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1月27日の世界の昔話
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
制作: 世界名作福袋 朗読 : 劇団SHOWA ひろみ&ポポコ 絵 : Taku
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青い鳥
メーテリンクの童話
【脚本: ひろみ】
※以下は、動画の脚本原稿です。
むかしむかし、あるところに、まずしい家族が住んでいました。
働き者のお父さんと優しいお母さん、そして二人の兄妹です。
お兄さんの名前はチルチル、妹はミチルといいました。
クリスマスイブのことです。
チルチルとミチルは、いつものようにベッドに入りましたが、窓の外がなんだか賑やかで眠れません。
チル「ミチル?起きてる?」
ミチ「チルチルは?」
チル「起きてるよ。でなきゃ、話しかけられないだろ。」
ミチ「そうだね。今日はクリスマス?」
チル「まだだよ。クリスマスは明日だ。あ、でも、今年はサンタクロースからの贈り物は期待できないよ。」
ミチ「どうして?」
チル「お母さんが言ってた。サンタクロースに頼みに街へ行けなかったって。でも、きっと来年はだいじょうぶだと思うな。」
ミチ「来年か。遠いよね。」
チル「ああ、はるかかなただ。でもさ、サンタクロース、お金持ちの家の子供のところには毎年来るんだぜ。」
ミチ「そうなの?」
ミチルには、自分たちの家が貧しくて子供たちにプレゼントを買う余裕がないこと、だからサンタクロースが来ないことを、まだうまく理解できません。
チル「起きようぜ。」
ミチ「うん。サンタさんが来ないなら、早く寝てもしょうがないもんね。」
二人は、ベッドから起き出し、窓のところへ行きました。
ミチ「わあ!なんて明るいの?」
チル「向かいの家はお金持ちだから、パーティをやっているんだ。今夜はクリスマスイブだからね。」
向かいの家からは、明かりだけでなく楽隊が奏でる音楽もこぼれてきます。
テーブルには、ご馳走が沢山並んでいます。
ミチ「あの人たち、あれ全部食べるのかしら?」
チル「そりゃ食べるだろう。そのために用意してあるんだから。」
ミチ「じゃぁ、どうして今すぐ食べないの?」
チル「今はお腹空いてないんだろう。」
ミチ「お腹が空いてない?どうして?」
チル「食べたいときに食べられるからだよ。」
ミチ「毎日?」
チル「多分ね。」
チルチルはそう答え、
「皆んな笑ってる。楽しそうだなぁ。」
と呟きました。
その時です。二人の部屋に、突然、見知らぬおばあさんが入ってきました。
チル「誰?」
おばあさんはにっこりすると、
婆「私は、妖精だよ。」
2人「妖精!?」
ミチ「妖精にもおばあさんがいるの?」
婆「もちろん。この家に、青い鳥はいないかい?」
チル「青い鳥?」
ミチ「うちにいるのは、あの鳥だけよ。」
ミチルは、部屋の隅のキジバトの入った鳥かごを指差しました。
婆「この鳥は青くないね。青い鳥でないと、ダメなんだ。」
ミチ「どうして?」
婆「孫娘が難しい病気でね。」
チル・ミチ「えー!?」
婆「あ、だけど、しあわせの青い鳥を手に入れれば病気は治るんだよ。しあわせの青い鳥を探してくれないかい?」
チル「いいよ〜。あ、だけど…もう寝る時間だし…。」
婆「大丈夫。私に任せておきな。」
ミチ「その女の子のために、見つけに行ってあげようよ。」
チル「うん、分かった。おばあさん、一緒に行くよ。」
婆「私は行けないんだよ。」
チル・ミチ「え!?」
婆「私は、病気の子のそばに居てやらないと…。」
チル「ああ、そうだよね。でも、僕たちだけじゃどこを探せばイイか分からないよ。」
ミチ「うん。」
婆「大丈夫。案内役がちゃんといるよ。それと、この魔法の帽子を貸してあげよう。」
おばあさんは、チルチルに、大きなダイヤモンドが付いた緑の帽子を被せました。
婆「そのダイヤモンドを回すと、色んな魔法が起こるよ。」
チルチルは言われた通りに、ダイヤモンドを回しました。
