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12月12日の日本民話
はだかにされたエンマ大王
石川県の民話
むかしむかし、能登(のと→石川県)には、さんえもんという、とんちのきく人がいて、みんなからは「さんにょも」とよばれていました。
そのさんにょもも、とうとう死んでしまい、あの世へ行くことになりました。
今までずいぶんと人をだましたりしているので、エンマ大王の前に行けば必ず、
「お前は、地獄(じごく)行きじゃ!」
と、いわれるにきまっています。
「うーむ。地獄へ行かずにすむには、どうしたらよかろうか?」
さんにょもは、ある考えを思いつきました。
「そうじゃ、いいことがあるぞ」
そして、どこかで酒を手に入れたさんにょもは、エンマ大王に酒だるをさしだすと、
「エンマ大王さま。わしをさばく前に、酒など一ぱい、いかがでしょう」
と、すすめたのです。
お酒の大好きなエンマ大王は、ゴクリとのどをならすと、
「うむ。そうか、仕事中だが、それほど言うのなら、一杯ぐらいよかろう」
と、酒を湯のみについで、グイッと飲みました。
「おお、これはよい酒だな」
この酒が、たいへんおいしかったので、
「あと一杯」
「もう一杯」
「さいごに一杯」
「おまけに一杯」
と、とうとう酒だるを空にしてしまいました。
さて、酒のまわってきたエンマ大王は、
「ああ、少しやすませてくれ」
と、いって、そのままグウグウと寝てしまいました。
さんにょもはエンマ大王の着物を脱がしてかんむりをはずすと、さっそくそれを自分の身につけて、はだかのエンマ大王を地獄にほうりこみ、自分はエンマ大王のイスにすわりました。
エンマ大王になったさんにょもは、たいへんやさしく、生きていたときに悪い事をした人間ががやってきても、少しでもいいところがあると極楽(ごくらく)行きのハンコをおしてやりましたから、だれからもよろこばれたという事です。
おしまい