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10月23日の世界の昔話
ほら吹き男爵 チーズの島
ビュルガーの童話 → ビュルガーの童話について
わがはいは、ミュンヒハウゼン男爵(だんしゃく)。
みんなからは、『ほらふき男爵』とよばれておる。
今日は、ミルクの海の続きを聞かせてやろう。
ミルクの海を突き進んで島に上陸してみると、驚いた事にこの島は、全てがチーズで出来ていた。
生えている木にしろ、ころがっている石にしろ、住民の家にしろ、みんなチーズで出来ているのだ。
そう言えば、チーズはミルクから出来ている。
この島のまわりがミルクの海だったのは、おそらくこのチーズの島から、ミルクが溶け出したためだろう。
「長旅にチーズのごちそうとは、うれしいな」
わがはいたちは、さっそくチーズの木をかじり、チーズの石ころを食べた。
さすがに家は遠慮したが、実は食べても問題はなかった。
なぜならここのチーズは、いくら食べても一夜のうちに元通りになってしまうからだ。
「これでバンでもあったら、文句はないのだが。いくらなんでも、そこまでは都合良く」
しかし探してみると、本当にパンがあった。
この島には人の背丈よりも大きな麦が生えていて、その麦の穂の中に焼きたてのほかほかしたパンが入っていたのだ。
この麦も、いくら食べても明日の朝には元通りになる便利な麦だった。
チーズとパンとくれば、お次はぶどう酒だ。
「これで、ぶどう酒があればなあ」
と、一人の船員が言った。
「ぜいたくを言うな。いくらなんでも、ぶどう酒までは」
と、わがはいが、船員をたしなめたとたん、
「温泉があるぞ!」
と、船長が声をあげて、向こうを指さした。
なるほど、向こうの岩かげから、ふわりふわりと湯けむりがあがっている。
さっそく湯けむりを目指して行ってみると、なんとそこはココアの温泉で、子どもたちが楽しそうに泳いでいたのだ。
どの子どもも、こげ茶色の体をしているが、きっとココアの色がしみついてしまったのだろう。
「このさい、ココアでもいい。われわれも入ろう」
わがはいたちも、さっそく服を脱いで入ろうとしたら、
「大人は、向こうだよ」
と、子どもたちが教えてくれた。
行ってみると、そこにはぶどう酒の温泉があった。
「なんと、白も赤もロゼもあるではないか」
わがはいは、さっき船員をたしなめた事を恥なければならなかった。
話の展開からして、ぶどう酒も出てくるのは当然だからだ。
それが、お約束というものだ。
ともかく、わがはいたちはぶどう酒の温泉で、飲んだり、泳いだりと、大いに楽しんだ。
もちろん、このぶどう酒も、いくら飲んでもへらなかった。
まったく、ここは不思議なところである。
今日の教訓は、『人をたしなめる時は、先の展開をよく考えてからにしよう』だ。
何事にも、『お約束』というものがある。
まさかと思っている事が、現実に起きたりするものだ。
この『お約束』を知っておかないと、わがはいのように後で恥をかく事になる。
さて、チーズの島の話はまだ続くが、続きは次の機会に話してやろうな。
おしまい
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