すると、ロウソクから、火の妖精が飛び出してきて踊り始めました。キジバトの水入れからは、水の妖精が現れ泳ぎ出しました。
二人が驚いていると、おばあさんは、光の妖精を呼びよせました。
(それらしいSE)
婆「光の妖精よ、チルチルとミチルを案内しておくれ。」
光「ええ。チルチル、ミチル、一緒に青い鳥を探しに行きましょう。」
それから、おばあさんは、空っぽの鳥かごをくれました。
婆「もう一度、ダイヤモンドを回してごらん。」
チルチルがダイヤモンドを回すと、あたりは不思議な光に包まれました。
気がつくと、チルチルたちは、深い霧の中にいました。
霧の向こうにぼんやりと家があるのが見えます。
ミチ「あのお家、なんだか見たことあるわ。」
チル「僕もだ。光の妖精さん、ここはどこ?」
光「ここは、『思い出の国』よ。」
2人「思い出の国?」
霧の中を歩いて行くと、見たことがあると思ったのは、懐かしいおじいさんとおばあさんの家でした。そして、玄関前のベンチには、亡くなったはずのおじいさんとおばあさんが座っているではありませんか。チルチルとミチルは駆け出しました。なんて懐かしいのでしょう。
でも、どこか様子が変です。おじいさんもおばあさんも、目を閉じて、座ったまぴくりとも動きません。まるで人形みたいです。
ミチ「ほんとうにおじいちゃんとおばあちゃん?」
チル「分からない。少し様子を見ていよう。」
二人は、ベンチのそばの木の陰に隠れました。
すると、おじいさんとおばあさんが、頭を振ったり、目をこすったり、大きな伸びをしました。
祖母「(伸びをしている声)今日あたり、孫たちが会いにきてくれるんじゃないかしら。」
祖父「こうして目が覚めたってことは、わしらのことを思い出しているんだろうな。」
祖母「そうね…そして…もう近くまで来てるわ。感じるの。」
チルチルとミチルはそこまで聞くと、木の陰から飛び出しました。
(同時に)
チル「ここにいるよ!僕たち来たよ!」
ミチ「ここにいるわ!私たち来たわ!」
チル「二人とも元気そうでよかった。」
ミチ「うん、よかった。でも、どうして?二人とも死んじゃったはずなのに。」
チル「なんで生きてるの?」
不思議がる二人に光の妖精が言いました。
光「誰かが覚えている限り、人は、本当には、死なないのよ。この思い出の国で眠っているだけなの。そして、生きている人が思い出してくれて目が覚めるのを待っているの。」
チルチルとミチルは、おじいさんおばあさんと楽しいひと時を過ごしました。
そして、おじいさんはこの国に青い鳥がいることを教えてくれました。
だから、二人は、青い鳥を捕まえることができました。
チル「僕たち、もう帰らないと。」
祖父「そうだな。青い鳥を病気の女の子に届けてあげなさい。」
ミチ「私たち、また絶対来るからね。」
祖母「待っているよ。」
二人は、別れを惜しみながら家路につきました。
でも、『思い出の国』を出たとたん、青い鳥は黒い鳥に変わってしまいました。
チル「なんで?」
ミチ「どうして?」
チルチルとミチルは、次に『夜のごてん』に行きました。
ごてんの中には4つの扉がありました。
一つ目は『幽霊の扉』、二つ目は『病気の扉』、三つ目は『戦争の扉』でした。
『幽霊の扉』を開けると、たくさんの幽霊たちがいました。
『病気の扉』を開けると、そこは、ありとあらゆる病原菌の培養室でした。
チルチルとミチルは慌てて扉を閉めました。
『戦争の扉』は開けるのを止めました。
戦争の中に、幸せなどあるはずないからです。
夜のごてんの四つ目の扉は、『夢の扉』でした。
扉を開けると、そこは、部屋ではなく庭でした。月の光と星のあかりが降りそそぐ夜の庭でした。そして、花々や木々の間をたくさんの青い鳥が飛び回っています。
二人は、青い鳥を簡単に捕まえることができました。
でも、つかまえて『夜のごてん』を出たとたん、青い鳥はみんな、死んでしまいました。
悲しむ二人に、光の妖精が言いました。
光「泣かないで。この鳥たちは、夢の中で飛び回っている青い鳥だったのです。昼の光の中でも生きられる本当の青い鳥ではなかったのよ。だから、それを探しに行きましょう。」
ダイヤモンドを回して、次に行った国は、『幸せの国』でした。
