顔をした和尚さんは、手や足をふりあげてハチを追い払いました。
それを見て、小僧さんが和尚さんに言いました。
「そらね、和尚さまがおっしゃったように、『打たぬのに、鳴るたいこ。手ふり足ふり、しかめ顔をする物』でしょう」
「・・・たっ、たしかに」
見事にやられた和尚さんは、二度と小僧さんをためすような事はしなかったそうです。
おしまい
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