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3月29日の世界の昔話

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

ネズミとゾウ
絵は、マンガ・イラストコース1年生(O、星、羽、ミナモト、しゅが)

ネズミとゾウ
トルコの昔話 → トルコの国情報

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

朗読者:北海道芸術高等学校福岡サテライトキャンパス声優コース山本遥香

おりがみをつくろう ( おりがみくらぶ より)
鼠の顔の折り紙ねずみのかお   象の折り紙ぞうのかお

♪音声配信(html5)
音声 せりーぬ

 むかしむかし、あるところに、一匹のネズミがいました。
 そのネズミは、カガミを持っています。
 それも魔法のカガミで、そのカガミをのぞくと誰でも自分が大きく偉く見えるのです。

 毎日毎日、そのカガミをのぞいているネズミは、自分ほど大きくて偉いものは、どこを探してもいないと思い込みました。

ネズミとゾウ

 そして仲間のネズミたちを、馬鹿にする様になりました。
 それを見て、世の中の事をよく知っている年寄りのネズミが言いました。

ネズミとゾウ

「坊や。お前は自分が大きくて偉い生き物だといばっているそうだけど、それはとんでもない間違いさ。これをゾウが知ったら、大変な事になるよ」
「そのゾウって奴は、何者だ?」

ネズミとゾウ

「ゾウというのは、世界で一番大きな生き物でね。どんなに強い動物でもかなわないんだよ」
「うそだ! おれさまより強い奴がいてたまるか!」

ネズミとゾウ

 ネズミはそう言うと、ゾウを探す旅に出かけました。

ネズミとゾウ

 旅に出たネズミは、野原で緑色のトカゲに出会いました。

ネズミとゾウ

「おい。ゾウっていうのは、お前かい?」
「いいえ。わたしはトカゲよ」
「そうか。ゾウでなくてよかったな。ゾウだったら踏み潰してやるところだった」
「まあ、ゾウを踏み潰すですって?」
 小さなネズミのいばり方があんまりおかしかったので、トカゲは思わず吹き出しました。
「何を笑う! いいか、おれさまは世界で一番大きくて偉い動物だぞ!」

ネズミとゾウ

 ネズミは怒って、足を踏みならしました。
 するとちょうどその時、ズシンズシンと地ひびきがしました。
 緑色のトカゲは驚いて、石のかげに隠れてしまいました。
「えへっん。どんなもんだい」
 ネズミは自分の足踏みが地ひびきを起こしたと思い、得意になってまた先に行きました。
 しばらく行くと、今度はカブトムシに出会いました。

ネズミとゾウ

「おい。お前がゾウという奴か?」
「とんでもない。ぼくはカブトムシさ」
「そうか。ゾウでなくてよかったな。ゾウだったら踏み潰してやるところだった」
 それを聞いて、カブトムシはクスッと笑いました。
 ネズミは怒って、また足を踏みならしました。
 けれども地面は、ピクリともしません。
(おや? おかしいな)

ネズミとゾウ

  ネズミはもう一回、足を踏みらなしましたが、やはり地ひびきはおこりません。
(そうか、きっと地面がしめっているせいだな)
 ネズミはそう思うと、先ヘ行きました。
 そして今度は、木のそばでジッと座っている大きな動物に出会いました。

ネズミとゾウ

(大きいな。こいつこそ、ゾウらしいぞ。しかしジッとしているところを見ると、きっとこのおれさまを怖がっているんだな)
 ネズミはそう思って、いばって聞きました。
「おい。お前がゾウか?」
 それを聞いた大きな生き物は、ニヤリと笑って答えました。
「違うよ。わたしは世界で一番偉い者の仲良しだ。わたしはイヌだよ」
「世界で一番偉い者? それは何だ?」
「決まっている。それは人間さ」

ネズミとゾウ

「へえ。
 とにかく、お前はゾウでなくて幸せだったな。
 もしもゾウだったら、たちまち踏み潰してやるところだ。
 何しろ世界で一番強いのは、このおれさまなんだからな」
 それを聞いたイヌは、少しネズミをからかってやりました。
「確かに、そうかもしれないね、ネズミくん。
 あの人間だって、きみたちに食べさせる為に、コメやムギを作っているんだもの」
「まあな」
 ネズミは先を急いで、森の奥ヘやって来ました。

ネズミとゾウ

 そこでネズミは、山の様に大きな物にぶつかりました。
 足は木のみきの様に太くて、おまけに体の前の方にも長い尻尾がぶらさがっています。

ネズミとゾウ

「お前は、ゾウか?」
 ネズミは、力一杯声を張り上げました。
「おや?」
 ゾウは辺りを見回しましたが、ネズミがあんまり小さいので目に入りません。
 そこでネズミは、大きな石によじ登りました。

ネズミとゾウ

 ゾウはようやくネズミを見つけて、答えました。
「そうだ。わしはゾウだよ」
「そうか。おれさまは世界で一番強くて偉いネズミだ。今からお前を踏み潰してやる。覚悟しろ」
 ネズミはふんぞり返って、偉そうに叫びました。
 けれどもゾウは気にせず、そばの水たまりに鼻をつっこんで、シャワーの様に水をまき散らしました。

ネズミとゾウ

「ワッー!」
 その水にネズミの小さな体は吹き飛ばされて、もう少しでおぼれそうになりました。
「なっ、なんだったんだ。今のは」
 ネズミはやっとの事で、家に帰りつきました。

ネズミとゾウ

  今度の旅で、世界には自分よりもずっとずっと大きなもの、強いものがいる事を思い知ったネズミは、それからというものほかのものをバカにしたり、いばったりしなくなりました。

ネズミとゾウ

 ついでに、魔法のカガミをのぞく事もやめてしまいました。

おしまい

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