そこには、白いローブを纏った人たちがいました。
幸せ1「私は、『健康でいるという幸せ』よ。」
幸せ2「私は、『子供を愛するという幸せ』。」
他にも、「雨の日の幸せ」「考える幸せ」「星が光り出すのを見る幸せ」「冬の暖炉という幸せ」など、たくさんの幸せたちがいました。
二人は、幸せたちに、青い鳥がどこにいるか尋ねました。
でも、幸せたちは、ただ優しく微笑むだけでした。
それから、二人が行ったのは、これから生まれる子供たちがいる国でした。
何もかもが青い『未来の国』です。
道も建物も植物も青く、子供たちは皆んな青い服を着ていました。
チル「うわぁ、ここは本当にきれいなところだ。」
ミチ「ここにあるものは、みんな青いから、鳥もきっと青いね。」
すると、子供たちが集まってきて、口々に言います。
子供1「僕ね、僕ね、長生きするためのくすりを33種類発明するよ。」
子供2「私は、まだ誰も見たことのない明かりをつくるわ。」
子供3「僕は新しいくだものを作るよ。」
子供4「あの子はね、太陽が今より弱っちゃったときに、地球を温める方法を考え出すんだよ。」
子供5「僕らは皆んな、生まれるまでに、何をするかを考えて、そのための荷物を用意するんだ。手ぶらで行くことは許されないからね。」
ミチ「誰に許されないの?」
子供5「時の番人さ。」
ミチ「時の番人?」
子供5「時の流れを管理している人さ。僕らは皆んな、決められた時が来ると生まれるんだ。」
そのときでした。
弟「はじめまして、チルチル、ミチル!」
という声に振り返ると、くるくるの巻き毛の男の子が立っていました。
チル「どうして、僕たちの名前を知ってるの?」
弟「だって、僕は、君たちの弟になるんだもん。」
チル・ミチ「おとうと!?」
弟「うん。来年ね。今、持っていくモノを荷作りしているところだよ。」
チル「君の詰めた荷物には何が入ってるの?」
弟「僕は、病気を三つ持っていくんだ。」
チル「え!?病気?」
弟「うん。しょうこう熱、百日ぜき、それにはしかだよ。」
チル「病気になって…それで?」
弟「僕はいなくなるよ。」
チルチルとミチルはびっくりしました。
チル「いなくなる?それじゃ、生まれてきても辛いばっかりじゃないか!」
弟「いいんだよ。それじゃあ、来年会おうね。」
未来の弟は、にっこり笑って、嬉しそうに駆けていきました。
チル「生まれてきても……病気ですぐに死んじゃったら……意味がないよね?」
すると、光の妖精が言いました。
光「意味のない命なんて一つもないのよ。皆んな自分の務めを持って生まれるのだから。誰かに決められるのではなく、自分の心と命を燃やして、何をするか、自分で決めて生まれていくの。」
そのときでした。ドラの音がひびきわたりました。
この国の夜明けを告げる音です。
時の番人が、今日生まれる子供たちを呼び集め、扉を開けると、その子供たちは一人一人順番に船に乗り込み、出発していきました。
ここにも青い鳥はいましたが、やはり、持ち帰ろうとすると、みんな死んでしまうのでした。
二人はがっかりして、どうしてイイのかわからなくなってしまいました。
光の精に聞こうとした時、懐かしい声が、
母「さあ、起きなさい。今日はクリスマスですよ」
お母さんの呼ぶ声です。
目を覚ますと、二人は自分たちの部屋のベッドの中にいました。
青い鳥を探す旅は、終わったのです。
チルチルとミチルは、とうとう青い鳥をつかまえることが出来ませんでした。
二人は、起き上がり、家の中を見回します。
チル「この家に何がおきたんだ?覚えている通りの家だけど、前よりずっと素敵に見える。」
ミチ「うん。さっきペンキを塗ったみたいに新しく見えるわ。」
チル「誰かが磨き上げたみたいだ。」
二人は窓辺に行って、外の空気を吸い込みました。
ミチ「あの森も、なんて大きくてきれいなの!」
チル「何もかもが生まれたてみたいに新鮮に見える!なんでだろう?ああ、ここに帰ってこられて幸せだなぁ!」
ミチ「私、何だかとっても嬉しい!」
その時、ふと部屋の隅の鳥かごを見たチルチルは、息がとまるほど驚きました。
チル「ミチル、あれをごらんよ!」
ミチ「ん?」
そこにいたのは、青い鳥でした!!
