１ねんせいのせかいむかしばなし



きんに　なったおひめさま
ギリシア の むかしばなし → ギリシア の せつめい

　むかしむかし、　たいへん　きんのすきな　おうさまが　いました。
「きんは　いい。　ピカピカと　ひかって　うつくしいし、　なにしろ　ねだんが　とてもたかい。　・・・どれ、　たからの　くらへ　いって　きんを　ながめてこよう」
　おうさまは　きんの　かんむりを　かぶりなおして、　きんの　いすから　たちあがりました。
　かいだんを　のぼって、　２かいにある　おうさまじまんの　たからのくらへ　はいりました。
　たからの　くらは、　かべも　はしらも　てんじょうも、　すべて　きんで　できていました。
　きんの　テーブルが　ならんでいて、　そのうえに　きんの　よろいや　つるぎや　かびんや　おさらが、　キラキラピカピカと　かざられています。
　おうさまは　へやのなかを　みまわして、　たのしそうに　いいました。
「せかいじゅうに、　これほど　たくさんきんのたからを　もっているものは　いないだろう。　だが、　もっとたくさん　きんのたからが　ほしいものだ。　もしも、わたしのてで　さわったものが　みんなきんになったら、　どんなによいだろう」
　おうさまが　そうつぶやいたとき、　うしろから　やさしいこえが　かかりました。
「おうさま。　それほど　きんが　すきなのなら、　そののぞみを　かなえてあげましょう」
　そのこえに　おうさまが　ふりむくと、　うつくしいめがみが　たっています。
「ほっ、　ほんとうですか？」
「はい、　あなたの　てで　さわったものは、　すべてきんに　かわります。　どんなものでも」
　めがみは　そういうと、　フッと、　きえてしまいました。
「わたしの　てで　さわったものが　きんになるとは　すばらしい！　では、　さっそく　ためしてみよう」
　おうさまは　まどへ　はしると、　かぜで　ユラユラゆれる　きぬのカーテンを　さすりました。
　すると　どうでしょう。
　きぬの　カーテンは、　おひさまのように　あかるくかがやいて、　ドッシリと　おもいきんのカーテンに　かわってしまったのです。
「これは　すごい！　ほんとうに　きんになった」
　おうさまは、　おおよろこびです。
　おうさまは　かいだんを　かけおりて、　にわの　はなぞのに　でました。
　はなぞのには　うつくしいはねの　クジャクが　あるいていて、　まわりは　ケシのはなで　いっぱいです。
　おうさまは　クジャクの　あたまを　なでました。
　すると　みるまに、クジャクは　とてもまぶしい　きんのくじゃくに　かわりました。
　つづいて、　ケシのはなに　さわりました。
　ケシのはなも、　みるまに　きんのはなに　かわりました。
「なんと、　どうぶつや　しょくぶつまで　きんにかわってしまった。　・・・めがみさま、　ありがとうございます」
　おうさまが、　おおよろこびしていると、　そのこえをきいた　おひめさまが、　はなぞのに　やってきました。
「まあ、　おとうさま。　なにを　よろこんで　いらっしゃるの？」
「おお、　ひめか。　みておいで。　わたしが　てでさわると、　なんでも　きんになってしまうのだよ。　さあ、　こっちへきてごらん」
　おうさまは、　かわいいおひめさまの　あたまを　なでました。
　するととたんに、おひめさまは、あっと　こえをだして、　かおもからだも　きんに　なってしまったのです。
　おうさまは、　おひめさまを　ゆすぶって　なきました。
「ひめ、　ひめ。　どうか　めをあけておくれ！　どうか　へんじをしておくれ！」
　けれども、　きんになった　おひめさまは　めを　あけませんし、　へんじも　してくれません。
　おうさまは、てんにむかって　てをあわせて　たのみました。
「めがみさま。　わたしが　まちがっていました。　どうか　まほうをといてください。　だいじなひめを　どうぞ、もとのかわいいひめに　してください」
　すると、　どこかで　めがみさまのこえがしました。
「それでは、　うらの　かわで　よくてを　あらいなさい。　そして、　そのかわのみずを　きんになったものに　かければ、もとのすがたに　かわりますよ　」
　おうさまは、　さっそくかわへ　かけだすと、　ゴシゴシと　てをあらって、　そのみずを　きんのおひめさまのあたまに　かけました。
　すると、　おひめさまは　ニッコリわらって、　もとの　うつくしいすがたになりました。
　おうさまは、　クジャクにも　ケシの　はなにも　きぬのカーテンにも　みずを　かけました。
　そして、　おひめさまを　すっかりと　かかえて、　うれしそうにかえっていきました。

おしまい