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11月28日の世界の昔話
宝を迎える村人たち
ジャータカ物語 → ジャータカ物語について
むかしむかし、ある村に、一人の貧乏な男がいました。
みんなは貧乏な男をきらって、男がたずねて行っても家の中へは入れずに追い返すのでした。
「こんな意地の悪い人たちのいる所から離れて、どこかよそで仕事をしよう」
そう考えた男は、遠い国へ行って商売を始めました。
そして男はがんばり、何年かたつと大金持ちになりました。
ある日、大金持ちになった男が久しぶりに自分の村へ帰る事になったのですが、この男のうわさを聞いた人々は男のためにごちそうの用意をして、途中まで男を出迎えに行ったのです。
貧乏だった以前とは、大違いです。
「貧乏だと家にも入れず、金があるとごちそうを用意して出迎える。
まったく、なんて心のみにくい奴らだ。
・・・よし、少しからかってやろう」
そこで男はわざとボロボロの服を着て、行列の先頭を歩いていきました。
村人たちは男が大金持ちになったと聞いているので、そんなボロ服を着ているとは夢にも思いません。
だから出迎えた人たちは、誰も男に気がつかないのです。
行列は来るのですが、なかなか金持ちの男が見つからないので、村人の一人が先頭の男にたずねました。
「もしもし、あなたのご主人さまは、どこにいらっしゃるのですか?」
すると男は、とぼけた顔で、
「ああ、ご主人でしたら、一番後ろにいらっしゃるはずです」
と、答えると、さっさと歩いて行きました。
村人たちは一番後ろの人が来るのを待っていましたが、どう見ても一番後ろの人は、お金持ちの男ではありません。
そこで村人たちは、またたずねました。
「あの、ご主人さまは、どなたですか?」
「ああ、ご主人ならボロボロの服を着て、行列の一番前にいますよ」
「なんと、あの男がそうだったのか」
村人たちは急いで走っていって、ようやく男に追いつきました。
そして男に、文句を言いました。
「お前さん、よくもわたしたちをだましたね。こうしてみんながわざわざ出迎えにきてやったのに、なぜそんな事をするのだ!」
すると男は、こう答えました。
「あなた方が出迎えたのは、一体何ですか?
少なくとも以前にこの村にいた、わたしという人間ではないでしょう。
あなた方が出迎えた物は、わたしが持って来たお金や宝物ではないのですか?
それなら、一番後ろから来るラクダにつんでいますよ」
「・・・・・・」
それを聞いた村人たちは確かにその通りだったので、恥ずかしくて何も言えませんでした。
おしまい
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