
  福娘童話集 > きょうの日本民話 > 10月の日本民話 > 弘法井戸
10月24日の日本民話
  
  
  
  弘法井戸
  三重県の民話 → 三重県情報
 むかしむかし、ある村に、惣松(そうまつ)という人がいました。
   ある日の事、惣松は二、三人の村人たちと伊勢参宮(いせさんぐう)に行った帰り道に、乗っていた舟で二見が浦(ふたみがうら)の近くの飛島(とびしま)まで来ると、空から急に白龍(はくりゅう)が舟の中へ飛びこんで来たのです。
   みんなは、ビックリしましたが、
  「これは、大漁を知らせる神さまのお告げじゃ」
  と、大いに喜んで、白龍を村へ持ち帰りました。
   家に白龍を持ち帰った惣松は、白龍を床の間に置きましたが、白龍は床の間からぬけ出して神棚(かみだな)の中に入ってしまったのです。
   家の人たちは、
  「これは福の神だ、きっと良いことがおこるぞ」
  と、大喜びして、神棚へだんごやお酒など、いろいろなものをたくさんおそなえしました。
   でも惣松は、おそなえのだんごを一口食べると、
  「こんなもの、まずくて食えるか」
  と、はきだしてしまいました。
   そのとたんに白龍が神棚から飛びだして、追いかける惣松を尻目(しりめ)に森の中へかくれてしまいました。
   その後、弘法大使(こうぼうたいし)が村へやって来て、
  「この村には何か、なんぎなことはないか?」
  と、たずねると、村人たちは、
  「この村に白龍が一匹いたのですが、森の中へにげてしまいました。何とかして白龍をつれもどして下さい」
  と、たのみました。
   すると弘法大使は、
  「白龍は水が好きだから、井戸をほってあげよう」
  と、いい、持っていた杖(つえ)で地面を突きさすと、不思議な事にそこから水がこんこんとわき出したのです。
 それからは毎日、白龍はこのおいしい水を飲みに来るようになり、村からは出ていかなくなったという事です。
おしまい