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5月15日の世界の昔話
竹になった娘
朝鮮半島の昔話 → 朝鮮半島の国情報
むかしむかし、タエという名前のきれいな娘がいました。
タエはやさしいお父さんとお母さんに見守られて、スクスクと育ちました。
ところがタエが十一歳になった時、お母さんが重い病気になって死んでしまいました。
タエは悲しくて悲しくて、いつまでも泣いていました。
お父さんは、小さなタエが可哀想でなりません。
そこで新しい奥さんをもらうと、タエの世話を頼んで言いました。
「どうか、娘を可愛がっておくれ」
新しい奥さんは、
「もちろんですとも」
と、言いましたが、心の中ではタエがじゃまでたまりません。
「なんで、こんな子のめんどうを見なくちゃならないのかしら。
この子がいなければ、もっと好きな事が出来るのに」
まま母はタエを見るたびに、そんな事を考えました。
ある日、お父さんが遠いところヘ旅に出る事になりました。
「今度は長い間帰って来られないから、くれぐれもタエの事を頼むよ」
お父さんはまま母にそう言うと、心配そうにタエを見ながら行ってしまいました。
「タエを殺してしまうなら、今だわ!」
まま母は、恐ろしい事を思いつきました。
おもちに毒(どく)をまぜて、タエに食ベさせるのです。
「さあタエ、お食ベ。おいしいおもちだよ」
まま母におもちを進められて、タエは変だなと思いました。
ふだんからまま母には、意地悪ばかりされていたからです。
「でも、せっかくお母さまがつくってくれたおもちですもの、うたがっては悪いわ。いただきます」
タエは思い直すと、まま母にお礼を言っておもちを食べました。
毒はあっという間にきいて、タエはその場に倒れて死んでしまいました。
まま母は、タエの死体を家の裏の畑にうめました。
「ここなら、誰にもわからないわ」
それからしばらくたったある日、タエがうめられたところから一本のくきが生えてきました。
そのくきは長くのびて、細い枝と細い葉をつけました。
「あのくきを、わたしにください」
見知らぬ男がやって来て、まま母に頼みました。
まま母はカマでくきを切ると、その男にやりました。
男はくきを受け取ると、笛(ふえ)にして吹き出しました。
すると、こんな音が出てきたではありませんか。
♪お父さま、お母さま。
♪娘のタエは、殺されたの。
♪新しいお母さまに、殺されたの。
♪このくきは、わたしの骨の一本よ。
それを聞くとまま母はブルブル体をふるわせて、男を追い払おうとしました。
けれど男はそこらじゅうを走りまわって、笛を吹き続けました。
ちょうどそこへ、長い間旅に出ていたお父さんが帰って来ました。
お父さんは、不思議な笛の音を聞くと、
「これはいったい、どうした事だ?」
と、まま母や近所の人に尋ねました。
やがて本当の事がわかると、お父さんは怒ってまま母を殺してしまいました。
タエがうめられた場所からは、いつも同じ長いくきが生えました。
やがて人々はそのくきをタエ(竹)と呼び、可哀想な娘を思い出すのでした。
おしまい
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