チル「僕のキジバトに間違いないけど、色が青くなってる!」
ミチ「ホントだ!」
チル「これって、僕たちが探していたしあわせの青い鳥じゃないか!あんなに遠くまで探しに行ったけど、こんなに近くにいたなんて!」
ミチ「きゃあ!!わーい!わーい!この鳥をおばあさんにあげたら、きっと女の子の病気もよくなるね。」
(二人、手を取り合って喜ぶ。喜びのセリフや笑い声。おまかせ。)
幸せは、案外自分の近くにあるということを、あのおばあさんは教えてくれたのです。
おしまい
※ 以下は、福娘童話集版の「青い鳥」
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿参加希望は、メールをお送りください。→連絡先
イラスト 「みずしま薫」
青い鳥 (お手軽版)
メーテリンクの童話
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投稿者 「ひつじも眠る朗読チャンネル」 【眠くなる優しい女性の声】ぐっすり眠れる世界の昔話
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
制作 「ハブルータ・Havruta」
♪音声配信(html5) |
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音声 得本綾(コトリボイス) ラジオHP |
♪音声配信(html5) |
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音声 ちーさんのちーさな朗読会 |
むかしむかし、あるところに、まずしい二人の子どもがいました。
お兄さんの名前はチルチル、妹の名前はミチルと言いました。
クリスマスの前の夜のことです。
二人のへやに、魔法使いのおばあさんがやってきて言いました。
「わたしの孫が、今、病気でな。しあわせの青い鳥を見つければ病気はなおるんじゃ。どうか二人で、青い鳥を見つけてきておくれ」
「うん、わかった」
チルチルとミチルは鳥カゴを持って、青い鳥を探しに旅に出ました。
チルチルとミチルがはじめに行った国は、『思い出の国』でした。
二人はこの国で、死んだはずのおじいさんとおばあさんに出会いました。
「人は死んでも、みんなが心の中で思い出してくれたなら、いつでもあうことができるんだよ」
おじいさんは、そう言いました。
そして、チルチルとミチルに、この国に青い鳥がいることを教えてくれました。
ところが、『思い出の国』を出たとたん、青い鳥は黒い鳥に変わってしまいました。
チルチルとミチルは、つぎに病気や戦争など、いやなものがいっぱいある『夜のごてん』に行きました。
ここにも、青い鳥はいました。
でも、つかまえて『夜のご殿』を出たとたん、青い鳥はみんな死んでしまいました。
それから二人は『ぜいたくのごてん』や、これから生まれてくる赤ちゃんがいる『未来の国』に行きました。
どこにも青い鳥はいましたが、持ち帰ろうとすると、みんなだめになってしまうのです。
「さあ、起きなさい。今日はクリスマスですよ」
お母さんのよぶ声が聞こえました。
目を覚ますと、二人は自分たちの部屋のベッドの中にいました。
青い鳥を探す旅は、終わったのです。
チルチルとミチルは、とうとう青い鳥をつかまえることが出来ませんでした。
でも、チルチルとミチルが、ふと鳥カゴを見ると、中に青い羽根が入っているではありませんか。
「そうか、ぼくたちの飼っていたハトが、ほんとうの青い鳥だったんだ。しあわせの青い鳥は、ぼくたちの家にいたんだね」
二人はお互いに顔を見合わせて、ニッコリしました。
魔法使いのおばあさんは二人に、しあわせはすぐそばにあっても、なかなか気がつかないものだと教えてくれたのです。
おしまい
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