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5月9日の世界の昔話
  
  
  
  オオカミと3人の娘
  イタリアの昔話 → イタリアの国情報
 むかしむかし、よその村へでかせぎにいっていた、三人姉妹の娘たちがいました。
   ある日、お母さんがおもい病気にかかって死にそうだという知らせがとどきました。
  「まあ、どうしましょう?」
  と、三人はそうだんしました。
  「わたしたち、仕事にやとわれているんだから、みんなででかけるわけにはいかないわ。わたしが一番上のねえさんだから、いってくるね」
   一番上の娘は、お母さんへのおみまいの品にブドウ酒四本と、ほしあんず入りのお菓子を四つ用意しました。
  「いってらっしゃい。気をつけてね」
   二人の妹は、ねえさんをおくりだしました。
   お母さんのいるボルゴフォルテ村へいくには、深い森のなかを通らなければならないので、とても心配だったのです。
   深い森のなかの道に、さしかかりました。
   するととつぜん、オオカミがとびだしてきました。
  「もしもし、娘さん。そんなにいそいで、どこへいくんだね?」
   オオカミは、立ちすくんでいる娘をこわがらせないように、ネコなで声でいいました。
  「ボルゴフォルテ村の、お母さんのところへいくんです。お母さんの病気が、おもいそうですから」
  「そのカゴには、なにがはいっているんだね?」
  「ブドウ酒四本と、お菓子が四つ」
  「じゃ、それをおよこし」
  「いいえ。これはお母さんへのおみまいの品。あげるわけにはいきません」
   娘はカゴを、しっかりとかかえました。
   オオカミは、二、三歩、そばへよってくると、こんどはきばをむきだしておどしました。
  「くれないのかい。くれなくてもいいが、そのかわりおまえはどうなると思う? カゴのなかみと命の、どっちが大事なんだ!」
   娘はこわくなって、カゴをほうりだして妹たちのところへにげかえりました。
   ねえさんの話をきくと、こんどは二番目の娘がでかけることになりました。
   おみまいの品は、さっきとおなじように、ブドウ酒四本と、ほしあんず入りのお菓子が四つでした。
  「では、気をつけていっておいで」
  「オオカミに、出あわないようにね」
   一番上のねえさんと、妹がおくりだしました。
   深い森のなかの道にさしかかると、またさっきのオオカミが出てきました。
  「もしもし、娘さん。そんなにいそいで、どこへいくんだね?」
   オオカミはネコなで声で、やさしくことばをかけました。
  「ボルゴフォルテ村のお母さんのところへいくんです。お母さんの病気がおもいそうですから」
  「そのカゴには、なにがはいっているんだね?」
  「ブドウ酒四本と、お菓子が四つ」
  「じゃ、それをおよこし」
  「いいえ。これはお母さんへのおみまいの品。あげるわけにはいきません」
  「くれないのかい。くれなきゃ、おまえはわしに食われるんだよ」
   二番目の娘もこわくなって、カゴをほうりだすとにげてかえりました。
   すえの妹は、それをきくと、
  「じゃ、わたしがいってくるわ」
  と、いいだしました。
  「だいじょうぶかい?」
  「しんぱいだわ」
  と、ねえさんだちがいいました。
  「まかせて。わたしには、いい考えがあるの」
   そういうと、すえの妹は台所へいって、カゴの中にブドウ酒四本をいれ、それからお菓子の中に、なにやらたくさんつめこみました。
  「じゃ、いっておいで。オオカミに、出あわないようにね」
  「ぶじにいっておいで。お母さんにくれぐれもよろしくね」
   すえ娘はカゴをかかえると、元気よくかけていきました。
   うすぐらい森のなかの道にさしかかると、またもオオカミが出てきました。
   でも、すえ娘はわき目もふらずに、ズンズンと足をいそがせました。
   オオカミはそばへくると、また、ネコなで声でいいました。
  「もしもし、娘さん。そんなにいそいで、どこへいくんだね?」
  「ボルゴフォルテ村のお母さんのところへ。病気がおもいそうですから」
  「そのカゴには、なにがはいっているんだね」
  「ブドウ酒四本と、お菓子が四つ」
  「じゃ、それをおよこし」
  「いいえ、あげるわけにはいきません。お母さんへのおみまいの品ですから」
   すえ娘はこわそうなようすも見せないで、オオカミを見つめました。
   オオカミは、きばをむきだしておどすことにしました。
  「じゃ、それをよこさねえというのか?」
  「ええ、これはあげられないわ」
  「よこさなきゃ、おまえはどうなると思う。わしに食われるんだぞ!」
  「それなら、しかたがないわ。これをおたべ」
   すえ娘は大きく口をあけているオオカミめがけて、お菓子を一つなげつけました。
   オオカミはそれを、パクリと口でうけとめました。
   そして、
  「ウギャーーァ!」
  と、さけんで、とびあがりました。
   実はお菓子の中には、クギがたくさんいれてあったのです。
   オオカミは口じゅう血だらけになって、お菓子とクギをはきだしました。
  「おぼえていろ。このしかえしは、きっとしてやるぞ」
   オオカミは、森のおくににげていきました。
   でも、ぬけめのないオオカミは森の近道をぬけて、ボルゴフォルテ村に先まわりしました。
   そして、娘たちのお母さんの家にしのびこんで、病気でねているお母さんを、ひとのみにのみこんでしまったのです。
   それからオオカミはお母さんのずきんをかぶり、べッドにもぐりこんで、すえ娘がくるのをまっていました。
   しばらくして、すえ娘はお母さんの家につきました。
  「お母さん」
   すえ娘は、ベッドのそばへいってみて、お母さんのあまりの変わりようにビックリ。
   だってお母さんは、色が黒くて、とても頭が大きくなってしまったからです。
   それに、すえ娘にやさしい笑顔を見せてもくれません。
  「お母さん、なぜわたしをだいてくれないの?」
   そのとたん、オオカミはバッととびおきて娘をひとのみにすると、そのままおもてにとびだしました。
   でも、畑ではたらいていた村の人たちが、家から出ていくオオカミをみつけました。
   そして手に手に、クワやすきをもってオオカミをおいかけ、たたきころしてしまいました。
   お母さんとすえ娘は、オオカミのおなかの中から、ぶじにたすけだされました。
   それからお母さんは、りこうなすえ娘の看病で、まもなく病気もなおったということです。
おしまい