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8月10日の世界の昔話
アブラハムとイサク
イスラエルの昔話 → イスラエルの情報
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
制作: ユメの本棚
むかしむかし、あるところに、アブラハムという信仰のあつい男がいました。
彼にとって神さまが全てで、神さまの為なら、家族を犠牲にしてもよいとまで考えてしました。
そんなアブラハムの耳に、ある日、神さまの声が届いたのです。
「忠実なるアブラハムよ、息子のイサクを連れて山へ行きなさい。そして山の上で火を焚いて、イサクを神への捧げ物とするように」
これを聞いたアブラハムは、ひどく驚きました。
神への捧げ物にするという事は、殺して火で焼くという事です。
愛する息子を殺すなんて、そんなひどい事は出来ません。
けれど信仰のあついアブラハムは、神さまの言う事には逆らう事が出来ず、薪を背負うと息子のイサクを連れて山に向かいました。
イサクは、お父さんが突然に山へ行こうと言い出したのが、不思議でなりません。
神さまへの捧げ物をするのだと聞かされていましたが、捧げ物にするヒツジを連れていなかったからです。
「お父さん、神さまへの捧げ物に山へ行くのはいいけれど、肝心の捧げ物はどうするのですか? いつもなら、ヒツジを持っていくはずなのに」
イサクが尋ねると、アブラハムは涙を隠して答えました。
「息子よ、神さまへの捧げ物は、ちゃんと用意しているから大丈夫だよ」
それから目指す山の上まで来ると、アブラハムとイサクは薪を積み上げました。
そしてアブラハムは息子をしばりあげると、薪の上に寝るように言ったのです。
その時、イサクはやっとわかりました。
(お父さんは、自分を神さまに捧げるつもりなんだ)
けれどイサクは、お父さんと神さまを心の底から信じていました。
だから逆らわず、ただ空を見ていました。
アブラハムは息子を殺すための短刀を取り出すと、大きく振り上げました。
あとはその短刀を息子の心臓に突き刺して、神さまへの捧げ物にするだけです。
その時、アブラハムは息子のイサクと目が合いました。
アブラハムはブルブルと震えて、その短刀を振り下ろすことが出来ません。
すると息子のイサクが、父親のアブラハムに言いました。
「わたしが見ていては、やりにくいでしょう。目をつぶっていますから、ひと思いにどうぞ」
その言葉を聞いたアブラハムは、短刀を投げ捨てて言いました。
「いくら神さまの願いでも、息子を捧げ物にはしないぞ! わたしには神さまより、息子の方が大事だ!」
その時です。
天から天使が舞い降りてきて、アブラハムに言ったのです。
「その通りです。いくら神の言葉があっても、愛する家族を殺してはなりません。神はあなたが家族よりも神を大切にするので、あなたの本心を知ろうと、あなたを試したのです。もし、あなたがイサクに短刀を振り下ろしていたら、神はその短刀がイサクの心臓に届くよりも早く、あなたの命を奪っていたでしょう」
それからアブラハムは、今まで通り神さまを大切にしましたが、それ以上に、家族を大切にしたということです。
おしまい
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